曹洞宗の特徴は? 葬儀の流れ、儀礼、マナーや費用についても解説

ご葬儀スタイル

曹洞宗(そうとうしゅう)の葬儀は、静けさの中で故人を仏弟子として見送る厳粛な儀礼です。読経や焼香を中心に、僧侶が引導法語や授戒を行い、故人が仏の道へ進むことを願います。葬儀のやり方やお経の内容、お布施の考え方には曹洞宗ならではの特色があり、所作ひとつにも「心を整える」禅の精神が表れています。
曹洞宗は、鎌倉時代初期に宋へ渡った高祖・道元禅師(こうそ・どうげんぜんじ)が、中国禅宗五家のひとつ曹洞禅の法脈を継いで日本に伝えた禅宗の宗派です。道元禅師は、ただひたすらに座禅を行う「只管打坐(しかんたざ)」を実践の根本とし、煩悩を離れて悟りに至る「心身脱落(しんしんらくだく)」の境地を説きました。この思想が曹洞宗の葬儀や法要にも息づいています。
後に第四宗祖・瑩山禅師(けいざんぜんじ)が教えを庶民に広め、女性の住職登用を進めたことで、曹洞宗は「男女ともに仏道を歩める宗派」として信仰を広げました。現在では、大本山永平寺(だいほんざんえいへいじ)と大本山總持寺(だいほんざんそうじじ)を中心に、全国約一万四千の寺院が法脈を伝えています。
本記事では、曹洞宗の葬儀の流れややり方、読まれるお経の意味、参列時のマナー、そしてお布施や費用の目安を、中立的かつ実務的な視点から解説します。

曹洞宗とは、只管打坐を通して心を整えることを教えとする日本の禅宗です

曹洞宗(そうとうしゅう)は、ただひたすらに座禅を行い、心を静めることで悟りに至る「只管打坐(しかんたざ)」の実践を重んじる日本の禅宗です。
鎌倉時代初期に高祖・道元禅師(どうげんぜんじ)が中国で曹洞禅の法脈を受け、日本に伝えたことを起源とし、臨済宗・黄檗宗と並ぶ日本三大禅宗の一つとして発展しました。
曹洞宗の教えは、煩悩を断ち切るのではなく、静かに受け流しながら心を整えることを目的としており、この思想は葬儀や法要の所作にも深く息づいています(基礎の確認には葬儀とは何か?、全体像の把握には葬儀の流れが参考になります)。
形式よりも心の在り方を重んじる姿勢に曹洞宗らしい特徴があり、こうした考え方は後の章で紹介する葬儀の流れや作法にも一貫して表れています。

起源と歴史―道元禅師が中国で曹洞禅の法を受け、日本に広めた

曹洞宗の起源は、菩提達磨(ぼだいだるま)を祖とする中国禅宗五家の一派にあります。
日本では、鎌倉時代初期に比叡山で学び、臨済宗の開祖・栄西禅師(えいさいぜんじ)のもとで参禅していた道元禅師が、宋に渡り修行を重ねたことに始まります。
道元は、天童山景徳禅寺(てんどうさんけいとくぜんじ)の長翁如浄(ちょうおうにょじょう)より曹洞宗の正伝を受け、日本に帰国後、その教えを広めました。
曹洞宗は、栄西の臨済宗とともに「鎌倉新仏教」の流れを作り、仏教を民衆の生活に近づける契機となりました。
この過程で、禅の実践が貴族中心の信仰から庶民にも広がり、のちの日本仏教の礎を築いたと考えられています。

思想と経典―只管打坐と心身脱落の教えを中心に据える

曹洞宗の根幹は、「ただひたすらに座る」ことを意味する只管打坐の実践です。
道元禅師は、座禅を通して身と心を一切の執着から解き放ち、煩悩が自然に消えていく「心身脱落(しんしんらくだく)」の境地に至ると説きました。
この思想は、修行を通じて日常生活そのものを仏道として生きるという考えにつながります。
また、道元禅師はその思想をまとめた『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』を著し、20年以上にわたって仏教の実践的哲理を体系化しました。

教義の柱 内容 著作・典拠
只管打坐 ひたすら座禅に打ち込むことで心を整える 『正法眼蔵』「現成公案」など
心身脱落 執着を離れ、自然な心で仏道を歩む 『正法眼蔵』「弁道話」など
修行即生活 日常生活の一つひとつを修行とみなす 道元の法語・書簡など

