終活のメリットとデメリットを解説
終活という言葉は知っていても、実際に終活をすることにどれほどの価値があるのか判断できない人は少なくありません。
終活をすることの具体的なメリットとは何か。終活をしないことで、残された家族にどんな負担があるのか。手間や時間がかかると聞いて踏み切れないでいる人も多いようです。
このページでは、終活のメリットとデメリットを具体的に示しながら、終活を始めることで本人と家族にどのような変化が生まれるかを解説します。
終活で得られる主なメリット
終活に取り組むことで得られるメリットは、本人・家族の双方にわたる幅広いものです。家族への負担軽減や相続トラブルの防止といった実務的な効果だけでなく、自分自身の老後の充実や心理的な安心感にもつながります。終活によって自分の情報と意思を残すことは、死後に起きるさまざまな問題への対策になると同時に、今を生きる自分自身にとっても意味のある活動です。現在、60代を中心に何らかの終活を始める人が増加しており、早い人は40代・50代から準備を進めています。終活で得られる主なメリットは、次の4つです。
- 家族の負担を減らせる
- 自分の意向を反映できる
- 資産情報を整理できる
- 残りの人生を豊かにできる
家族の負担を減らせる
家族の負担を減らせることは、終活に取り組む大きな理由の一つです。本人が亡くなった後、残された家族には葬儀の準備、遺品整理、相続手続き、各種契約の解約といった実務的な作業が重なります。病気や認知症になった場合は、本人に代わって家族が延命治療や介護に関する重大な判断を迫られることもあります。自分の情報や意思を残しておくことで、家族がこうした負担に直面したとき、判断や手続きをスムーズに進めるための指針になります。
相続トラブルを防ぐ具体的な備え
財産を残す本人(被相続人)の法定相続人と相続順位を正しく把握した上で、遺言書やエンディングノートなどに相続の意思を書き残しておくことが有効です。自分の財産と負債を一覧表にした財産目録を添付しておくことで、残された家族はスムーズに相続の手続きを進められます。相続についてより詳しく知りたい方は、終活における相続のポイントを解説も併せて確認してください。
自分の意向を反映できる
本人が亡くなった後、あるいは判断力が著しく低下した後に、家族が最も困惑するのが「本人はどうしたかったのか」という意思確認です。葬儀の形式や供養の方法、延命治療の方針など、家族だけでは判断しきれない事柄が多く、本人の意思が分からないまま決断を迫られることになります。終活によってこうした希望をあらかじめ書き残しておくことで、家族は本人の気持ちを反映しながら準備や手続きを進められます。本人にとっては自分らしい最期を迎えるための備えになり、家族にとっては判断の拠り所になります。
葬儀・供養の形式
葬儀の形式、菩提寺の有無、親族や友人の連絡先、お墓に関する希望などをあらかじめ家族に伝えておくことで、葬儀の準備をスムーズに進められます。葬儀社の事前相談を利用して、葬儀プランや予算を把握しておけば、万が一のとき家族は慌てずに対応できます。葬儀にかかる費用について気になる方は、相場はどれくらい?葬儀にかかる費用と内訳を解説も併せて確認してください。
終末期医療の方針
病気や老衰、不慮の事故などで回復の見込みがない状態になったとき、家族は医療機関から延命治療を希望するかどうかの選択を迫られます。生死にかかわる決断で家族に精神的な負担をかけないためにも、終末期医療についての意思表示をしておくことが重要です。臓器提供や献体提供の意思についても、あわせて書き残しておくことが重要です。
資産情報を整理できる
高齢になるにつれて、預貯金や不動産、保険、有価証券といった資産の全体像を把握できなくなるケースは少なくありません。本人が亡くなった後、家族が資産の所在を一から調べなければならない状況は、相続手続きを大幅に複雑にする要因になります。終活で自分の財産と負債を「見える化」しておくことで、相続がスムーズに進むだけでなく、老後の生活費や介護費といったライフイベント費用も把握しやすくなります。資産情報の整理は、死後の相続対策としてだけでなく、今の自分の生活設計を見直す機会としても活用できます。
保有資産の見直し
企業年金や公的年金、個人年金の具体的な金額を把握した上で、不必要な保険や無駄な出費を見直せます。不動産をはじめとする保有資産の相続対策も、資産情報を整理する過程で併せて行えます。
エンディングノートへの記録
