一般葬とは何か?メリット・デメリットや家族葬との違いを解説
家族葬と一般葬の違いは、形式や呼び方以上に、誰のために、どのように見送るかという価値観の違いに起因します。
単純に「参列者の数が少ないから家族葬」「昔ながらの形式だから一般葬」といった理解では、葬儀を選ぶうえでの判断材料としては不十分です。
葬儀の選択肢が広がった近年、参列者の範囲・費用・香典・儀礼の有無などをもとに、家族や故人の意向に合った形式を検討する場面が増えています。
一方で、家族葬と一般葬の明確な境界が存在しないことから、どちらを選ぶべきか迷うケースも多く見られます。
この記事では、家族葬と一般葬の違いを参列者・儀礼・費用といった要素から整理しつつ、実際には共通する部分もあることを示します。
そのうえで、形式にとらわれすぎず、自分たちに合った送り方を選ぶための判断軸を提供することを目的としています。

家族葬と一般葬の違いは「参列範囲と社会的対応の幅」にある
家族葬と一般葬の本質的な違いは、参列する範囲の広さと、それに伴う社会的な儀礼の有無にあります。言い換えれば、形式そのものというより、誰に対して葬儀を開くか、どのような関係性に配慮するかという「社会的な開かれ方」が両者を分けています。
家族葬では、参列者を遺族や近親者などに限定するため、案内状を送る範囲や香典、会葬御礼などの対応も最小限にとどまります。これに対し、一般葬では近隣住民・勤務先・友人・知人など幅広い層が対象となるため、式典としての形式性や対外的な配慮が求められます。弔電や供花の扱い、受付対応など、外部に対して“見せる”ことを意識した準備が必要となるのが一般葬の特徴です。
この違いは、参列人数や費用の多寡よりも、「誰を対象にした式なのか」という方向性に起因します。家族葬を選ぶ場合でも、広い交友関係を持っていた故人であれば、あとから弔問や香典の対応が必要になることがあります。一方、一般葬であっても、結果的に少人数で行われる場合もあり、形式と実態が必ずしも一致するわけではありません。
したがって、両者の違いを考える際には、「呼ぶ人数」ではなく、「誰に向けた場なのか」「どこまで社会的儀礼を意識するか」という視点から判断することが重要です。名称やイメージに引きずられず、実際に必要とされる対応範囲から考えることで、自分たちに合った選択につながります。
参列者・儀礼の違いを中心とした本質的な相違点
家族葬と一般葬の違いは、参列する人の範囲と、それに伴う社会的儀礼の設計にあります。呼ぶ人数ではなく、誰を対象にするかという「関係性の広さ」が、両者の性質を大きく分ける要素です。
形式としてはどちらも通夜・告別式を行う葬儀であり、儀式自体に明確な定義の差はありません。ただし、家族葬は遺族や近親者を中心とした“内向きの場”として構成されるため、香典の辞退や受付の簡略化、案内状の送付範囲の制限など、社会的対応を最小限に抑える傾向があります。一方、一般葬は会社関係・地域・友人なども参列対象となるため、弔電対応・供花受付・香典返しなど外向きの儀礼や段取りが必要になります。
この違いは、単なる規模の大小ではなく、「誰に向けて場を開くか」に基づいた設計上の差異といえます。たとえば、30人が参列する家族葬と、同じ人数の一般葬では、会場の配置や儀礼の内容が大きく異なる場合があります。また、家族葬でも丁寧に儀礼を整えることは可能であり、形式名だけで実態を語ることはできません。
そのため、葬儀形式を検討する際には、人数よりも「社会的対応の幅」を基準に整理する視点が有効です。どのような関係性に対して、どこまでの配慮が必要かを明確にすることで、形式にとらわれない実質的な判断が可能になります。
費用や宗教形式など、実は共通している部分もある
家族葬と一般葬は異なる点が多く語られますが、実際には共通している部分も少なくありません。とくに、基本的な葬儀の流れや宗教的な儀式の内容は、形式にかかわらずほぼ同様に実施されます。