この思想は葬儀にも影響を与え、静けさの中で心を整え、故人を仏弟子として送り出すという曹洞宗らしい儀礼の形を生みました。

発展と現在―瑩山禅師による教化と曹洞宗の広がり

第四宗祖・瑩山禅師(けいざんぜんじ)は、道元の思想を引き継ぎながら、庶民にも理解しやすい形に整えて全国へと広めました。
瑩山は、当時としては珍しく女性の修行者や住職を登用し、「男女がともに仏道を歩むことができる」という理念を具体化しました。
これにより曹洞宗は、身分や性別にかかわらず仏教の恩恵を受けられる開かれた宗派として、多くの信仰を集めました。

現在、曹洞宗は福井県の大本山永平寺(だいほんざんえいへいじ)と神奈川県の大本山總持寺(だいほんざんそうじじ)を中心に、全国約1万4千の寺院で法脈を伝えています。
さらに、ハワイ、北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパなど海外にも130を超える寺院や禅センターが設立され、およそ700名の僧侶が活動しています(参列の基本は葬儀における参列とは?が参考になります)。
曹洞宗は、世界的にも「静けさを通じて心を調える宗派」として知られ、国や文化を越えてその実践が広がりつつあります。

曹洞宗の葬儀の主な特徴

曹洞宗の葬儀は、故人を仏弟子として迎え入れ、悟りの世界へ導くための厳粛な儀式です。
通夜から葬儀・告別式まで一貫して静寂を重んじ、形式よりも心の在り方を大切にする点に特徴があります。
臨済宗など他の禅宗と異なり、説法や形式ではなく、読経や所作そのものに「悟り」への祈りを込めるのが曹洞宗の葬儀です。

「枕経」は曹洞宗では「臨終諷経」と呼ばれる

曹洞宗では、臨終時やご遺体の安置時に僧侶が読経を行う儀式を「臨終諷経(りんじゅうふぎん)」と呼びます。
これは一般的に「枕経(まくらきょう)」と呼ばれるものにあたり、故人を仏弟子として迎える最初の儀礼です。
読まれるお経は「仏遺教経(ぶつゆいきょうぎょう)」や「舎利礼文(しゃりらいもん)」が多く、功徳を回向(えこう)して故人の成仏を祈ります。
本来は臨終直後に行われますが、現代ではご安置や通夜式の前に執り行うのが一般的です。
通夜の流れやマナーを知りたい場合は、通夜の基本と進め方を参考にすると安心です。

鼓鈸三通による「挙龕念誦(こがんねんじゅ)」

曹洞宗の葬儀では、導師が「大宝楼閣陀羅尼(だいほうろうかくだらに)」を唱えながら、太鼓や鐃鈸(にょうはち)と呼ばれる仏具を打ち鳴らす「鼓鈸三通(くはつさんつう)」を行います。
これは「挙龕念誦(こがんねんじゅ)」と呼ばれる儀式で、音によって場を浄め、会葬者の心を整えることを目的としています。
音の響きに祈りを込めるという考え方は、曹洞宗の「只管打坐(しかんたざ)」の精神にも通じています。
参列時は静かに合掌し、礼拝を丁寧に行うのが基本です。作法全般の要点は葬儀のマナーと参列時の注意点で確認できます。

「引導法語」によって故人を悟りへ導く

曹洞宗の葬儀の核心をなすのが「引導法語(いんどうほうご)」です。
導師が自ら作った漢詩を唱え、悟りの境地を象徴する言葉で故人を送り出します。
この際、導師は線香や法火(たいまつ)を用い、右回り・左回りに円を描くように動きながら、故人が迷うことなく仏の世界へ至るよう導きます。
この儀礼は単なる形式ではなく、「心で導く」曹洞宗ならではの精神的な実践といえます。
葬儀の終盤に行われることが多く、静寂の中で故人を見送る時間です。流れや参列の作法は告別式の意味とマナーで詳しく紹介しています。

こうした儀礼は、故人を敬いながら心を整えるという曹洞宗の教えをそのまま反映しています。
近年では、家族葬や一日葬などの形式でも曹洞宗の作法を取り入れるケースが増えており、信仰の本質を保ちながら現代的な形へと広がっています。
より身近な形式を知りたい方は、家族葬の特徴と流れも参考になります。

