仏教の葬儀とは? 日本の仏教における葬儀の意味や流れ、葬儀費用。他の宗教との違いを解説

ご葬儀スタイル

日本の葬儀の多くは仏教の形式で行われています。仏教葬儀は、故人の冥福を祈り、残された人が心を整えるための儀式として、古くから人々の暮らしの中に受け継がれてきました。
通夜・葬儀・告別式などの儀礼には、それぞれに意味があり、宗派や地域によって細かな違いがあります。読経や焼香、戒名といった作法にも、仏教の教えや死生観が反映されています。
本記事では、仏教における葬儀の考え方や流れ、知っておきたい用語、費用の目安を中心に整理し、あわせて神道やキリスト教など仏教以外の宗教との違いにも触れます。
葬儀の全体像を理解しておくことは、いざというときに落ち着いて判断するための助けとなります。

日本の仏教の葬儀とは

仏教の葬儀の起源をたどると、その背景には釈迦(釈尊、仏陀)の教えがあります。釈迦は紀元前5〜6世紀頃、古代北インドのシャーキャ族の小国に生まれた王子で、本名をゴータマ・シッダールダといいます。人間が避けることのできない「生老病死」の苦しみに疑問を抱き、29歳のときに妻子を残して出家しました。6年以上に及ぶ厳しい修行の末、インド北東部のブッダガヤの菩提樹の下で悟りを開き、人間を苦しみから解放する真理を見いだしたと伝えられています。
悟りを得た釈迦は、生きとし生けるものすべてに向けて、六道や輪廻などの死後の世界について説きましたが、自らの教えを葬儀という形で具体的に示すことはありませんでした。そのため、釈迦の時代における葬送は、教義というよりも当時の社会慣習として行われていたと考えられます。
釈迦の入滅からおよそ500年後、紀元前後になると、インドで出家者だけでなく在家信者の救済をも掲げる大乗仏教が誕生します。大乗仏教が中国へ伝わる過程で、道教や民間信仰、先祖供養の風習と結びつき、仏教は葬儀や供養と深く関わる宗教へと発展していきました。
日本における葬儀の最古の記録は『古事記』に記された天若日子(アメノワカヒコ)の弔いの記述であり、そこから古代日本における葬送の原型をうかがうことができます。仏教が中国から朝鮮半島を経て日本に伝来したのは538〜552年頃とされ、日本で最初に仏教の葬儀が行われたのは、持統天皇(645〜703年)または文武天皇(683〜707年)の時代と伝えられています。
平安時代になると、公家や武士階級の葬儀が寺院で営まれるようになり、仏教儀礼としての形式が定着しました。さらに江戸時代には、徳川幕府の寺請制度によって、すべての民衆がいずれかの寺院を菩提寺として定め、檀家になることが義務づけられます。これにより、葬儀や法要に僧侶を招く慣習が全国に広まり、仏教の葬儀が日本人の生活文化として根づき、現在に受け継がれています。
なお、葬送全体の基礎理解を深めるには、由来や意味を整理した葬儀とは何か?由来を交えながら解説も役立ちます。

日本の仏教が葬儀を行う理由

仏教の葬儀は、故人を弔い、残された人々が心の区切りをつけるための宗教的行為として位置づけられています。葬儀は単なる別れの場ではなく、故人の魂を仏の教えに導くと同時に、生者が「死」という現実を受け入れるための社会的儀式として行われてきました。
人類にとって弔いの儀式は本能的な行為ともいわれます。大切な人の死に直面したとき、人は自然に悲しみや敬意、畏怖の念を抱きます。葬儀は、そうした複雑な感情を儀式というかたちで表現し、共有することで心を整理し、再び日常に向き合うための支えとなってきました。
このような弔いの文化は地域や宗教を問わず存在し、葬送の儀式をまったく持たない民族はいないとされます。その中でも、日本では仏教が葬儀の中心的な役割を担ってきました。現在行われている葬儀のうち、約9割が仏教の形式によるものといわれています。
日本の仏教では、宗派ごとに葬儀の意味づけが異なります。檀信徒や信徒が亡くなった際には、それぞれの教義に基づいた儀礼が行われ、故人が仏の道へ導かれることを願って営まれます。以下は、主な宗派における葬儀の考え方の違いをまとめたものです。