たとえば、仏教であれば通夜・告別式・読経・焼香といった一連の流れは、家族葬でも一般葬でも変わりません。使用する祭壇や僧侶への謝礼(お布施)も、規模や宗派によって差はあるものの、形式そのものが原因で異なるわけではないのが実情です。また、会場の種類(自宅・式場・寺院など)や火葬までの段取りも、両者で大きな差があるわけではありません。
費用についても、家族葬の方が必ず安くなるとは限らない点に注意が必要です。参列者数が少ないことで返礼品の数や会食の費用は減りますが、式そのものにかかる固定費(祭壇・会場・人件費など)はほぼ同じです。したがって、単純な形式の違いだけで費用差を想定すると、かえって想定外の出費につながることもあります。
このように、違いばかりに注目すると見落としがちな共通点もあります。葬儀の本質的な部分は共通しているという前提を持つことで、形式の違いに過度な意味を持たせず、冷静に比較・判断することが可能になります。
「家族葬か一般葬か」で悩むのは“形式と実情が一致しない中間層”だから
家族葬か一般葬かで迷う背景には、「誰を呼びたいか」と「形式として何に当てはまるか」がうまく一致しないという問題があります。どちらか一方を選べばよいという話ではなく、参列の範囲と現実的な制約が噛み合わないことで判断が難しくなっているのが実情です。
たとえば、家族としては身内やごく親しい人だけで送りたいと考えていても、故人が地域や勤務先で一定のつながりを持っていた場合、誰を呼ぶべきか、呼ばないと失礼にならないかといった懸念が生じます。このように、希望と配慮の間にギャップがあると、形式の選択そのものが難しくなります。
特に、退職して間もない高齢者や、近所付き合い・地域活動に積極的だった人に多く見られる傾向です。家族葬にすると、知らせを受けなかった人から後日弔問や香典の申し出があり、対応に追われる可能性が出てきます。一方で、一般葬にしても実際に参列する人は少なく、式の規模が実態にそぐわなくなる場合もあります。このようなケースでは、一般的な定義に沿った形式が現実に合わなくなり、選択に迷いが生じるのです。
形式の選択に悩む場合は、「家族葬にするか、一般葬にするか」といった二者択一ではなく、「誰をどう迎えるか」を基準に柔軟に設計していく考え方が有効です。形式を目的にするのではなく、現実に即して形式を調整するという発想が、判断を整理する助けになります。
交友がある程度ある人が直面する判断の難しさ
交友関係が一定程度ある場合、「誰を呼ぶか」「どこまで知らせるべきか」の線引きが難しくなり、家族葬か一般葬かという形式の判断に迷いやすくなります。参列人数の多寡ではなく、関係の質や継続性に目を向けることで、この難しさの本質が見えてきます。
特に注意すべきなのは、近所づきあいや地域とのつながりがあるケースです。町内会やご近所などの関係は、葬儀後も生活の中で続いていくため、参列の有無以上に「知らせたかどうか」が人間関係に影響を与える場合があります。知らせなかったことで、相手が気を悪くしたり、後から弔問や香典の申し出があったりと、遺族が対応に追われることも少なくありません。
たとえば、趣味の集まりや旧職場との関係が細く続いていた場合、知らせないことで「自分は呼ばれなかった」と感じる人が出てくることがあります。一方で、一般葬にしたものの実際には多くの人が辞退し、広い会場に空席が目立ち、遺族が気を使う結果になることもあります。どちらを選んでも負担や気遣いが発生することが、この判断の難しさを生んでいます。
こうした場合には、呼ぶ・呼ばないだけの問題として捉えるのではなく、「呼ばなかった相手にどう配慮するか」を含めて考えることが重要です。たとえば、家族葬としつつ、後日お別れの場を設ける、あるいは弔問や香典の受け入れに柔軟に対応するなど、形式に縛られない方法で関係性を保つ工夫が現実的です。
親族以外を数人だけ呼びたい場合、形式の判断はどうすべきか?
