家族葬とは?葬儀における参列者の範囲を解説|呼ぶ人・呼ばない人の考え方も紹介
家族葬とは、一般的にごく近しい親族や関係者のみで行う小規模な葬儀形式です。
参列者を限定することで落ち着いた雰囲気の中で見送れる点が特徴ですが、「どこまでの人を呼ぶべきか」「親戚や会社関係に知らせるべきか」など、判断に迷いやすい点も多くあります。
特に喪主や遺族として家族葬を考えている場合、参列者の範囲をどう決めるかは、場所や費用、流れと並んで最初に整理しておくべき重要な要素です。
また、参列する立場からも「香典や弔電を送るべきか」「呼ばれなかった場合にどう対応すればよいか」といった疑問が生じやすくなっています。
この記事では、「家族葬とは何か?」という基本から始めて、参列者の範囲の考え方、香典や弔電の対応、場所や費用との関係までを整理し、喪主・参列者双方の視点に立って、事前に知っておきたい判断軸を解説します

家族葬とは?基本の意味と一般葬との違い
家族葬について調べ始めるとき、多くの人がまず直面するのが「そもそも家族葬とはどういう葬儀なのか」という定義のあいまいさです。
言葉としては広く浸透しているものの、参列者の範囲や実施内容には明確な基準がなく、葬儀社によっても扱い方が異なります。 そのため、漠然とした印象だけで進めようとすると、後から「こんなはずではなかった」と感じるリスクがあります。
そこでまずは、家族葬の基本的な意味と、従来の一般葬と比べてどこが違うのかを明確にすることが重要です。 形式の違いを正しく理解しておくことで、今後「誰を呼ぶか」「どう伝えるか」「どこで行うか」といった判断にもブレが生じにくくなります。
この章では、判断の出発点としての「家族葬とは何か」を明確にし、一般葬との主な違いについても整理します。
家族葬とは|近親者のみで行う小規模な葬儀
家族葬とは、家族や親族など、故人と近しい関係にある人のみで行う小規模な葬儀形式です。
参列者の範囲を限定することで、儀礼的な対応や外部への配慮が抑えられ、落ち着いた雰囲気の中で故人との時間を過ごせる点が特徴とされています。 大人数を招く必要がないため、準備の負担や精神的な緊張も軽減しやすくなります。
なお、「家族葬」という言葉には明確な定義があるわけではありません。 地域や葬儀社によって扱いは異なりますが、おおむね10~30人ほどの小規模な葬儀を指し、香典・弔電・会食の有無も喪主や遺族の判断に任されるのが一般的です。 宗教儀礼の簡略化や省略も多く見られます。
このように家族葬は、葬儀の形式や規模ではなく、「誰とどう見送るか」を重視する考え方に基づくものです。 そのため、形式を整えるよりも、故人との関係性を大切にしたいと考える遺族にとって選びやすい選択肢といえます。
一般葬との違い|参列者・費用・準備の負担
家族葬は、一般葬と比べて参列者の範囲が限定されるため、準備や費用の面で負担が抑えやすい傾向があります。
大規模な案内や受付対応が不要となるため、遺族の身体的・精神的な負担を軽減しやすく、結果的にコンパクトな運営が可能になります。
ただし、すべての家族葬が「簡単で安い」とは限らず、規模や希望内容によっては一般葬と変わらない準備が必要になることもあります。
以下に、家族葬と一般葬の主な違いを項目別に整理しました。
比較項目 | 家族葬 | 一般葬 |
---|---|---|
参列者の範囲 | 家族・親族・ごく近しい知人に限定 | 親族、会社関係、地域・友人など広範 |
費用 | 全体的に抑えやすいが単価が高くなることも | 返礼品や会食費などで総額が高くなりやすい |
準備の負担 | 受付・案内が簡略化できる | 参列者対応・式典準備に時間と人手が必要 |
香典・弔電 | 辞退の判断も可能 | 原則受け取る前提が多い |
告知方法 | 個別連絡が中心 | 新聞・回覧など広報もあり得る |
このように、家族葬は柔軟な対応が可能な反面、すべてが簡略化されるわけではありません。
費用・手間・気遣いのバランスをどう考えるかは、故人の遺志や家族の事情によって大きく異なります。
形式だけで選ぶのではなく、自分たちにとって最も無理のないかたちを見極めることが大切です。
家族葬が選ばれる背景|価値観の多様化・高齢化・経済的理由
家族葬が選ばれる背景には、価値観の多様化、高齢化社会の進行、そして経済的な事情が複合的に関係しています。
近年では、従来のように「大勢で見送ることが当然」とする価値観よりも、「身近な人だけで落ち着いて見送りたい」といった意向を重視する傾向が強まっています。