宗派 葬儀の意味
天台宗 供養する遺族と縁者が、供養される故人と一体となって仏性を開発し、共に仏道に成じていくために行われる。
真言宗 人は誰でも修行によって仏となる可能性を持つとし、即身成仏への引導作法として行われる。
浄土宗 故人が阿弥陀如来の導きによって西方浄土に生まれ変わり、悟りを開いて人々を救う存在となることを願って行われる。
浄土真宗 浄土往生は阿弥陀如来の本願により約束されていると考え、葬儀は故人のためではなく、如来の救いに感謝する仏事として行われる。
臨済宗 故人が仏弟子として修行の道に入り、自身の仏性に目覚めることを願って行われる。
曹洞宗 故人が仏弟子となり、仏になるための仏道入門の儀式であり、仏の世界へ旅立つために行われる。
日蓮宗 「法華経を信じ、南無妙法蓮華経の題目を唱える者は霊山浄土に往詣できる」との教えに基づいて行われる。

このように、仏教葬儀は宗派ごとに異なる思想に基づきながらも、共通して「故人の安寧」と「生者の心の整理」を目的としています。日常的に菩提寺を訪れない人であっても、葬儀や法要の際には、先祖代々の宗派の教えや儀礼に従うのが一般的です。
一方、菩提寺を持たない場合でも、仏教式の葬儀を行うときは、いずれかの宗派の寺院や僧侶に依頼して葬儀を執り行います。先祖の菩提寺や宗派を確認しておくことで、葬儀の依頼や準備をスムーズに進めることができ、宗派ごとの作法にも安心して対応できます。詳細な用語整理には葬儀と葬式の違いも参照すると理解が深まります。

仏教の葬儀は、「通夜」「葬儀」「告別式」から構成される

仏教の葬儀は、宗派を問わず「通夜」「葬儀」「告別式」という三つの儀式で構成され、それぞれに異なる意味と役割があります。これらの儀式は、故人を仏の世界へ導くと同時に、遺族や参列者が故人への思いを整理するための時間として行われます。
一般的な葬儀は、通夜と葬儀・告別式を二日間にわたって執り行う形式が主流です。通夜は、葬儀の前夜に遺族や近親者が故人を偲び、最後の時間を共に過ごす場であり、家族が静かに別れを受け入れるための大切なひとときとされています。
葬儀と告別式は本来、意味の異なる儀式です。葬儀は宗教的儀礼として、故人をこの世からあの世へ送り出すために営まれるものであり、僧侶による読経や引導が中心となります。一方、告別式は社会的儀式として、友人や知人など一般の参列者が故人に最後の別れを告げる場です。
現在では、葬儀と告別式を一体化して行うのが一般的になっていますが、それぞれの本来の意義を理解しておくことは、葬儀に臨む際の心構えを整えるうえで大切です。宗派によって進行や読経の内容に違いはありますが、通夜から告別式までの流れは多くの葬儀に共通しています。必要な所要時間の目安は葬儀の所要時間の目安と流れに整理されています。

