準備したほうがいい?終活における遺言書を解説

ご葬儀お役立ち情報

遺言書とは、自分の意思を法的に効力のあるかたちで残すものです。自分の死後、家族が相続の手続きを進める際、身内同士の争いを防ぐことに役立ちます。 終活を始めたけれど、自分に遺言書が必要かどうか分からない。エンディングノートに書いた遺言と遺言書の違いを知りたい。文章を書くことが苦手なので、誰かに遺言書を代筆してもらうことはできないかなど、日常的に接することが稀なものだけに、その役割や必要性について理解していない人も少なくありません。 遺言書は、正しい方式で書かれたものであれば、何十年経っても効力を失いません。紙とペンと印鑑さえあれば自筆で作れるものから、専門家に作成から保管まで依頼できるものも選べます。大切な家族が相続で争わないために、遺言書の基礎知識と書き方のポイントを解説します。

遺言書は準備しておくことで相続の問題を起こりにくくできる

遺言書とは自分の死後、財産を誰にどのように残したいか、自分(被相続人)の意思や想いを相続人に伝える法的効力のある手段です。

遺言書は、家族が遺産分割で争いになるのを避けたい。再婚や内縁関係、子どもがいないなど家族関係が複雑な場合。相続人以外の特定の第三者に財産を残したいといった要素がある人は、準備の必要性が高くなる傾向にあります。

遺言書には葬儀や供養の希望、家族へのメッセージなども自由に記載できますが、法的に効力が認められている事項としては、相続人の廃除または廃除の取消し、子どもの認知、遺産の分割方法の指定、相続分の指定または指定の委託、遺産分割の禁止、遺言執行者の指定、後見人や後見監督人の指定、遺贈や寄付など遺産の処分があげられます。

被相続人が遺言書を残していない場合や、あったとしても遺族が遺言書を見つけられなかったときは、民法に定められた法定相続分に従って遺産分割が行われます。終活における相続の全体像について気になる方は、終活における相続のポイントを解説も併せて確認してください。

遺言書の効力に期限はない

遺言書に有効期限はありません。民法の規定に則った方式で作られた遺言書であれば、何十年前のものであっても効力を失いません。

遺言書が無効とみなされるケースとしては、作成日・署名・捺印が無いなど書き方の規定に不備がある場合。遺言者が重度の認知症を発症しているなど遺言能力のない状態で作られた場合。相続人や財産の分配方法が不明瞭な場合などです。

遺言書は原則として、遺言者が死亡した時から効力を生じます。遺言者が亡くなる前に効力が発生することはありません。したがって遺言者が生きている間は、何度でも書き直せます。民法では後から作成された(日付の新しい)遺言書が有効となります。

エンディングノートに法的効力はない

エンディングノートに法的な効力はなく、遺言書の代わりにはなりません。

エンディングノートは、終活の一環として自分の情報や希望を整理し、家族に残しておくものです。本人の意思や相続についての考え、財産目録などを書き残しておくことで、残された家族の負担を軽減できますが、自分の財産を誰にどれだけ分けるかを記載しても、家族や相続人が故人の気持ちを考慮する助けになるにとどまり、あくまで「お願い」や「意向」の域を出ません。エンディングノートの作り方について気になる方は、終活におけるエンディングノートとは?作るときのポイントを解説も併せて確認してください。

ただし、全文を自筆で書く、日付を自筆で記載する、氏名を自筆で署名する、押印するという自筆証書遺言の要件をすべて満たしてしまった場合には、その記載部分が自筆証書遺言として扱われる可能性がある点には注意が必要です。これは意図的に狙って使う方法ではなく、結果的に要件を満たしてしまうことがあるという注意点として押さえておくとよいでしょう。

法的に有効なかたちで自分の意思を残し、遺言を確実に実行したい場合は、エンディングノートとは別に遺言書を作成しておく必要があります。

遺言書には3つの種類がある

通常、遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つが多く用いられます。

自筆証書遺言は、遺言者本人が全文を自筆で書く遺言書です。紙とペンと印鑑さえあれば、ほとんど費用をかけずにいつでも作成できます。ただし内容に不備があると無効になることもあります。また、死亡後は家庭裁判所の検認手続きに費用がかかります。自筆証書遺言は、遺言者本人が自宅など任意の場所で保管するため、紛失・隠匿・改ざん・偽造・開封の手続きミスなどのリスクをともないます。紛失・改ざんなどのリスクを防ぐために、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することで、地域の法務局に有料で保管してもらえます。家庭裁判所の検認手続きも不要になるので、開封時の手続きミスも減らせます。