葬儀のあり方そのものが、個人や遺族の事情に応じて選ばれる時代に変わりつつあるといえます。
2023年の民間調査では、全国で行われた葬儀のうち家族葬が50.0%を占め、一般葬の30.1%を大きく上回る結果が出ています。
この傾向は都市部でより顕著とされており、地域や近隣との関係性が薄れつつある現代において、大規模な告知や広範囲な参列者対応が現実的でないことが背景にあります。
また、都市部では葬儀式場や人件費の相場が高く、費用を抑える目的で小規模な家族葬が選ばれるケースも少なくありません。
さらに、高齢化の影響として、亡くなる時点で交友関係が限られるだけでなく、参列者となる親族自身も高齢で遠方移動が難しく、参列を辞退するケースが増えていることも、結果として葬儀を小規模化させる一因となっています。
このように、家族葬の普及は単なる流行ではなく、社会構造や生活環境の変化に即した自然な流れといえます。
形式にとらわれるよりも、故人や遺族が無理なく納得して選べる見送り方を優先する意識が、広く社会に浸透してきていると考えられます。
【喪主向け】家族葬で誰を呼ぶか決めるときに考えるべきこと
家族葬に誰を呼ぶかの線引きには明確な決まりはなく、親族に限らず、親しい友人や知人などを呼んでも差し支えありません。
「家族葬=親族のみ」と誤解されることもありますが、実際には、故人や遺族が静かに見送りたいと思う人を範囲に含めることが一般的です。 参列者を制限する目的は「簡略化と負担軽減」であり、関係の深さを無視するものではありません。
ただし、誰を呼び、誰を呼ばないかの判断には、今後の関係性や気遣いも関わるため、親戚・会社関係・友人など立場ごとに検討する必要があります。
この章では、家族葬における参列範囲の考え方と線引きの実情、配慮の仕方について、立場別に整理して解説します。
どこまで呼ぶのか|参列者の範囲と考え方
家族葬における参列者の範囲には明確な決まりはなく、故人との関係性や遺族の事情をふまえて、誰を呼ぶかを家族で判断するのが一般的です。
親族を中心に招くケースが多いものの、必ずしも血縁関係に限定されるわけではありません。たとえば、生前に親しくしていた友人や近隣の恩人など、故人にとって大切な人物であれば、招くことに問題はありません。
反対に、形式的に親族だからといって、必ず招く必要があるわけでもありません。関係が疎遠だったり、かえって気遣いや負担が大きくなると判断される場合は、招かない選択をする家庭も少なくありません。
そもそも家族葬には法律的な定義や制度上の基準がなく、葬儀社によっても「誰まで呼ぶか」は柔軟に対応されています。実際の現場では、人数や対応の負担、今後の関係性などを総合的に考慮して、参列者の範囲を決めている事例が多く見られます。
ただし、呼ばなかった人との関係性によっては、後日トラブルや誤解が生じる可能性もあるため、参列を辞退してもらう際の伝え方や配慮も重要になります。
家族葬の本質は、「形式にとらわれない、納得できる見送り方」にあります。誰を呼ぶかを決める際は、「誰までなら失礼でないか」ではなく、「誰に来てもらいたいか」という視点で考えることが、無理のない判断につながります。
親戚を呼ばない場合の注意点と判断基準
家族葬で親戚を呼ばないことは可能ですが、その判断には相手との関係性や伝え方への十分な配慮が必要です。
家族葬は参列者を絞ることを前提とした形式であり、すべての親族に声をかける必要はありません。 関係が疎遠だったり、遺族として当日の対応負担を抑えたい場合など、家庭によっては招かないという判断に至ることもあります。
ただし、親戚の中には「知らせてほしかった」と感じる人もおり、連絡がなかったことに対して不満を抱くケースも見られます。 特に地方に住む高齢の親族などは、家族葬への理解が十分でないことも多く、誤解を生む可能性があります。
そのため、呼ばないと決めた場合でも、「故人や家族の意向により、親しい方のみで見送ることにした」といった形で、あらかじめ事情を丁寧に伝えておくことが望ましい対応とされます。
また、香典や弔電を辞退する場合は、その旨も含めて事前に伝えておくと、後々の気遣いや行き違いを避けることができます。
親戚を呼ぶかどうかの判断は、「故人との関係」「遺族の考え方」「相手の受け取り方」をふまえたうえで、無理のない範囲で決めることが大切です。 具体的な配慮の仕方や伝え方は、こちらの解説ページでも紹介しています。