通夜とは

通夜は、故人の亡骸を夜通し見守り、冥福を祈る儀式として古くから行われてきました。弔問客を招かず、家族や近親者だけで夜を徹して故人を見守る形式は、日本古来の殯(もがり)の風習に由来しています。
通夜の場では、故人は遺族にとってまだ生きている存在として扱われ、かつては枕元で夜を明かし、食事を共にすることもありました。こうした行為には、死を徐々に受け入れる心理的な過程としての意味も込められていたと考えられます。
戦後以降、通夜は翌日に行われる葬儀・告別式に参列できない人が故人と別れを告げる場としての役割を強めました。この形式を「本通夜(ほんつや)」といいます。僧侶による読経や焼香が行われ、宗教的儀礼としての性格も定着しました。
現代では、夜を徹して故人と過ごすことは少なくなり、2〜3時間程度で終える「半通夜(はんつや)」が一般的です。本通夜と半通夜を厳密に区別することは少なく、いずれも「通夜」と総称されます。
また、「仮通夜(かりつや)」と呼ばれる形式もあります。これは、故人が亡くなった当日の夜に身内だけで行うもので、翌日に参列者を招いて本通夜、三日目に葬儀・告別式を行うのが一般的な流れです。こうした形は、地域や家庭の事情に合わせて柔軟に行われています。段取り全体を把握したい場合は、はじめての方向けの流れ解説葬儀における流れや、日程決めの注意点をまとめた葬儀の日程について詳しく解説も確認すると安心です。

葬儀とは

葬儀は、故人の冥福を祈り、別れを惜しむ儀式であると同時に、遺族や縁者が悲しみを共有するための重要な場です。葬儀によって、死を受け入れ、故人を仏の世界へ導くという宗教的意味が込められています。
もともと葬儀は、自宅から野辺送りの葬列を組み、葬場に到着した後に営まれる宗教儀礼でした。死者をこの世からあの世に送り出すための行為であり、僧侶による読経や儀式が中心となっていました。
しかし、1970年代以降は都市化の進行や住宅事情の変化により、自宅での葬儀は急速に減少しました。これに代わり、葬儀場や斎場で葬儀を行う形式が一般化しています。現代の葬儀では、火葬の時刻や参列者の都合を考慮して、葬儀と告別式を一体的に行うことが多く、1〜2時間程度で終えるのが一般的です。
こうした変化の中でも、葬儀は依然として仏教の儀式として重要な位置づけを保っています。葬儀を通して故人を送り出すという宗教的な意味は、時代や形式が変わっても受け継がれています。参列範囲や招待の考え方は喪主のための参列者ガイドや、欠席時のマナーをまとめた参列できない場合の対応が実務の参考になります。

告別式とは

告別式は、故人と生前に縁のあった人々が集まり、最後の別れを告げるための社会的儀式です。参列者は遺族にお悔やみを述べ、故人との関わりを偲びながら別れの時間を過ごします。葬儀が宗教的な意味を持つのに対し、告別式は社会的側面が強く、友人や知人、仕事関係者など幅広い人々が参列するのが特徴です。
葬儀式の後半に続けて行われることが多く、僧侶の読経に続いて焼香や拝礼を行い、故人との別れを形にします。現代では、葬儀と告別式を分けずに同日に一連の儀式として行うことが主流となっています。そのため、一般的に「葬儀」といえば葬儀式と告別式を合わせたものを指すようになりました。形式が簡略化されても、故人を敬い、感謝を伝えるという本質的な意義は変わりません。挨拶やふるまいに不安がある場合は、具体例をまとめた葬儀の挨拶(例文)や、立ち居振る舞いを解説した葬儀のマナーが参考になります。