親族以外の友人や元同僚など、ごく限られた人を招く場合は、形式としては家族葬に分類されるのが一般的です。家族葬は「親族のみ」と厳密に限定された葬儀ではなく、参列者を絞った比較的内向きな形式として広く運用されています。
実際には、親しい友人やごく少数の知人を招いても、「家族葬」として執り行われているケースは多くあります。何人までが家族葬で、何人からが一般葬という明確な線引きは存在せず、形式を分けるポイントは「人数」よりもむしろ、香典の扱い・受付の有無・訃報の伝え方など、社会的な対応範囲にあります。
たとえば葬儀社の案内でも、「家族葬(20~30名程度)」という表現が用いられることがあり、その中に親族以外が含まれることは珍しくありません。一般葬もまた、少人数で行われるケースがあるため、人数や構成では判断しにくいのが現実です。結果的に、「対外的にどれだけ開かれた場にするか」が、形式上の線引きとして重視されています。
したがって、数人の友人を招きたい場合に「家族葬でいいのか」と迷う必要はありません。家族葬の枠内で、誰を招き、どう対応するかを柔軟に設計すればよいのです。形式を気にしすぎるよりも、自分たちの事情に合わせて無理のない範囲で人を迎えるという発想の方が、納得のいく葬儀につながります。
家族葬が向いているのは、静かで等身大の別れを望む人
家族葬が向いているのは、儀式の形式や世間体よりも、落ち着いた環境で身近な人と自然に故人を見送りたいと考える人です。社会的な体裁に合わせるよりも、自分たちの気持ちや故人らしさを優先したい場合、家族葬の特徴がその思いに合いやすいといえます。
本来、葬儀は周囲への配慮の場であると同時に、遺族や故人のための大切な時間でもあります。参列者への礼儀や儀礼的な要素は大切ですが、それが中心になりすぎると、遺族の気持ちや望む別れ方が見えにくくなってしまいます。形式にとらわれず、自分たちらしく故人を送りたいと感じているなら、家族葬という選択肢は現実的です。
実際に家族葬を選ぶ人の多くは、弔問客に気を使わせたくない、静かに送りたい、本人の意向を反映したいといった理由を挙げています。また、参列者が限られることで、宗教儀礼の有無や式の内容、演出方法などを柔軟に設計できるという自由度の高さも、家族葬の大きな特徴です。葬儀の内容をより自分たちらしく整えやすいため、精神的な負担を抑えながら進めることができます。
誰を呼ぶかという人数の問題ではなく、どのように別れたいかという気持ちの面から形式を考えることで、迷いが少なくなります。慣習や儀礼に強いこだわりがなければ、家族葬は自然な選択肢のひとつとして前向きに検討する価値があります。
交友関係が限られているケース
交友関係がすでに限られている場合は、一般葬のような形式を無理に整える必要はありません。参列者の数にとらわれるよりも、遺族の負担や故人の実情に合った形を選ぶことが、結果的に自然な見送りにつながります。
たとえば、高齢の親が亡くなった場合や、生前にあまり外との交流がなかった人の場合、多くの参列を前提とした一般葬は現実と合わないことがあります。呼ぶ人が少ないことで後ろめたさを感じる必要はありません。むしろ、限られた人だけで落ち着いて見送れることは、遺族にとっても精神的な負担を減らす方向に働きます。
実際、葬儀社の現場でも、高齢者や単身者の葬儀では家族葬を提案されることが一般的になっています。10人以下の小規模な葬儀が増えており、地域によってはそれが標準と見なされているケースもあります。近年は、親族だけで静かに見送る形式が社会的にも定着してきており、交友の希薄化に合わせた葬儀スタイルとして受け入れられています。
重要なのは、参列者の人数そのものではなく、自分たちの事情に合っていたかどうかです。知らせる相手が少ない場合も、それが不自然というわけではありません。形式に縛られることなく、必要な人だけに知らせ、落ち着いた別れの場をつくるという選択は、十分に合理的で現代的な判断といえるでしょう。
精神的・物理的負担を減らしたい家族
葬儀にかかる精神的・物理的な負担をできるだけ軽くしたいと考える家族にとって、家族葬は現実的で無理の少ない選択肢になります。参列範囲を限定し、対応内容を絞ることができるため、遺族自身の心身の状況に合わせた進め方が可能です。
一般葬では、弔問客の案内・香典返し・受付対応など、短期間で多くの作業が発生します。とくに参列者が多い場合は、形式や対応に追われ、故人との時間をじっくり持つことが難しくなることもあります。一方で家族葬は、外部対応が最小限で済むため、身内の時間を確保しながら進行できるという特徴があります。
実際、葬儀社の現場では、介護の継続や看取りを経て精神的に疲弊した家族からの相談が多く寄せられています。こうしたケースでは、体力的・感情的な負担を考慮して、家族葬を勧められることが一般的です。また、参列案内や訃報の範囲が限られるため、急な準備や想定外の対応に追われにくい点も、遺族にとって安心材料になっています。
葬儀に求めることは人それぞれですが、遺族が無理をしすぎることで本来大切にすべき別れの時間が損なわれてしまうこともあります。精神的・体力的な不安がある場合は、「質を落とさず、負担を抑える」方向性で家族葬を検討することが、現実的で納得のいく判断につながります。
家族葬と一般葬の費用に違いはあるのか?