会社・友人・近隣への対応をどうするか
会社・友人・近隣住民に対しては、それぞれの関係性や必要性に応じて、参列の可否や連絡の範囲を丁寧に調整することが大切です。
まず会社については、故人が現役で勤務していた場合、社内での弔問や供花の希望が寄せられることがあります。 このような場合、家族葬では対応しきれず、かえって個別対応の負担が増すおそれがあるため、最初から一般葬の形式を検討する方が円滑なこともあります。
一方、故人が退職後であったり、遺族側が勤務している会社であれば、業務上必要な報告にとどめ、「家族葬のため親族のみで執り行う予定です」といった形で参列辞退の意向を添えるのが一般的です。慶弔休暇などの取得手続きがあるため、最低限の報告は欠かせません。
友人については、親しかった人には訃報だけでも伝えておくと、後日のすれ違いや誤解を避けやすくなります。 参列を辞退する場合でも、「家族葬のため、ご参列はご遠慮いただいております」と伝えることで、感謝と配慮の気持ちが伝わります。
なお、家族葬であっても、故人と特に親しかった友人や近隣の方を限定的にお招きすることもあります。 「家族葬=親族のみ」と決めつけず、関係の深さに応じて柔軟に判断することが大切です。
近隣住民への連絡は、地域性や日頃の関係性によって判断が分かれます。 日常的な付き合いがあった場合は、何らかの形で訃報やお礼を伝えることが望ましいですが、特別な交流がなければ、葬儀の案内や報告を行わなくても差し支えないとされています。
誰に、どのように伝えるかを決める際は、形式にとらわれすぎず、遺族の負担や今後の関係性もふまえて、伝える相手を絞ることが結果として自然な対応になります。
香典は辞退する?受け取る?判断の分かれ目
家族葬でも香典を受け取る人が多数派ではあるものの、香典を辞退する選択肢も年々増加しています。 遺族の意向や対応の手間、参列者との関係性をふまえて、柔軟に判断することが求められます。
民間の意識調査では、約8割の人が香典を「受け取る」と回答しています。最も多かった理由は「葬儀費用の補填に充てたいから」(52.1%)で、実際に葬儀にかかる費用を自己負担だけでまかなうのが難しいという事情が背景にあります。
一方で、香典を辞退する理由としては「香典返しが大変だから」(33.3%)が最多で、「参列者に負担をかけたくない」(25.8%)という声も多く見られました。 香典返しには挨拶や手配の手間が伴い、特に小規模で簡素な葬儀を望む場合には負担となることがあります。 また、香典の受け取りを辞退することで、相手に金銭的・精神的な配慮を示す意図も含まれています。
このような傾向を反映して、同調査では「香典を受け取らないくらいなら、小規模な葬儀の方が望ましい」と考える人が95.7%に上る結果も示されています。 香典辞退の判断は、小規模な家族葬と密接に関係しており、葬儀のあり方そのものを見直す流れの中にあるといえます。
辞退する場合は、訃報や案内状に「香典のご厚意はご辞退申し上げます」などと明記し、参列者に誤解のないよう丁寧に伝えることが必要です。 あわせて、弔電や供物も辞退する場合は、その旨も明示するようにしましょう。
なお、香典辞退に関連する注意点や文例については、以下のページでも詳しく解説しています。
香典の有無に正解はありません。
遺族の負担、参列者との関係、地域や慣習をふまえて、それぞれの状況に合った選択をすることが大切です。
弔電を辞退する場合の伝え方
家族葬で弔電を辞退する場合は、香典と同様に、訃報や案内状で明確にその旨を伝えることが大切です。あらかじめ意思表示をしておくことで、送る側に余計な気遣いや手配の手間をかけずに済みます。
香典や供花とあわせて弔電も辞退する家庭は増えており、特に「最小限の形式で葬儀を行いたい」「遺族の対応負担を軽くしたい」といった意向がある場合に選ばれています。弔電を受け取ると、当日の紹介や後日の返礼をどうするかなど、新たな対応が必要になるため、遺族側の配慮として辞退を選ぶこともあります。
伝える際には「お気持ちだけありがたく頂戴いたします」といった一文を添えることで、丁寧な印象を保ちつつ意図を明確にできます。これは形式を控える家族葬の趣旨と、弔意を受け止める心を両立させる表現です。
たとえば案内状では「誠に勝手ながら、香典・供花・弔電の儀はご辞退申し上げます」などと一文でまとめて表記するのが一般的です。