仏教の葬儀における戒名、読経、焼香、数珠の意味

戒名(かいみょう)は、仏教において故人が仏の弟子となることを意味する名前です。仏教徒としての信仰を示し、死後に仏の教えに導かれる存在であることを表しています。葬儀における戒名は、故人が仏の道に入ることを象徴する重要な要素です。
「戒名」という呼称は、天台宗・真言宗・曹洞宗・臨済宗・浄土宗で用いられます。浄土真宗では「法名(ほうみょう)」、日蓮宗では「法号(ほうごう)」と呼ばれ、宗派によって名称が異なります。これは、各宗派の教義や死生観の違いによるものであり、戒名の授与が故人の信仰と深く結びついていることを示しています。
戒名は通常、「院号」「道号」「戒名(または法名・法号)」「位号」の四つの要素から構成されます。宗派によって特徴があり、浄土宗では「誉」、真言宗では梵字、日蓮宗では「日」や「妙」の文字が使われ、浄土真宗では男性に「釋(しゃく)」、女性には「釋尼(しゃくに)」が付けられます。こうした違いは、宗派ごとの思想や伝統を反映したものとされています。
また、戒名の文字数が多いほど位が高いとされ、とくに「院号」が付く戒名は、寺院への貢献や信仰活動において特に功績を残した人に与えられる最上位の称号とされています。このように戒名には、社会的地位や信仰心を象徴する意味も含まれています。
一方で、家族や先祖との関係性にも配慮が求められます。たとえば、先祖と同じお墓に入る場合は、先祖より高い位号の戒名をつけることは避けるのが一般的です。夫婦で同じお墓に入る場合は、二人の戒名の位を揃えるのが礼とされています。こうした考え方には、仏教が重んじる「和合」や「調和」の精神が反映されているといえます。

香典や数珠など実務面の基礎知識は、金額や包み方をまとめた葬儀の香典マナーや、種類と扱い方を解説した葬儀における数珠も合わせて確認すると安心です。

戒名とは

戒名(かいみょう)は、仏教において故人が仏の弟子となることを示す名前であり、死後に仏の教えに導かれる存在であることを表します。葬儀では、故人が仏の道に入ることを象徴する大切な儀礼の一つとされています。
「戒名」という呼び方は、天台宗・真言宗・曹洞宗・臨済宗・浄土宗などで用いられます。浄土真宗では「法名(ほうみょう)」、日蓮宗では「法号(ほうごう)」と呼ばれ、宗派によって名称が異なります。これらはそれぞれの教義や死生観に基づくもので、戒名の授与が信仰と深く結びついていることを示しています。
戒名は「院号」「道号」「戒名(法名・法号)」「位号」の四つの要素から構成されます。宗派ごとの特徴は次の表のとおりです。

宗派 呼び方 特徴・補足
天台宗 戒名 故人が仏弟子として仏道に入る名前。生前授戒で授かる場合もある。
真言宗 戒名 梵字や仏号を含むことが多く、即身成仏の思想に基づく。
曹洞宗・臨済宗 戒名 出家得度の意味を持ち、故人が仏弟子として修行の道に入ることを示す。
浄土宗 戒名 「誉」の字を付けるのが特徴で、阿弥陀如来の導きを象徴する。
浄土真宗 法名 男性は「釋」、女性は「釋尼」を付け、阿弥陀如来の本願への感謝を表す。
日蓮宗 法号 「日」「妙」の字を含み、法華経への信仰を示す。

また、戒名の文字数や構成には一定の格式があり、文字数が多いほど位が高いとされています。なかでも「院号」が付く戒名は、寺院や地域への貢献が大きかった人に授けられる最上位の称号です。戒名は単なる形式ではなく、故人の信仰心や生前の生き方を象徴する重要な意味を持ちます。浄土真宗や日蓮宗の具体的な葬儀の考え方は、それぞれの解説記事(浄土真宗の葬儀日蓮宗の葬儀)も参考になります。

戒名と納骨・お墓の関係

戒名は、故人が仏の弟子として仏道に入ることを示すものであり、納骨や埋葬の際にも密接に関わります。本来は生前に授かることが理想とされていますが、現代では葬儀までの間に菩提寺の僧侶から授けられるのが一般的です。
菩提寺が遠方にあって僧侶の来訪が難しい場合でも、戒名だけは菩提寺に依頼するのが原則です。宗派をまたいで他の僧侶に戒名を授けてもらうと、菩提寺のお墓に納骨できないことがあるため、事前に必ず相談しておく必要があります。
また、菩提寺を持たない人の場合は、葬儀を依頼した寺院の僧侶が、故人の生前の人柄や信仰心を遺族から聞き取ったうえで戒名を授けます。俗名で葬儀を行った場合でも、寺院の境内墓地に納骨する際には戒名が求められるのが一般的です。その場合は、納骨先の寺院で戒名を授けてもらうことになります。
一方、寺院に属していない公営霊園や民間霊園では、戒名がなくても納骨は可能です。ただし、その後の供養の方法をどうするかは、あらかじめ家族で話し合っておくことが望ましいでしょう。戒名は宗教儀礼上の名称であると同時に、故人の信仰と家族のつながりを象徴する存在でもあります。納骨や手続きの全体像は逝去から葬儀を終えるまでの手続きや、喪主の役割をまとめた葬儀における喪主とは?が道筋の把握に役立ちます。