費用面においては、家族葬のほうが一般葬よりも総額を抑えやすい傾向があります。ただし、実質的な自己負担額は、香典収入や返礼品の有無といった運営方針によっても左右されるため、一概にどちらが高いとは言い切れません。
一般葬は参列者が多いため、会場規模や返礼品の数、香典返しの対応などにコストがかかります。その一方で、香典収入が見込めるため、費用の一部を相殺できるケースが多くあります。対して家族葬は、対応範囲が小さく費用自体は抑えやすいものの、香典を辞退するケースもあり、収支としてはすべてを自己負担する可能性があります。
たとえば、2023年時点の調査では、一般葬の平均費用は約120〜150万円、家族葬では80〜110万円程度が目安とされています。ただしこれは会場や地域、実施内容によって大きく変動します。また、香典によって実質的な持ち出しが数十万円減ることもあれば、家族葬で香典を辞退したことで全額を負担したという例もあります。
費用の面では、「形式名」よりも「どういう内容で行うか」が最終的な支出に直結します。参列人数だけでなく、香典を受け取るかどうか、通夜や会食をどう扱うかといった方針によって費用構成は大きく変わります。そのため、どちらの形式を選ぶにしても、まずは予算と希望に合わせて対応方針を整理しておくことが現実的な判断につながります。
費用相場の目安と形式ごとの傾向
家族葬のほうが一般葬よりも費用を抑えやすい傾向がありますが、実際の金額は内容や地域によって幅があります。相場の目安を知っておくことで、無理のない予算計画が立てやすくなります。
一般的に、参列者の数や対応の範囲が狭い家族葬は、会場費や接待費、返礼品などの総額が抑えられるため、総費用は低くなりやすいとされます。反対に、一般葬では外部対応が広くなるぶん、それに伴う費用も増える傾向があります。ただし、どちらの形式であっても、内容をどう組み立てるか次第で費用には大きな差が生じます。
たとえば、2023年時点での調査によると、家族葬の費用は全国平均で80〜110万円前後、一般葬は120〜150万円程度が一つの目安とされています。これは式場使用料や祭壇費、火葬料、会食・返礼品などを含んだ総額であり、実際には「通夜を省略するか」「会食をどうするか」などで10〜30万円以上の差が出ることもあります。
重要なのは、費用を単純に「家族葬=安い」と認識するのではなく、自分たちが必要とする対応範囲に応じて予算の目安をつかむことです。同じ家族葬でも内容次第で費用は変動します。形式だけで判断するのではなく、「どんな別れの場を設けたいか」を出発点に費用を考えることが、無理のない設計につながります。
香典の有無と対応方針が実質負担を左右する
葬儀の費用を考えるうえで、香典の有無やその扱い方は、最終的な自己負担額に大きく影響します。単に総額を比較するのではなく、香典を受け取るかどうか、返礼品をどうするかなどの運営方針を含めて費用を見積もることが大切です。
一般葬では参列者が多く、香典収入が多く見込まれるため、表面的な支出が多くても、その一部を相殺できる可能性があります。一方、家族葬では香典を辞退するケースもあり、費用の大部分を遺族がそのまま負担することになります。ただし、家族葬でも香典を受け取り、返礼品や礼状を省略すれば、実質の出費が軽減されることもあります。
たとえば、一般葬では香典収入が100万円以上になる例も珍しくありません。そのぶん返礼品や香典返しの対応費がかかりますが、収支としては自己負担が抑えられる傾向にあります。家族葬の場合、参列人数が少なく香典があっても収入は限られるため、香典の扱い方次第で収支バランスは大きく変わります。
重要なのは、葬儀形式によって費用が一律に決まるわけではないという点です。「香典を受け取るか」「返礼品はどうするか」「通夜を行うか」など、運営の方針を明確にすることで、想定外の出費や準備負担を避けやすくなります。形式ではなく対応内容を基準に費用を整理することが、結果的に納得のいく判断につながります。
迷ったときは形式にとらわれず“納得できる送り方”を選ぶべき
葬儀の形式に迷ったときは、家族葬か一般葬かという枠組みにこだわるよりも、自分たちにとって納得できる送り方を選ぶことが最も重要です。形式にはそれぞれ特徴があるものの、参列者の範囲や香典の有無、宗教儀礼の取り入れ方などは柔軟に調整できます。標準的な形式に沿って葬儀を進めることは可能ですが、それが必ずしも故人や遺族にとって最適とは限りません。形式を起点に考えるのではなく、「誰に、どのように、どんな場を設けたいか」を出発点に内容を組み立てることが求められます。