曹洞宗の葬儀の流れ

曹洞宗の葬儀は、故人を偲び、仏弟子として悟りの世界へ導くための厳粛な儀礼です。
通夜から葬儀式、火葬、そして法要へと進む一連の流れには、それぞれ仏教の意味づけがあります。準備面は逝去後に必要な手続き、所要時間は葬儀の所要時間の目安を確認しておくと全体像を把握しやすくなります。

通夜

臨終後、できるだけ早い段階で「臨終諷経(りんじゅうふぎん)」を行います。これは一般的な「枕経(まくらきょう)」にあたり、僧侶が故人の枕元で読経して仏の教えに導く儀礼です。
読経の後には説法があり、故人の歩みを讃えつつ遺族の心を静めます。通夜または入棺に際して戒名が授けられ、棺の中央に掲げられます。

葬儀式

曹洞宗の葬儀式は、修行僧を僧侶として送る法を簡略化したもので、「授戒(じゅかい)」と「引導(いんどう)」を重視します。読経の静けさと所作の丁寧さが特徴です。

  1. 入堂:導師・僧侶が読経とともに入堂します。
  2. 剃髪(ていはつ):導師が「流転三界中」を三唱し、「剃除鬚髪 究竟寂滅」を唱えて、故人の髪(男性は髭も)を剃る所作を行います。
  3. 授戒(じゅかい):以下の段階で仏弟子としての戒を授かります。
     ・懴悔(さんげ):生前の過ちを悔い、心身を清める。
     ・洒水灌頂(しゃすいかんじょう):法性水を位牌や額に注ぎ、三帰戒を授ける。
     ・三帰戒(さんきかい):仏・法・僧への帰依を誓う。
     ・三聚浄戒(さんじゅじょうかい):善を修し、他者に尽くす誓願。
     ・十重禁戒(じゅうじゅうきんかい):殺生などを慎む戒律。
     ・血脈授与(けちみゃくじゅよ):仏法の系譜を受け継ぎ、正式な仏弟子となる。
  4. 入棺諷経(にゅうかんふぎん):棺に納める儀礼。「大悲心陀羅尼」を読誦し、回向を行います(現代は事前納棺の場合も多い)。
  5. 龕前念誦(がんぜんねんじゅ):十仏名を唱え、「舎利礼文」を読んで功徳を回向します。
  6. 挙龕念誦(こがんねんじゅ):導師が「大宝楼閣陀羅尼」を唱え、太鼓や鐃鈸(にょうはち)を打ち鳴らす鼓鈸三通を行います。
  7. 引導法語(いんどうほうご):導師が自作の漢詩を唱え、線香や法火で円を描く所作により、故人を悟りへ導きます。
  8. 弔辞・弔電:参列者が故人を偲び、弔意を表します。詳しい挨拶の組み立ては葬儀の挨拶の基本と例文が参考になります。
  9. 山頭念誦(さんとうねんじゅ):荼毘に付す前に涅槃への到達を祈念します。遺族は焼香を行います。
  10. 回向(えこう):故人・先祖の冥福を祈り、「修証義」などを読誦して功徳を回向します。
  11. 鼓鈸三通:太鼓や鐃鈸を打ち鳴らし、仏弟子となった故人を盛大に送り出します。
  12. 散堂(さんどう):儀式の終わりとして退場します。

葬儀式の後は火葬へと進みます。流れや段取りの要点は火葬の基本と進み方を確認しておくと安心です。

葬儀後の法要

葬儀後は、故人の冥福を祈る「追善法要」を営みます。亡くなってから四十九日までを「中陰法要」と呼び、七日ごとに読経と供養を重ねます。
初七日の意味や進め方は初七日法要の基礎知識で整理できます。
四十九日以降は年忌法要として、節目ごとに故人を偲び、家族が心を整える機縁とします。日取りの考え方は葬儀は亡くなってから何日後?が参考になります。
曹洞宗では、供養を通して「亡き人の思いが生者と共に生き続ける」と捉え、つながりを確かめながら日々を歩むことを大切にします。

【喪主・遺族向け】曹洞宗の葬儀を進めるためにすること

曹洞宗の葬儀を円滑に進めるには、まず故人の菩提寺との関係を確認し、信仰に即した手順で準備を進めます。
喪主や遺族の宗派が異なる場合でも、葬儀は故人の信仰を尊重して営むのが基本です。
ここでは、菩提寺の有無や距離に応じた具体的な段取りを整理します。