読経の意味

読経(どきょう)とは、仏教の経典を声に出して唱えることを指します。経典を通じて仏の教えを実践し、心を整える行為として、葬儀や法要において重要な位置を占めています。一般的には声に出して唱えることを指しますが、経典を見ながら静かに読むことも読経に含まれます。経典を暗唱して唱える場合は「誦経(ずきょう・じゅきょう)」と呼び、読経と誦経の両方を合わせて「読誦(どくじゅ)」といいます。これらはいずれも釈迦の教えを伝える行為であり、日常的に「お経」と呼ばれています。
仏教の経典は釈迦本人によって書かれたものではありません。釈迦の入滅後、およそ500年にわたって弟子たちがその教えを口伝し、紀元前3世紀ごろにまとめられたのが「小乗経典」とされています。のちに紀元前後から興った大乗仏教では、より多くの人々を救済する教えが展開され、膨大な「大乗経典」がサンスクリット語(梵語)で著されました。これらは中国に伝わり、漢訳経典として体系化され、日本の仏教にも大きな影響を与えました。538~552年頃に仏教が日本に伝来すると、中国に留学した僧侶や渡来した高僧たちによって、多くの経典がもたらされました。それらは各宗派の教義の根幹を形づくり、葬儀や法要における読経として現代まで受け継がれています。
なお、参列時のふるまいを事前に確認したい場合は、服装の基本をまとめた葬儀における服装や、挨拶の言い回しを掲載した挨拶の例文が実用的です。

読経の目的

読経の目的は、仏教の宗派や経典の内容によって異なりますが、葬儀や法要の場では故人を仏の世界へ導くため、または感謝と祈りを表すために行われます。葬儀における読経は、故人を仏弟子として迎え入れ、冥福を祈る宗教的儀礼の中心的な役割を果たします。
古代インドでは、経典は声に出して唱えることで初めて功徳を生むと考えられていました。インドから仏教が伝わった中国でも、道教の祈祷やお祓いにおいて声に出す文化があり、これが仏教儀礼にも受け継がれました。日本でも古くから「言霊(ことだま)」の信仰があり、言葉に宿る力を重んじる文化の中で、読経が自然に受け入れられたと考えられます。
葬儀での読経には、宗派ごとの教えに基づく明確な意義があります。たとえば、浄土宗では阿弥陀如来の名号を唱えて故人を極楽浄土へ導くことを目的とし、禅宗では故人を仏弟子として修行の道に導く意が込められています。真言宗では故人の成仏を願う「即身成仏」の思想に基づき、日蓮宗では「南無妙法蓮華経」の題目を唱えて仏の功徳を称えます。
このように、読経は単なる儀式ではなく、故人の救いと遺族の祈りをつなぐ大切な行為であり、仏教における葬儀の本質を体現するものといえます。

仏教の葬儀費用は、規模や形式によって幅があり平均100~200万円前後

仏教の葬儀費用は、葬儀社のプラン内容や菩提寺の方針によって大きく異なります。地域による慣習の差はありますが、一般的には100万〜200万円前後となるケースが多く見られます。費用の内訳は大きく分けて「葬儀運営費」「参列者対応費」「お寺関係費」の三つです。葬儀会場や祭壇などの運営費が総額の約半分を占め、参列者対応費やお布施などが残りを構成します。