弔電の辞退に関しては、より具体的な表現例や注意点を以下のページで詳しく紹介しています。
辞退の伝え方一つで、参列者との関係に影響することもあるため、感謝の気持ちを伝えつつ、過不足なく意図を伝える文面の工夫が重要です。
家族葬の費用相場と内訳を確認しておこう

家族葬の費用は平均約105.7万円とされていますが、実際の金額は葬儀の内容や地域、参列人数によって大きく異なります。
この平均値はあくまで参考値に過ぎず、個別の事情に応じた柔軟な見積もりが必要です。
費用には葬儀一式費用のほか、飲食や返礼品、宗教者へのお布施などが含まれ、さらにオプションや地域の慣習によっても変動します。
そのため、葬儀の全体像を理解するには、内訳ごとの費用構成や変動要因を把握することが不可欠です。
この章では、平均相場の根拠とともに、人数・地域・内容別の費用レンジや各費目の特徴について整理しながら、費用面の注意点も明らかにしていきます。
家族葬の平均費用はいくらか
家族葬の平均費用は全国で約105.7万円とされており、目安としては100万円前後が一つの基準となります。
ただし、実際の費用は60万円から200万円程度と大きな幅があり、葬儀の内容や地域、参列者数などによって大きく異なります。
この金額には、葬儀一式費用のほか、料理や返礼品などの接待費用が含まれています。
たとえば、通夜・告別式を省略した簡素な形式であれば比較的費用は抑えられる一方、宗教儀礼を重視した場合や親族以外の参列者にも対応する場合は、費用が高額になる傾向があります。
2023年に行われた民間調査では、「葬儀一式費用」が平均72.0万円、「飲食接待費」が17.1万円、「返礼品費」が16.5万円とされており、これらが費用全体の大部分を占めています。
また、都市部では式場使用料などの固定費が高くなりやすく、地域ごとに平均費用に差が生じる要因となっています。
このように、家族葬の費用には明確な上限・下限があるわけではなく、内容次第で大きく変動するのが実情です。
そのため、平均値を参考にしつつも、希望する葬儀の内容に応じて見積もりを取得し、実際の負担額を確認することが重要です。
より詳しい費用構成や事例については、家族葬の費用相場と実例も参照ください。
内訳:式場・火葬・会食・返礼品など
家族葬の費用は、大きく分けて5つの基本項目から成り立っており、それぞれの金額と性質を知ることで、見積もりの正当性や調整可能な部分を見極めることができます。
とくに費用全体に大きな影響を与えるのは、葬儀一式費用(式場・棺・祭壇など)と、参列者の人数に比例して増減する飲食接待費・返礼品費です。以下に主な内訳項目とおおよその費用相場をまとめます。
費目 | 内容例 | 相場の目安 |
---|---|---|
葬儀一式費用 | 式場使用料、棺、祭壇、霊柩車など | 50万〜80万円 |
火葬費用 | 火葬場の使用料(公営/民営) | 無料〜5万円前後 |
飲食接待費 | 通夜振る舞い、精進落としの食事代 | 1人あたり3,000〜5,000円 |
返礼品費 | 会葬礼品、香典返しなど | 1個あたり1,000〜2,000円 |
宗教者へのお布施 | 読経、戒名、法要などの謝礼 | 10万〜30万円 |
このほか、以下のような費用がオプションで発生することもあります。
- 遺体安置費(自宅以外の場合):1日5,000円〜1万円
- 車両費(搬送車・送迎バスなど):1万〜3万円
- メモリアル映像・遺影写真加工など:5,000円〜2万円
これらの内訳を踏まえると、葬儀の費用感は「何が含まれていて、何を追加するのか」によって大きく変動します。見積もり時には、費目ごとの必要性と優先度を冷静に検討し、価格と内容のバランスを取ることが納得できる家族葬につながります。
一般葬との費用比較|安くなる点・かえって高くなる点
家族葬は一般葬と比べて費用を抑えられる傾向がありますが、すべての項目で安価になるとは限りません。構成や状況によっては、かえって家族葬の方が高額になる場合もあります。
たとえば、参列人数が少ない分、飲食接待費や返礼品費用は抑えられますが、式場費やお布施といった固定費は葬儀規模にかかわらず一定の支出が発生します。また、香典を辞退する家族葬では実費を家族が全額負担することが多く、一般葬に比べて収支面で不利になる可能性があります。
このように、費用の差は「実際の支出額」だけでなく「費用構造」や「香典収入の有無」にも関わるため、形式を選ぶ際には総合的な判断が求められます。