預貯金、年金、保険、有価証券、不動産、投資、宝飾品、美術品、クレジットカード、ローン契約、借入金、連帯保証債務といった資産情報をエンディングノートに記載しておくことで、本人に代わって家族が相続や契約の手続きをする際に役立ちます。
残りの人生を豊かにできる
終活のメリットは、死後に備えることだけにとどまりません。自分の人生を振り返り、これからやりたいこと、学びたいこと、実現したい夢や目標を整理することで、残りの時間をどう生きるかを考えるきっかけになります。身の回りを整理することで生活の負担が減り、やりたいことに集中できる時間や余裕が生まれます。
さらに、医療・介護、葬儀、相続といった話題を通じて家族と話し合う機会が自然と生まれ、互いの考えを共有できるようになります。自分が亡くなった後に家族へ負担をかけないよう備えることで、将来への漠然とした不安も一つずつ取り除けます。老後の生活を漫然と過ごすのではなく、夫婦や家族、友人たちと充実した時間を送るための計画を立てることも、終活で取り組むべき大切な視点です。
大切にしたいことを考えられる
終活とは、自分にとって何が本当に大切なのかを見つめ直して、その事柄に誠実に向き合っていく活動です。今後の人生で優先したいことややり残していることを整理することで、残りの時間をより充実したものにする指針が得られます。
終活を行う上でのデメリットは時間がかかることにとどまる
終活は、身の回りの整理をはじめ、医療・介護の希望、財産・相続、葬儀・お墓にまつわることなど、やるべきことが多岐にわたるため時間がかかります。ただし、終活に特別な資格や専門知識は必要なく、エンディングノートの作成や身の回りの整理であれば大きなコストもかかりません。デメリットとして挙げられるのは、時間がかかることにとどまります。
時間的な負担を軽減するには、早いうちから着手することが有効です。一度に全てをこなそうとするのではなく、取り組みやすい項目から少しずつ始めることで負担を分散できます。日々の忙しさを理由に後回しにした結果、気力や体力が衰えてから「もっと早くから取り組んでいれば」と後悔する人も少なくありません。元気なうちから始めることが、終活を無理なく進める上で最も重要なポイントです。
終活をする人は年々増えている
時間的な負担を踏まえてもなお、終活に取り組む人は年々増えています。2012年に「終活」が新語・流行語大賞のトップテンに選出されて以降、多くの人たちが終活の重要性について認識を深めています。現在、60代を中心に何らかの終活を始める人が増加しており、早い人は40代・50代から準備を進めています。「関心はあるが、まだ始めていない」「必要性は感じるけれど、何から始めたらいいかわからない」という声も含めると、大多数の人たちが終活について真剣に考えていることがうかがえます。早期に着手することが時間的なデメリットの解消につながると、多くの人が実感しているあらわれといえます。
終活をしない場合に生じるリスク
終活をしないまま人生の晩年を迎えた場合、残された家族には多くの負担がかかります。本人の意思や情報が整理されていない状態では、家族は短期間で葬儀の準備・相続手続き・各種契約の解約といった実務をこなしながら、延命治療など生死にかかわる重大な判断も迫られます。家族がいない場合も同様で、手続きを託す人物や遺産の行方をあらかじめ決めておかなければ、死後の処理が行政や第三者に委ねられることになります。いずれの場合も、終活をしないことで生じる影響は本人の死後に表面化するため、気力・体力・判断力があるうちに備えておくことが重要です。
家族の負担が増える
本人が亡くなった後、残された家族は何がどこにあるか分からない状態で、ごく短い期間のうちにさまざまな対応を迫られます。葬儀の準備や遺品整理、各種契約の解約といった実務的な作業が重なる中で、延命治療や介護に関する判断まで引き受けなければならないケースもあります。本人の意思や情報が整理されていないほど、家族への負担は大きくなります。
相続トラブルが起きやすくなる
終活をしなかった結果、相続のトラブルが起きることは少なくありません。「自分には大した財産がないから大丈夫」と思っていても、その財産をめぐって家族が仲違いしてしまうケースはめずらしくありません。財産目録を作成して把握しきれていない財産を整理しておくことで、家族がスムーズに相続手続きを進められます。
本人の希望が伝わらない
病気や認知症などで判断力が著しく低下すると、医療や介護、終末期医療、看取りに関する意思表示ができなくなります。臓器提供や献体提供の希望も、書き残しておかなければ家族には伝わりません。本人の意思が不明なまま家族が決断を迫られる状況は、精神的な負担を大きくするだけでなく、家族間で意見が分かれるきっかけにもなります。法定相続人以外に財産の遺贈を希望する場合も、終活で意思を残しておかなければ実現できません。