  • 葬儀運営費: 葬儀を行うために必要な基本費用(会場、祭壇、火葬場など)
  • 参列者対応費: 参列者への飲食代、香典返しなどのおもてなし費用
  • お寺関係費: 僧侶へのお布施、御車代、御膳料などの謝礼

葬儀費用の総額は、参列者の人数や地域の風習、儀式の規模によって変動します。とくに香典返しや通夜振る舞いといった参列者対応費は、人数の多い葬儀では高額になりやすい傾向があります。費用全体の内訳把握には、相場を整理した葬儀にかかる費用と内訳が出費計画の目安になります。

お布施の内訳と費用の目安

お布施は、読経や授戒などの法要に対する感謝の気持ちとして僧侶にお渡しする謝礼です。導師(主僧)だけでなく、脇導師(補助僧)にも渡すのが一般的で、御車代(交通費)や御膳料(食事を辞退された場合の代わりの謝礼)も別途包みます。初七日を葬儀と同日に行う場合は、その分のお布施も加算します。金額の考え方は、一日葬時の相場観をまとめた一日葬のお布施も参考になります。

項目 内容 費用の目安
導師(主僧) 葬儀の中心となる僧侶へのお布施 お布施:30〜50万円
御車代・御膳料:各1〜2万円
脇導師(補助僧) 導師を補助する僧侶へのお布施 お布施:10〜20万円 × 人数
御車代・御膳料:各1〜2万円 × 人数
戒名 授戒を受け、仏弟子として戒名を授かる際の謝礼 お布施に含まれる(位号により異なる)
初七日法要 葬儀と同日に行う場合の法要費用 3〜5万円

お布施の金額は宗派や寺院の方針によって異なりますが、「戒名の位号」「僧侶の人数」「地域慣習」によって金額に幅があります。金額の基準を決めかねる場合は、直接菩提寺に相談することが望ましいでしょう。供花など個別費用の考え方は、花代の整理記事葬儀における花代も併せてご確認ください。

葬儀形式による費用の違い

葬儀費用は、選ぶ葬儀形式によっても大きく変わります。最近では、参列人数を絞った家族葬や、一日で葬儀と火葬を終える一日葬など、規模を抑えた形式を選ぶ方も増えています。

  • 家族葬: 家族や近しい人のみを招いて行う少人数の葬儀。故人との時間をゆっくり過ごせる一方で、後日弔問が増えることもある。
  • 一日葬: 通夜を行わず、1日で葬儀・告別式・火葬までを行う形式。身体的・時間的負担が少なく、費用を抑えやすい。

こうした葬儀形式を選ぶことで、会場費や飲食費、香典返しなどの支出を軽減できます。ただし、地域の慣習や菩提寺の方針によっては、一日葬や簡略形式を認めていない場合もあるため、事前に確認が必要です。形式の選び方は、一般葬との差を整理した家族葬と一般葬の違いや、形式の定義を解説した一日葬とは?が判断の助けになります。

費用を把握し、複数の見積もりを比較することが大切

葬儀費用は、項目を整理し、見積もりを比較することで適正額を把握できます。同じ規模・内容でも、葬儀社によって含まれるサービスやお布施の扱い方が異なるため、少なくとも2〜3社の見積もりを比較することが推奨されます。
また、費用を抑えるためには、家族で葬儀の目的や形式をあらかじめ話し合い、「どの部分に重点を置くか」を明確にすることが大切です。葬儀社選びに迷う場合は、選定の観点をまとめた葬儀社を選ぶときのポイントや、人数別の費用感を示した家族葬にかかる費用が比較検討に役立ちます。