項目 | 家族葬 | 一般葬 |
---|---|---|
葬儀一式費用 | 中〜やや低水準 | 高め(式場規模が大きい) |
飲食接待費 | 少人数のため抑えやすい | 参列者が多く高額になりやすい |
返礼品費 | 必要数が少なくなる傾向 | 一般的に数が多くなる |
お布施など宗教費用 | 内容により差異なし | 同様(形式によって差はある) |
香典収入 | 辞退することも多く収入なし | 多く受け取ることが想定される |
それぞれの費用項目においては、以下のような視点が判断材料となります。
- 少人数で行う分、接待や返礼品費用は家族葬の方が軽くなる
- 式場費やお布施などの固定費は人数に関係なく発生する
- 香典を辞退する場合、実費の全額を家族が負担する可能性がある
- 葬儀内容や装飾の選択次第では、家族葬でも高額になるケースがある
単なる費用総額だけでなく、費用の内訳と補填構造の違いに着目することで、自身の希望と条件に合った形式を見極めやすくなります。
注意点:人数が少なくても単価が高くなるケース
人数を絞っても、必ずしも費用全体が安くなるとは限りません。
特に家族葬では、参列者が少なくても式場使用料や祭壇、棺、霊柩車などの「固定費」が変わらず発生するため、結果として1人あたりの負担が大きくなることがあります。費用の大部分が人数に連動しない項目で構成されていることがその要因です。
このため、10名規模と30名規模で基本費用に大きな差が出ないケースもあり、「小規模=低コスト」と単純に考えると期待とのギャップが生じます。家族葬だから費用が抑えられるとは限らないという点は、事前に理解しておく必要があります。
費用を最適化するには、人数ではなく費用構成の中身に着目し、固定費・変動費のバランスやオプションの要否を丁寧に確認することが重要です。
家族葬の場所はどこが適している?選択肢と特徴を整理

家族葬を行う場所としては、斎場・自宅・寺院など複数の選択肢があり、それぞれに特徴と適性があります。
葬儀の形式や参列人数、アクセス、予算、宗教的背景などによって、適した会場は異なります。 事前に各選択肢の特徴とメリット・留意点を把握しておくことで、希望に沿った形で故人を見送ることが可能になります。
特に家族葬は自由度が高いため、施設の機能性だけでなく、家族が納得できる空間かどうかが会場選びの判断軸となります。場所選びの視点を整理しておくことは、後悔のない葬儀の第一歩です。
本章では、主な選択肢ごとの特徴と利用のポイントを整理しながら、それぞれの事情に合った判断のヒントを示していきます。
自宅で行う家族葬|メリットと注意点
自宅で行う家族葬は、故人との最後の時間を落ち着いた環境で過ごせる点が大きな利点です。
住み慣れた自宅という空間は、精神的に落ち着いて見送りができる場として機能しやすく、形式に縛られず柔軟に進行できる点が特徴です。参列者が限定される家族葬であれば、比較的狭いスペースでも対応可能なケースが多く、家庭の事情に合わせた自由な設計が可能です。
一方で、会場設備が整った式場とは異なり、祭壇や備品の搬入、遺体の安置環境の確保、近隣への配慮など、家族側が担う準備が多くなります。また、火葬場への搬送は必要であり、交通や動線の問題をあらかじめ調整しておく必要があります。
自宅での家族葬を検討する際は、まず葬儀社に相談して現地確認を行い、設備条件や近隣対応の可否を明らかにすることが重要です。自由度の高さと準備負担のバランスを見極めながら、自宅葬が実行可能かを慎重に判断することが求められます。
詳細は「家族葬を自宅で行う際の流れと注意点」でも解説されています。
会館・ホールで行う場合の特徴
家族葬を専用の会館やホールで行う場合、設備や動線が整っているため、参列者にとっても遺族にとっても負担が少ない形で葬儀を実施しやすくなります。
多くの式場には、安置室・控室・会食スペース・導師控室などが併設されており、葬儀に必要な空間が一か所に集約されている点が特徴です。また、公共交通機関のアクセスが良好な場所に立地している式場も多く、遠方からの参列者にとっても移動がしやすい傾向があります。
さらに、火葬場と併設された会館を選べば、通夜・告別式・火葬をすべて同一施設内で行えるため、移動の負担を大幅に減らすことができます。体力的な負担の軽減だけでなく、当日の進行や時間調整がスムーズになるという実務的な利点もあります。