菩提寺の有無を最優先で確認する

はじめに、故人が檀信徒としてお付き合いしていた菩提寺があるかを家族・親族に確認します。
菩提寺の有無は、僧侶の依頼先や戒名の扱い、納骨先の可否に直結します。
並行して葬儀社選定を進める場合は、比較観点を整理した葬儀社の選び方の要点が判断の助けになります。

【菩提寺がある場合】菩提寺と葬儀社へ同時連絡し進行を決める

菩提寺があるときは、寺院と葬儀社の双方に速やかに連絡し、日程・会場・式次第を三者で調整します。
本堂や自宅で営むほか、葬儀社会館に僧侶をお招きする方法も一般的です。
納骨や戒名の方針があるため、菩提寺に無断で葬儀を進めないことが重要です。
会場や親族の予定調整には、決め方の勘所をまとめた葬儀日程の組み立て方が役立ちます。

【菩提寺が遠方の場合】出向可否の確認と代替手配の手順

遠方でもまず菩提寺へ連絡し、僧侶が出向可能か確認します。
出向できない場合は、同宗派の近隣寺院や僧侶の紹介を依頼し、必要に応じて葬儀社に手配を相談します。
戒名は菩提寺、読経は紹介先という分担も選択肢です。
参列範囲や名簿づくりの実務は参列者の範囲と名簿管理を参考に整理できます。

【菩提寺がない場合】葬儀社に曹洞宗形式を明示して相談する

無菩提寺の場合は葬儀社に連絡し、曹洞宗の形式で営みたい旨を伝えます。
葬儀社が僧侶や必要仏具を手配しますが、費用や運用は社によって差があるため相見積もりが安心です。
目安把握には、全体像を解説した葬儀費用の平均相場と内訳が参考になります。

葬儀を営む場所の基本パターン

実施場所は菩提寺の有無や地理条件で変わります。代表的な組み合わせは次のとおりです。

ケース 葬儀を営む主な場所
菩提寺がある 菩提寺の本堂または自宅/葬儀社会館に僧侶を招く
菩提寺が遠方 菩提寺の紹介する近隣の曹洞宗寺院/葬儀社会館で紹介僧侶が読経
菩提寺がない 葬儀社会館(葬儀社が曹洞宗の僧侶・仏具を手配)

近年は家族葬や一日葬など、規模を抑えつつ宗派の作法を守る形式も広がっています。
会場の利便性や親族の移動負担を踏まえ、無理のない選択を検討しましょう。

【喪主・遺族向け】曹洞宗の葬儀にかかる費用

曹洞宗の葬儀費用は、葬儀社の料金体系や菩提寺の考え方によって異なります。
葬儀には会場や祭壇などの基本費用に加えて、僧侶へのお布施、参列者への接待費など複数の出費があります。
ここでは、曹洞宗の葬儀にかかる主な費用の内訳やお布施の目安、費用を抑える方法を整理します。

葬儀費用の内訳と相場

曹洞宗の葬儀では、儀礼の重みや僧侶の関与が大きいため、全体の費用はおおよそ100万〜200万円前後となることが一般的です。
主な内訳は次のように分かれます。

区分 内容 相場の目安
葬儀一式費用 会場・祭壇・火葬場・スタッフなどの手配費用 60〜120万円
接待費用 参列者への食事・返礼品・香典返しなど 20〜50万円
お寺関係費用 お布施・御車代・御膳料など 30〜70万円

葬儀費用のうち約半分は葬儀場や火葬に関わる基本費用です。
参列者が多い場合は、香典返しや会食などの接待費用が増える傾向にあります。
一方で、家族葬など少人数で営む場合は、全体的な出費を抑えることが可能です。

お布施の目安と内訳

お布施は、読経や戒名授与に対する「報酬」ではなく、仏教の教えに基づく感謝と供養の心を表すものです。
曹洞宗では、導師(主導僧)と脇導師(補助僧)へのお布施、御車代、御膳料をそれぞれ包みます。

戒名は「院号+道号+戒名+位号」で構成され、位号によって金額の目安が変わります。
一般的な「信士・信女」の場合は30〜50万円前後が目安で、位号が上位になるほど高額になります。
また、葬儀と同日に初七日法要を行う場合は、その分のお布施(3〜5万円)も一緒に包むのが一般的です。