仏教式の葬儀以外にも、神道式、キリスト教式など、多様な形式がある

日本には、仏教以外にも多くの宗教・宗派が存在し、それぞれの教義や信仰に基づいた葬儀が行われています。寺院や神社、教会、礼拝堂など、宗教ごとに葬送の儀礼は異なりますが、いずれも故人を敬い、遺された人々の心を整えるという共通の目的を持っています。現在、日本の葬儀の約9割は仏教式で行われていますが、神道式やキリスト教式など、他宗教による葬儀も一定数行われています。それぞれの宗教が持つ死生観や儀礼の違いを理解しておくことで、参列時にも失礼のない対応ができます。

神道の葬儀

神道では、人が亡くなることを「死ぬ」とは言わず、「帰幽(きゆう)」と表現します。これは、亡くなった人が神のいる世界「幽世(かくりよ)」へ帰るという考え方によるものです。幽世は、仏教の浄土のように遠い世界ではなく、現世(うつしよ)のすぐ近くにあるとされ、故人の御霊(みたま)は遺族を見守り続けると考えられています。
神道では、永遠に変わらない神の世界を「常世(とこよ)」、死後の世界を「黄泉(よみ)」と呼びます。これらの世界観は、仏教の輪廻転生や極楽浄土の思想とは異なり、より現世とのつながりを重視しています。神道の葬儀は「神葬祭(しんそうさい)」と呼ばれ、仏式の通夜にあたる儀式が「通夜祭(つやさい)」と「遷霊祭(せんれいさい)」、葬儀・告別式にあたる儀式が「葬場祭(そうじょうさい)」です。もともとは自宅で遷霊祭を行い、「発柩祭(はっきゅうさい)」を経て斎場に移動する形でしたが、現在では通夜祭から葬場祭までを斎場で一連に行うのが一般的です。祝詞や玉串の作法に不安がある場合は、持ち物の事前確認として葬儀における持ち物をチェックしておくと安心です。

キリスト教の葬儀

キリスト教には大きく分けてカトリック教会プロテスタント諸教会の2つの系統があり、葬儀の目的や儀式の進行にも違いがあります。

カトリックの葬儀

カトリック教会では、死は「終わり」ではなく「新たな命の始まり」と捉えられています。葬儀は、故人の魂を神にゆだね、神の御手に迎えられることを祈る儀式です。イエス・キリストの再臨と故人の復活を待ち望むという信仰のもとで営まれます。葬儀では、神父による聖書朗読や説教、「ことばの典礼」「感謝の典礼」といった儀式が行われ、その後、参列者が故人に別れを告げる告別式が続きます。式の最後には、故人の魂の安息を祈る「永遠の安息を願う祈り」が唱えられます。

プロテスタントの葬儀

プロテスタントには、カトリックのような中心的な教会制度はなく、多くの宗派や教団が存在します。そのため、葬儀の内容や進行は教会や牧師によって異なりますが、共通して「故人を偲び、神に感謝と祈りを捧げる場」として営まれます。プロテスタントの葬儀では、牧師による聖書朗読や説教、讃美歌の斉唱、黙祷などが中心であり、葬儀と告別式を分けずに一連の儀式として行うのが一般的です。祭壇には十字架と遺影を飾り、花やキャンドルが供えられます。服装の基本は仏式と大きくは変わらないため、迷った場合は葬儀における女性の服装など基本マナーを参照しましょう。

宗教による葬儀形式の主な違い

宗教 葬儀の呼称 司式者 主な儀式・特徴
仏教 葬儀・告別式 僧侶 読経・焼香・戒名授与・数珠を使用
神道 神葬祭(通夜祭・葬場祭など) 神職(神主) 祝詞奏上・玉串奉奠・榊を供える
キリスト教(カトリック) 葬儀ミサ 神父 聖書朗読・感謝の典礼・祈り
キリスト教(プロテスタント) 召天式(葬儀) 牧師 讃美歌・聖書朗読・説教・黙祷

宗教による葬儀の違いは、死後の世界観や祈りの形式に表れます。仏教では輪廻や成仏を重んじ、神道では祖霊とのつながりを尊び、キリスト教では復活と永遠の命を信じます。いずれの宗教も、故人を敬い、遺族が心を整えるための大切な儀式である点は共通しています。