一方で、施設の立地や設備の内容によって費用が変動するため、希望条件を整理したうえで複数の候補を比較検討することが現実的な進め方です。
火葬場での直葬との違い
家族葬は、火葬場で行う直葬と比べて、儀礼性をある程度保ちつつも、全体の規模や費用を抑えた形式として位置づけられます。
直葬(火葬式)は、通夜や告別式を行わず、遺体を直接火葬場へ運び荼毘に付す形式で、時間や費用の負担が最小限に抑えられるのが特徴です。 簡易葬もこれに近い形で、ごく限られた手順のみを実施するケースが多く、儀式よりも実務を優先した葬送方法といえます。
一方で家族葬は、通夜・告別式を基本に据えたうえで、参列者を親族中心に限定する形式です。 そのため、宗教儀礼や故人を偲ぶ時間をしっかりと設けつつ、一般葬よりもコンパクトに進行できる点が特長です。 「故人との最期の時間をきちんと持ちたいが、大規模な対応は避けたい」というニーズに応えやすい形式といえます。
直葬と家族葬の違いを理解することで、精神的満足度と経済的合理性のどちらを重視するかという視点で、自身に合った葬儀形式を判断しやすくなります。
場所選びの判断基準と家族間での確認事項
家族葬をどこで行うかは、葬儀全体の進行や費用に大きく関わるため、慎重な判断が求められます。
それぞれの場所に特徴があるため、家族の希望や参列者の状況を踏まえて最適な選択をすることが、満足度の高い葬儀につながります。
以下の比較表では、自宅・会館・火葬場併設式場の特徴や費用感を整理しています。
設備面や利便性、費用を比較検討する際の判断材料として活用してください。
場所 | 特徴 | 費用の目安 | 向いているケース |
---|---|---|---|
自宅 | 慣れ親しんだ環境で故人を送れるが、準備・手配の負担が大きい | 設備費不要だが準備負担が大きい | 高齢の親が住んでいた家で行いたい、費用を最小限に抑えたい場合 |
会館・ホール | 葬儀に必要な設備が整っており、スタッフのサポートも受けられる | 10万〜30万円程度の施設使用料が発生 | 準備や進行を任せたい場合、天候やスペースの不安がある場合 |
火葬場併設式場 | 会館・ホールと同様の設備を備えつつ、火葬場への移動が不要 | 費用は会館・ホールと同等(公営なら割安な場合も) | 移動の負担を避けたい、時間や体力面での配慮が必要な場合 |
火葬場併設の式場は、火葬場と同じ敷地内にあるため、移動の手間がかからず、参列者の負担が軽減されるという点で他の選択肢と大きく異なります。
設備やサポート体制はホールとほぼ同様であり、利便性を重視する方には特におすすめの場所といえます。
場所を選ぶ際には、以下のような家族内の確認事項もあらかじめ話し合っておくことが重要です。
- 高齢の親族や小さな子どもが参列する予定はあるか
- 自宅を使うことに抵抗や制約はないか
- 火葬場との距離や移動手段に不安はあるか
- 使用予定の会場に必要な設備が整っているか
- 費用・設備・時間のどれを最優先するか
このチェックリストは、複数の会場候補を比較する際にも役立ちます。
それぞれの条件に対して◯×をつけて整理することで、客観的な判断がしやすくなり、家族全体で納得のいく選択につながります。
【参列者向け】家族葬に呼ばれた・呼ばれていないときの対応とマナー
家族葬では、参列の案内を受けたかどうかによって対応の仕方を分けることが大切です。
案内がない場合は参列を控え、案内があった場合でも遺族の意向に配慮した行動が求められます。家族葬は遺族のプライベートな見送りを重視して行われるため、一般的な慣習よりも遺族ごとの判断が優先されます。
たとえば、香典や弔電についても「辞退」と伝えられていれば、その意向を尊重するのが適切です。形式的に送るのではなく、後日改めてお悔やみの気持ちを伝えるなど、遺族の負担を軽減する方法を選ぶことが望まれます。
相手本位の姿勢と慎重な判断が、家族葬における参列者としてのマナーの基本です。
香典や弔電に関する対応の具体的な方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
呼ばれた場合の服装・香典・立ち居振る舞い
家族葬に参列する際は、一般葬と同様にフォーマルな服装や礼節ある振る舞いが求められます。特に故人や遺族との関係性が近いことが多いため、場の雰囲気に配慮した行動が大切です。
服装については、男性であれば黒の礼服に白いシャツと黒ネクタイ、女性は黒のアンサンブルやスーツなどが基本です。過度な装飾や光沢のある素材は避け、シンプルで落ち着いた装いを心がけます。