公正証書遺言は、公証人役場において証人2名の立ち会いのもと、遺言者が口述した内容を公証人が筆記して作成する遺言書です。公証人の手数料と作成に手間がかかりますが、遺言書の原本は公証人役場で保管されるので、紛失・隠匿・改ざん・偽造が防げます。家庭裁判所の検認手続きも必要ないので、開封時の手続きミスも減らせます。公証人が遺言書を作成するため、内容に不備のない遺言書を残せるのがポイントです。

秘密証書遺言は、遺言の内容を他人に知られず保管できる秘匿性の高い遺言書です。遺言者または代理人が書いた遺言書を封筒などに封じて割印し、公証人と証人2名が署名・捺印します。ただし法律の専門家が内容を確認していない場合、遺言書に不備があると無効になる可能性があります。

3種類の遺言書からどれを選ぶかは重視するポイントで判断する

自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成者 本人 公証人 本人(代筆可)
作成場所 どこでも 公証人役場 どこでも
証人・立会人 不要 公証人1名、証人2名 公証人1名、証人2名
署名・捺印 本人 本人、公証人、証人 本人、公証人、証人
費用 作成に費用がかからない/家庭裁判所の検認費用 公証人の手数料 公証人の手数料/家庭裁判所の検認費用
確実性 内容の不備で無効になったり、改ざん・隠匿のリスクがある 公証人が作成・保管するので確実性が高い 存在は証明されるが、内容の不備で無効になることがある
秘匿性 本人だけが内容と存在を把握。遺言書が見つからないリスクがある 公証人と証人が内容と存在を把握 秘匿性が高い。内容を人に知られず存在を証明できる

遺言書は、書面で書かれていることが必須条件です。動画や録音したものは、本人の意思が確認できても遺言として認められていません。

せっかく遺言書を残しても内容の不備、所在不明、開封時のミスなどによって無効になる可能性があります。遺言書の効力が発生するとき、遺言者本人はすでに亡くなっているので改訂することはできません。

遺言書は財産を把握することから始める

遺言書を書くにあたって、自分の財産と負債を洗い出すことが大切です。

遺言書を作成する目的の一つは、遺産の相続に関して遺言者の意思を残すことにあります。まず、自分のすべての財産と負債を整理し、財産目録を作ることから始めるとよいでしょう。

種類 具体例 確認方法
預貯金 普通預金、定期預金 通帳、キャッシュカード、金融機関のハガキ・封筒、金融機関へ問い合わせる
不動産 土地、建物、農地、山林、投資用物件 登記済権利証(登記識別情報)、固定資産税の納税通知書、登記事項証明書
有価証券 株式、投資信託、国債 証券会社からの取引残高報告書、証券会社のハガキ・封筒
保険 生命保険、医療保険 保険証券、保険会社のハガキ・封筒、保険会社へ問い合わせる
産業財産権 知的財産権、特許権、商標権、著作権 特許証、商標登録証、著作権については著作物を創作した時点で自動的に発生
貴重品 貴金属、宝飾品、骨董品、美術品、自動車、希少品 価値や真贋の判定は、骨董店、買取専門店、鑑定士に相談する
負債・債務 借入金、ローン、クレジットカードの未払い金、損害賠償、保証債務、業務上の買掛金 契約書、金融機関からの返済予定表、金融機関のハガキ・封筒、連帯保証書、保証委託契約書、金融機関に問い合わせる

財産目録の作成は義務ではありませんが、遺言書に添付しておくことで相続がスムーズに進みます。相続人が相続放棄を検討したり、プラスの財産の範囲内で負債を返済する限定承認をする際も役立ちます。