現代の仏教葬儀は、伝統を受け継ぎながら「その人らしさ」を大切に準備することが大切

現在、日本の葬儀の約9割は仏教式で行われています。 仏教には、天台宗・真言宗・浄土宗・浄土真宗・臨済宗・曹洞宗・日蓮宗など多くの宗派があり、伝統的なものだけでも13宗56派にのぼります。仏教系の新しい教団を含めると、その数は13宗157派を超えるともいわれます。各宗派ごとに教義や儀礼が異なり、それぞれの思想に基づいた葬儀が執り行われています。
宗派によって葬儀の意味や進め方は異なりますが、共通して重視されているのは、伝統を守りつつ、故人の「その人らしさ」を尊重することです。近年の仏教葬儀では、形式にとらわれず、故人の生き方や人柄を偲ぶ場としての意味合いがより強まっています。
葬儀を行う際は、あらかじめ自分や家族の宗派を確認しておくことが大切です。菩提寺を持つ場合は、僧侶への依頼や戒名の授与などを通じて、宗派の教えに沿った葬儀を行うことができます。菩提寺がない場合でも、宗派を選び、寺院や僧侶に相談することで、心を込めた仏教式の葬儀を執り行うことができます。
仏教葬儀の意味や流れを理解しておくことで、いざというときにも落ち着いて判断できるようになります。家族の事情に応じた形式選びの検討には、定義を整理した家族葬とは何かや、在宅での実施可否を解説した自宅葬とは?も参考にしてください。
お葬式のむすびすでは、仏教をはじめ、さまざまな宗派・宗教に対応した葬儀プランをご用意しています。事前の相談やお急ぎの手配にも対応し、故人の想いを大切にしたお別れのかたちを丁寧にサポートいたします。

よくある質問

仏教の葬儀が日本で主流になったのはなぜですか?
日本では、奈良・平安時代に貴族や武士の葬儀が寺院で行われるようになり、江戸時代の寺請制度によってすべての人がいずれかの寺院に所属する仕組みが定められました。 これにより、葬儀や法要を仏教式で行う慣習が全国に広がり、現在でも9割以上の葬儀が仏教式で執り行われています。
仏教の葬儀の流れはどのようになっていますか?
仏教の葬儀は、宗派によらず「通夜」「葬儀」「告別式」の三つで構成されます。 通夜は遺族が故人を偲ぶ時間、葬儀は故人をあの世へ送る宗教儀式、告別式は社会的にお別れをする場という意味を持っています。 それぞれの儀式で読経や焼香が行われ、宗派の教えに基づいて故人の冥福を祈ります。
仏教葬儀にかかる費用の目安を教えてください。
仏教の葬儀費用は、規模や地域、葬儀社のプランによって異なりますが、平均すると100〜200万円前後です。 内訳は、葬儀運営費・参列者対応費・お寺関係費に分かれ、お布施は導師で30〜50万円程度が目安とされています。 家族葬や一日葬を選ぶことで、総額を抑えることも可能です。
仏教葬儀で使われる主な用語には何がありますか?
代表的な用語には、故人が仏の弟子として授かる「戒名(法名・法号)」、経典を唱える「読経」、香を供える「焼香」、念仏の回数を数えるために用いる「数珠(念珠)」などがあります。 いずれも故人を敬い、心を整えるための意味があり、宗派ごとに細かな作法が異なります。
仏教以外の葬儀との違いは何ですか?
仏教葬儀では読経や焼香を通じて故人の成仏を願いますが、神道では御霊を慰める「神葬祭」、キリスト教では神に感謝と祈りを捧げる「召天式(葬儀ミサ)」が行われます。 死後の世界観や祈りの対象が異なりますが、いずれも故人を敬い、遺族の心を支える儀式である点は共通しています。

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中川 貴之