香典に関しては、事前に辞退の有無を確認することが重要です。案内状や連絡に「香典を辞退します」と明記されている場合は持参せず、記載がない場合は無地の香典袋に3,000円〜10,000円程度を包むのが一般的です。
振る舞いとしては、静粛な態度を保ちつつ、遺族へのお悔やみの言葉は簡潔に伝えることが望まれます。親しい関係であっても、私語を控え、式の進行に影響しないよう配慮する姿勢が大切です。
詳細なマナーについては、以下のページもご参照ください。
葬儀マナーの基本|服装・香典・振る舞いまで総まとめ
呼ばれていない場合にできる配慮ある対応
家族葬に呼ばれていない場合でも、故人や遺族に対する敬意を示す方法は複数あります。
家族葬は遺族の意向によって参列者を限定する形式であるため、呼ばれていないこと自体に配慮が込められていると受け止めるのが適切です。
そのうえで、後日あらためて弔意を伝える行動が、穏やかな関係を保つ助けになります。
具体的には、電話や手紙でお悔やみの気持ちを伝えたり、自宅訪問を控えつつ、弔電や香典を郵送で届ける方法が一般的です。
また、香典を辞退しているケースもあるため、事前に確認することが重要です。
弔問の申し出も、遺族の負担を考慮して慎重に検討すべきです。
呼ばれていないことに過剰に反応せず、遺族の判断を尊重しつつ、控えめな形で誠意を伝えることが、最も望ましい対応といえます。
形式にとらわれず、気持ちを届ける姿勢こそが、配慮ある行動につながります。
香典を送りたいときのマナー
家族葬に参列できない場合でも、香典を送ることで故人への哀悼と遺族への配慮を示すことが可能です。
ただし、家族葬では遺族の意向により「香典辞退」としているケースもあるため、事前に確認を取ることが基本となります。辞退の意向が明示されている場合は、無理に送らず、手紙や弔電など他の方法で気持ちを伝えるのが望ましいとされます。
香典を郵送する際は、現金書留を利用し、簡潔な挨拶文やお悔やみの言葉を添えると丁寧な印象になります。また、香典袋の表書きや金額の目安など、基本的なマナーを守ることで失礼のない対応が可能です。
送り方や金額の目安、表書きの書き方など詳細なマナーについては、以下の解説ページも参考になります。
香典の基本マナーと送り方の注意点
弔電を送る際のマナーと文例
家族葬に参列できない場合、弔電で哀悼の意を伝えることは丁寧な対応といえます。
弔電は葬儀当日までに到着するのが理想とされ、式場宛に送る際は日時や送り先の確認が重要です。また、家族葬では弔電も辞退される場合があるため、送付の可否については事前の確認が望まれます。
文面は形式に沿いながらも、遺族への気遣いや故人への感謝を静かに表現することが求められます。たとえば「ご生前のご厚情に深く感謝し、心よりご冥福をお祈り申し上げます」など、簡潔で落ち着いた表現が基本です。
遺族の意向を尊重しつつ、失礼のない言葉を選ぶことが、弔電マナーにおいてもっとも大切なポイントです。
文例や送付方法の詳細については、以下の記事をご参照ください。
家族葬における弔電マナー
弔電・香典を辞退された場合の対応方法
家族葬で弔電や香典を辞退された場合は、その意向を尊重し、無理に送らないことが最も礼を尽くした対応となります。
家族葬では遺族の負担を軽減するために、あらかじめ「香典・弔電はご遠慮します」と伝えられることがあります。これは、受け取りや返礼のやり取りに配慮した判断であるため、気持ちがあっても控えるのが望ましいとされます。
それでも気持ちを伝えたい場合は、葬儀後しばらく経ってから、手紙や簡単なお悔やみの言葉を送るなど、形式にとらわれない方法で配慮を示すことが可能です。無理に物を贈るのではなく、静かな弔意を示す姿勢が大切です。
辞退の意向は遺族の思いや事情に基づいた判断であるため、それに沿った対応を取ることが、もっとも丁寧で負担の少ない配慮になります。
家族葬の流れを簡潔に把握する
家族葬の全体的な流れを事前に把握しておくことで、準備や手続きにおける不安を軽減できます。
通夜から火葬までをコンパクトに行う家族葬では、進行自体は一般葬と大きく変わりませんが、参列者の範囲が限られる分、運営の負担も異なります。葬儀社との打ち合わせや日程調整、当日の動きなど、あらかじめ確認しておきたいポイントがあります。
この章では、家族葬の一般的な流れを時系列で整理し、喪主として備えておくべき段取りや注意点を簡潔に把握できるよう解説します。