財産と負債の洗い出しを終えたら、民法の定める法定相続人を把握して、各相続人が受け取る相続分の検討に移ります。

遺言書の保管方法は慎重に決める

遺言書の効力が発生するのは、遺言者の死亡後です。遺言書の種類によらず、保管場所を家族などに伝えておかないと、遺言の存在が遺族に認知されないことになります。

自筆証書遺言は、遺言者本人が自宅など任意の場所で保管するため、紛失・隠匿・改ざん・偽造・開封時に手続きミスなどが起こる可能性があります。紛失・改ざんなどのリスクを回避する手段として、法務局に遺言書を保管してもらう「自筆証書遺言書保管制度」があります。遺言者本人が法務局に出向く手間と手数料はかかりますが、家庭裁判所の検認手続が不要になるため、開封時の手続きミスも防げます。

秘密証書遺言は、遺言の内容を他人に知られず保管できる秘匿性の高い遺言書です。公証人の前で手続きを行うため、改ざん・偽造を防止できます。ただし遺言者本人が自宅など任意の場所で保管するため、遺言書の存在を家族に伝えておかないと、発見されない可能性があります。また、開封時の手続きミスなどが起こるリスクもあります。秘密証書遺言は、自筆証書遺言のように法務局で保管してもらえる制度はありません。

公正証書遺言は、原本が公証人役場で保管されているため、紛失・隠匿・改ざん・偽造・開封時の手続きミスなどを防げます。ただし遺言書の存在を家族に伝えておく必要があります。公証人役場は、遺言者の死亡を確認する手段がないため、遺族へ遺言書の存在を連絡できません。

遺言書は専門家と作成すると安心できる

自分だけで判断が難しい部分については、弁護士、司法書士、行政書士、税理士など士業の専門家や、地域の公証人役場、葬儀社の無料窓口などを頼る方法があります。終活全体の相談先について気になる方は、終活の相談先は?相談窓口と相談内容を解説も併せて確認してください。

遺言書は、種類によって作成方法や保管方法、開封の方法などが厳密に定められており、要件を満たしていないと無効になる可能性があります。また、遺言書で本人の意思を伝えて確実に実行するためには、相続人の指定、遺産の分割方法、遺留分の理解、祭祀継承者の指定、寄付や遺贈など、知っておくべきことも多岐にわたります。

市区町村によっては、士業の専門家が相談にのってくれる窓口を設けていることもあるため、お住まいの市区町村の役場に確認しておくとよいでしょう。

終活において遺言書は必須ではないものの、遺言書を準備しておくことで、残された家族が相続の問題を回避することにつながります。また、配偶者や子どもに自分の意思を文章として残せます。

よくある質問

遺言書を作ったほうがいいですか
遺言書は終活の必須ではありませんが、法定相続分と異なる遺産分割をしたい人は、遺言書の必要性が高くなります。家族が相続トラブルになることを避けたい。再婚や内縁関係、子どもがいないなど家族関係が複雑である。遺贈や寄付などを希望する場合など、遺言書の作成を検討してみるのもよいでしょう。
遺言書の効力に期限はありますか
期限はありません。民法の規定に則った方式で作られた遺言書であれば、何十年前のものであっても効力を失いません。遺言書は原則として、遺言者が死亡した時から効力を生じます。したがって遺言者が生きている間は、何度でも遺言書を書き直せます。民法では後から作成された(日付の新しい)遺言書が有効となります。
エンディングノートに書かれた遺言も効力がありますか
エンディングノートに法的効力はなく、遺言書の代わりにはなりません。財産の分け方を書いても、家族や相続人が故人の気持ちを考慮する助けにはなりますが、あくまで「お願い」や「意向」の域にとどまります。ただし、全文自筆、日付、氏名や押印など自筆証書遺言の要件をすべて満たしてしまった場合は、その部分が自筆証書遺言として扱われる可能性がある点には注意が必要です。法的に有効なかたちで遺言を残し、確実に実行したい場合は、エンディングノートとは別に遺言書を作成しておく必要があります。
遺言書にはどんな種類がありますか
遺言書には、いくつかの種類がありますが、主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つが用いられます。作成の手間や費用、保管方法、秘匿性、有効性などに特徴があります。それぞれの遺言書のメリットとデメリットを知り、自分と家族の状況に合った遺言書を選ぶことが大切です。
遺言書は何から準備を始めればいいですか
決まりはありませんが、財産と負債を洗いだして財産目録を作ることから始めると、比較的スムーズに準備を進めることができます。また、遺言書を自分で保管するか、公証人や法務局で保管してもらうかなど、保管方法について考えることから始めるのもよいでしょう。

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中川 貴之