項目 内容 費用の目安
導師 主導僧へのお布施・御車代・御膳料 30〜50万円+1〜2万円
脇導師 補助僧侶へのお布施・御車代・御膳料 10〜20万円×人数+1〜2万円
戒名料 位号により異なる(信士・信女は30〜50万円前後) お布施に含む
初七日法要 葬儀と同日に行う場合あり 3〜5万円

僧侶が遠方から来られる場合は、宿泊費や交通費も別途用意します。
お布施の包み方や渡し方の作法は、本文の手順に沿って丁寧に準備しておくと安心です。

葬儀費用を抑えるためのポイント

曹洞宗の葬儀は儀式が多く厳粛に行われますが、事前の工夫で費用を抑えることができます。
以下の方法を組み合わせることで、負担を軽減しつつ丁寧な葬儀を行うことができます。

  • 複数の葬儀社から見積もりを取り、費用と内容を比較する
  • 家族葬や一日葬など、規模を抑えた形式を選ぶ
  • 葬儀社の会員制度や事前相談を活用する
  • 葬儀保険や共済制度を利用して備える
  • 自治体の葬祭費・埋葬料制度を確認する
  • 香典収入を葬儀費用の一部に充てる

自治体では、国民健康保険加入者に対して1〜5万円程度の葬祭費、社会保険加入者には約5万円の埋葬料が支給される制度があります。
支給には申請が必要で、期限は多くの自治体で「死亡日から2年以内」です。制度内容は居住地の公式情報で事前に確認しておきましょう。

また、費用を抑えながらも礼を尽くす方法として、家族葬の費用相場とシミュレーションを参考にするのも有効です。
事前に準備しておくことで、心に余裕をもって葬儀を迎えることができます。

【参列者向け】曹洞宗の葬儀におけるマナー

曹洞宗の葬儀に参列する際は、服装・焼香・数珠・言葉遣い・香典袋の表書きといった基本を押さえておくと安心です。
ここでは、宗派の特徴に沿った実践的なポイントを整理します。

参列時の服装と身だしなみ

故人への敬意と遺族への配慮を示すため、落ち着いた黒を基調とした装いが原則です。派手な装飾や露出の多い服装、光沢素材は避けます。

性別 基本の服装 補足
男性 ブラックフォーマル(ダブル・シングル可)、白無地シャツ、黒無地ネクタイ、黒の靴と靴下 シャツはボタンダウン不可。靴は光沢のない革靴が望ましい。
女性 黒のワンピースまたはアンサンブル(光沢なし)、黒のパンプス(ヒール3〜5cm)、黒ストッキング メイクは控えめに。アクセサリーは一連のパールなど落ち着いたものを選ぶ。

バッグや靴は毛皮・爬虫類革など「殺生」を連想させる素材を避けます。
服装の詳細は葬儀における服装マナーに加え、男性の装いは葬儀での男性の服装が参考になります。

焼香の作法

曹洞宗の焼香は基本的に2回です。1回目は抹香を額に押しいただく「主香」、2回目は押しいただかずに香炉へくべる「従香」を行います(会葬者が多い場合は1回に省略されることもあります)。

  1. 左手に数珠を持ち、焼香台へ進む
  2. 導師・遺族に一礼
  3. 本尊に一礼
  4. 抹香をつまみ、額に押しいただいて香炉へ(主香)
  5. 再度つまみ、押しいただかず香炉へ(従香)
  6. 遺影に合掌・一礼
  7. 下がって導師・遺族に一礼、席へ戻る

回数や所作に迷う場合は前の方の動きを参考にしましょう。詳しい解説は焼香マナーと回数で確認できます。

数珠(念珠)の作法

曹洞宗の正式な数珠は「看経念珠」。親玉1、主玉108、銀の「百八環金」を備えるのが特徴です。
焼香・合掌時の持ち方は次のとおりです。

  1. 輪を一度ひねって二重にし、親玉が左手人差し指の上にくるようにする
  2. 左手の親指と人差し指の間に挟み、房を下に垂らして合掌

数珠は式中は常に左手にかけ、途中で取り出すのは避けます。
選び方や扱いの詳細は葬儀における数珠の種類と扱い方が参考になります。

言葉や表現のマナー

葬儀の場では、忌み言葉や不適切な表現は避けます。宗教的表現も仏教に沿った言い回しを用います。

区分 避けるべき表現 理由
不幸の重なり たびたび/重ね重ね/再び/繰り返し 不幸が続くことを連想させる
死の直接表現 死ぬ/死因の追及 遺族への配慮に欠ける
縁起の悪い語 四(死)/九(苦)/終わる/消える 仏事では避けるのが慣習
宗教的誤用 天に召される 仏教では「浄土へ旅立つ」と表現するのが適切