たとえば、家族葬のように小規模な葬儀でありながら、ごく親しい友人のみを招くケースもあります。また、一般葬として行う場合でも、香典を辞退したり通夜を省略するなど、形式を調整することは可能です。多くの葬儀社では柔軟な対応が取られており、「形式を守るための設計」より「希望を実現するための設計」が重視される傾向にあります。葬儀後の後悔の背景には、形式を優先しすぎて本来望んでいた内容が実現できなかった、という声も少なくありません。
葬儀は一度きりの場であり、あとからやり直すことはできません。形式に合わせること自体が目的になってしまうと、結果として気持ちに折り合いがつかなくなる可能性があります。大切なのは、形式をツールのひとつと捉え、希望や事情に合った内容を主体的に組み立てる視点です。それが、最終的に納得感のある送り方につながり、故人や家族にとって意味のある時間となるはずです。
家族葬とお別れ会を組み合わせる柔軟な選択肢
家族葬と一般葬のいずれかに決めきれないときには、両者の要素を組み合わせるという柔軟な考え方も視野に入れておきたいところです。
たとえば、家族だけで静かに見送ったあと、日を改めて親しい友人や職場関係者などを招くお別れ会を開くといった形式は、無理なく配慮を行う一つの方法といえます。形式を一つに絞る必要はなく、故人との関係性や地域性、家族の事情に応じて、複数の場面を設計することが可能です。
最近では、こうした「家族葬と別途のお別れの場を組み合わせる形」が都市部を中心に広がっています。葬儀当日の時間的・精神的な負担を軽減しながら、必要な人との別れを丁寧に設けることができる点が評価されています。また、宗教色を抑えた自由な会の形式や、会社・地域単位で行う偲ぶ場も増えており、儀礼に縛られない送り方が定着しつつあります。
大切なのは、葬儀を「ひとつの形式に押し込めるもの」と考えるのではなく、自分たちに必要な関係者や場面を丁寧に選び取っていく姿勢です。迷ったときこそ、型ではなく内容に目を向け、必要に応じて複数の方法を組み合わせるという視点が、納得感のある送り方につながっていきます。
葬儀社や家族との事前相談が後悔を防ぐ
家族葬か一般葬かを判断するうえでは、事前に家族や葬儀社と話し合い、方針を共有しておくことが後悔のない選択につながります。
葬儀は急な判断が求められる場面が多く、準備が不十分なまま形式を決めてしまうと、「本当はこうしたかった」「あの人も呼べばよかった」と感じることになりかねません。特に参列者の範囲や香典の扱いなどは、家族間でも意見が分かれやすいため、事前にすり合わせておくことが重要です。
葬儀社との事前相談では、希望に合った柔軟な形式がとれるか、参列者対応や費用負担のバランスがどうなるかなどを具体的に確認できます。また、本人の希望が明らかでない場合でも、家族の意向や事情をもとに対応案を設計してもらうことが可能です。短い準備期間でも落ち着いて進められるよう、早い段階での相談が勧められています。
形式やしきたりにとらわれず、関係者の気持ちと現実的な条件を踏まえて計画を立てることが、結果的に「これでよかった」と思える別れにつながります。迷いや不安がある場合こそ、第三者の専門的な視点を取り入れ、事前の話し合いを通じて後悔の少ない判断を目指すことが現実的なアプローチです。
よくある質問
- 家族葬と一般葬の違いは何ですか?
- 主な違いは、参列者の範囲です。 家族葬は親族など近しい人のみで行う小規模な葬儀で、一般葬は友人・知人・職場関係者など広く参列者を招く形式です。 ただし実際には、家族葬でも友人を数名招いたり、一般葬でも規模を絞るケースがあるなど、明確な境界はありません。
- 数人の友人を呼ぶ場合は家族葬になりますか?
- 般的には、親族以外を少数だけ招く場合でも家族葬に分類されることが多いです。 「誰を呼ぶか」よりも「全体の構成・運営方針」によって形式が決まります。気になる場合は葬儀社に確認するのが確実です。
- 家族葬と一般葬、どちらのほうが費用が安いですか?
- . 傾向としては家族葬のほうが費用を抑えやすいですが、内容によって変動します。 一般葬は費用が高くなりがちですが、香典収入などによって実質的な負担が軽減されることもあります。 最終的な負担額は、香典や返礼品の対応方針によっても大きく左右されます。
- 家族葬にしたいけれど、あとからお別れ会を開くのは可能ですか?
- 可能です。実際に「家族葬+後日のお別れ会」という形を取る方も増えています。 参列者への配慮や日程調整、精神的負担の軽減にもつながるため、柔軟な送り方として定着しつつあります。
- 家族と意見が分かれている場合、どう決めたらよいですか?
- 遺族間で意見が異なる場合は、葬儀社に相談しながら希望や条件を整理するのが有効です。 形式よりも「誰に、どう送ってもらいたいか」を軸に話し合うと、納得のいく方向性を見つけやすくなります。

この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版