資産情報の所在が分からなくなる
終活をしていない場合、家族が資産状況や重要書類の所在を確認できずに、相続・税金・保険・契約などの重要な手続きが滞る可能性があります。預貯金や不動産、保険、有価証券といった資産の全体像が把握できないまま相続手続きを進めることになり、見落としや漏れが生じるリスクもあります。遺言書やエンディングノート、財産目録を作成していても、家族に保管場所を伝えておかなければ結果は同じです。終活で整理した資産情報は、家族が見つけやすい場所に保管しておくことが重要です。終活のチェックリストについて気になる方は、終活におけるチェックリストの作成方法を解説も併せて確認してください。
終活を始めようと思ったらエンディングノートから始めてみる
エンディングノートとは、人生の晩年に備えて自分の意思や必要な情報を整理して、家族に書き残しておくものです。遺言書と違って法的効力はありませんが、医療・介護、葬儀・供養、預貯金、財産、契約、デジタル情報、親族や友人の連絡先などを記載しておくことで、万が一のとき本人に代わって判断や手続きをする家族の負担を軽減できます。エンディングノートを作成するときは、氏名、生年月日、住所、預貯金口座、ローン、連絡先など、整理しやすい項目から書き始めると進めやすくなります。遺言書のように最初からすべて記入する必要がないことも、エンディングノートの利点です。エンディングノートは、市販品だけでなく、自治体や団体の無料配布、テンプレートのダウンロードなど、さまざまな方法で入手できます。自分にとって使いやすく、継続的に更新しやすいものを選ぶことが大切です。
エンディングノートを家族と一緒に確認すると話し合いのきっかけになる
エンディングノートは、自分の意思や情報を記載しておくものですが、家族と一緒に項目を確認することで、より正確な情報の共有と自分の意思を伝えられます。家族と一緒に内容を確認することで、会話のきっかけが生まれるだけでなく、終活にまつわる作業や手続きを分担することもできます。一人で対処するのが難しかった事柄も、家族に協力してもらいながら進められます。エンディングノートについて詳しく知りたい方は、終活におけるエンディングノートとは?作るときのポイントを解説も併せて確認してください。
よくある質問
- 終活はいつから始めればよいですか
- できるだけ早くから始めるのが理想です。最近は40代・50代から終活の準備を始める人もいます。定年退職や年金の受給開始、健康状態の変化、親の介護の終了、配偶者との死別などをきっかけに始める人が多い傾向があります。終活の内容は多岐にわたるため、元気なうちから始めることが成功のポイントです。
- 終活のメリットを感じられない場合はどうすればよいですか
- 終活についての考えは、年齢や健康状態、生活環境によって変化します。今は終活にメリットや必要性を感じていなくても、大切な人に自分の想いを残しておきたいと感じたり、老後のことで家族に負担をかけたくないと考えたときに、あらためて終活に向き合う機会が訪れます。
- 終活は家族に任せることもできますか
- 家族に任せきりにするのは適切ではありません。終活の目的は、人生の終わりに備えることだけでなく、老後の生活を安心して過ごしていくために、自分の意思や情報を整理して家族に伝えることです。家族と一緒に終活を進めることは有効ですが、終活の主体はあくまでも自分自身である点を心得ておくことが重要です。
- 終活にデメリットしか感じない場合はどうすればよいですか
- 終活は、人生の最期を悔いなく迎えるための準備であると同時に、大切な人や残された家族がいざというとき困らないように備えておくものです。今は終活にデメリットしか感じていなくても、「家族のためにやること」「将来の自分のためにやること」「今の自分のためにやること」の3つの視点から終活に向き合うことで、何らかのメリットが見えてきます。
- 終活はエンディングノート以外に何から始めればよいですか
- 終活チェックリストの作成から始めることが有効です。終活チェックリストとは、終活を進めていく過程でタスクや手続きの進行状況をチェックするための工程表です。自分の情報や希望を整理して家族に引き継ぐエンディングノートと併用することで、より体系的に終活を進められます。
この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版