不祝儀袋(香典袋)の表書き

不祝儀袋は白黒の水引が基本(高額の場合は双銀も可)。関西では黄白を用いる地域もあります。

項目 内容
表書き 「御霊前」または「御香典」
記入方法 薄墨の筆ペンでフルネーム(中袋の住所・氏名・金額はボールペン可)
注意点 地域差に配慮。金額相場や包み方は事前に確認。

金額相場や包み方の詳細は香典の相場と包み方を確認してください。

曹洞宗の特徴や葬儀の作法を理解し、心をこめて見送ろう

曹洞宗は、鎌倉時代初期に高祖・道元禅師(どうげんぜんじ)が宋に渡り、中国禅宗五家のひとつである曹洞禅の法脈を継いで日本に伝えた禅宗です。
臨済宗・黄檗宗と並び、日本三大禅宗のひとつとして全国に広がっています。

曹洞宗の葬儀は、修行僧を僧侶として送り出す儀式を簡略化したもので、「授戒(じゅかい)」と「引導(いんどう)」を重んじます。
これには、故人が仏弟子として仏道へ入り、「悟りの世界」へと旅立つという意味が込められています。
葬儀では、太鼓や繞鈸(にょうはつ)を打ち鳴らす「鼓鈸三通(くはつさんつう)」や、導師による「引導法語(いんどうほうご)」など、曹洞宗ならではの儀礼が特徴です。

また、焼香の回数や数珠の扱い、言葉遣いなど、曹洞宗特有の作法も多く見られます。
あらかじめ宗派ごとのマナーを理解しておくことで、葬儀に臨む際も落ち着いて故人を偲ぶことができるでしょう。

お葬式のむすびすでは、曹洞宗をはじめとするさまざまな宗教・宗派に対応した葬儀プランをご用意しています。
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資料請求はオンライン・郵送のいずれでも可能です。安心してご相談ください。

よくある質問

曹洞宗の焼香の作法は?
曹洞宗の焼香は2回行います。1度目は抹香をつまんで額に押しいただく「主香(しゅこう)」、2回目は額に押しいただかず、そのまま香炉にくべる「従香(じゅうこう)」で行うのが正式です。ただし、参列者の人数や状況によっては1回の場合もあります。
曹洞宗の葬儀でシンバルを鳴らす理由を教えてください
曹洞宗の法要でみられるシンバルのような仏具を「鐃鈸(にゅうはつ)」といいます。鐃鈸は妙鉢(みょうはち)、鈸(はつ)とも呼ばれ、曹洞宗の法要では仏の徳を讃えたり、諸仏諸菩薩を迎えたり、故人の成仏のために鳴らされます。葬儀では「鼓鈸三通(くはつさんつう)」などで使われます。
僧侶へのお布施は、どのようにお渡しすればいいですか
お布施をそのまま僧侶に手渡しすることはマナー違反です。「袱紗(ふくさ)」か「切手盆(きってぼん:冠婚葬祭でご祝儀やお布施などを渡すとき用いる小さなお盆)」の上にのせて、相手から文字が見えるように渡します。その際、「本日はありがとうございました」など、僧侶へお礼を述べることも大切です。
曹洞宗の葬儀は「家族葬」で行えますか?
家族葬で行えます。家族葬は近親者のみで営む葬儀であり、儀式の形態を規定するものではありません。家族葬は弔問客に気を遣うことなく、落ち着いて故人とお別れをすることができます。また、一般的な葬儀に比べて規模が小さくなるため、費用を抑えられるメリットがあります。
曹洞宗の葬儀は「一日葬」で行えますか?
同じ曹洞宗であってもお寺ごとに考え方が異なるため、「一日葬」ができる場合とできない場合があります。古くからのしきたりを重んじているお寺では、一日葬ができないこともあります。どのような葬儀を行いたいかについては、家族や親族とよく話し合い、菩提寺や読経を依頼する僧侶、葬儀社に相談して決めましょう。

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中川 貴之