一般的な家族葬の流れと日程
家族葬の流れは一般葬と大きく変わらず、通夜・告別式・火葬といった基本的な工程に沿って進みます。
参列者の人数が限られている分、準備や進行が比較的スムーズになりやすいものの、全体の流れや日程感はあらかじめ把握しておくことが重要です。多くの場合、亡くなられた当日または翌日に葬儀社と打ち合わせを行い、そこから2~3日以内に通夜と告別式が執り行われるのが一般的です。
一例として、逝去から初七日までのおおまかな流れは以下のとおりです。
- 逝去当日:搬送・安置・葬儀社との打ち合わせ
- 翌日:納棺・通夜式
- 翌々日:告別式・火葬・初七日法要(当日繰り上げの場合も)
地域や宗教・宗派によって多少の違いはありますが、一般的な日程感を知っておくことで、心づもりや親族間の連携がしやすくなります。
家族葬だからこそ、簡素である一方で段取りを誤らないよう、流れを整理しておくことが大切です。
さらに詳しい流れについては、以下のページで図解付きで解説しています。
家族葬の流れを詳しく解説
お通夜を省略する場合の注意点|一日葬などの形式
お通夜を省略して告別式と火葬のみを行う「一日葬」は、家族葬の一形態として選ばれることが増えていますが、形式上の違いや配慮点を理解したうえで判断することが大切です。
一日葬は、参列者の移動負担や費用を抑えられる点が評価される一方で、弔問の機会が限られるため、親族や関係者との調整が重要になります。とくに高齢の親族が多い場合や、関係性の深い人が多い場合には、丁寧な事前説明が必要です。
また、菩提寺がある場合には、一日葬の実施可否をあらかじめ確認しておくべきです。通夜を省略することに対して宗教上の考え方や対応が異なるケースもあります。
一日葬は移動や費用の負担が少ない反面、弔問の場が限られるため、関係者には事前に意向を伝えておくなどの配慮が必要です。
一日葬の案内に関する考え方や判断基準については、以下の記事で詳しく解説されています。
一日葬に招く・招かないの判断基準
火葬式・直葬との違いと判断基準
火葬式(直葬)は、通夜や告別式を省略し火葬のみを行う形式で、家族葬よりもさらに簡略化された葬儀形態です。
家族葬は少人数で執り行う点では火葬式と共通しますが、通夜や告別式を実施することで、儀式の場としての意味合いやお別れの時間が確保される点が異なります。これに対し火葬式は、宗教儀礼を伴わず、費用や準備の負担を最小限に抑えられるのが特徴です。
選択の基準としては、「宗教的儀式を重視するかどうか」「参列する親族や関係者がいるか」「お別れの場をどう設けたいか」といった点が挙げられます。特に遺族や故人の価値観によって適した形式が変わるため、家族内での事前の話し合いが欠かせません。
費用や手間だけで判断するのではなく、後悔のない見送り方を考える視点が大切です。
【実務】家族葬を実施するために考えるべきこと
家族葬を円滑に進めるには、参列者の範囲や場所、費用、当日の流れまでを事前に整理し、関係者間で共通認識を持つことが重要です。
家族葬は自由度の高い葬儀形式である反面、決まった形式がないため、遺族や親族で細かく決める必要があります。誰を呼ぶのか、どのような形式にするのか、費用の目安はどうか、場所はどこにするのか。 これらを事前に検討しないと、後の段取りや心情面でトラブルが生じる可能性があります。
また、宗教者への依頼や地域・親族の慣習も加味しながら、葬儀社との打ち合わせで具体化していくプロセスが欠かせません。形式だけでなく、故人や家族の思いを反映した式にできるかどうかも大切な視点です。
この章では、家族葬を「実際に行う立場」で検討すべき実務的なポイントを、判断の軸とあわせて整理していきます。
葬儀の場所と日程の具体的な決め方
葬儀の日程や場所は、基本的に「亡くなってから」しか正式に決められないため、逝去後は速やかに火葬場と式場の空き状況を確認することが重要です。
事前に希望を固めておくことは可能ですが、火葬場や式場の予約は死亡届の提出後でないと手続きできない自治体が多いため、想定よりも日程が後ろ倒しになるケースもあります。そのため、逝去直後には迅速に葬儀社と連絡を取り、日程調整を進める必要があります。
場所の選定では、火葬場併設式場・地域の葬儀ホール・自宅などの選択肢があり、希望する規模や移動負担、参列者の事情を踏まえて柔軟に考えることが求められます。特に火葬場併設の式場は移動が不要となるため、高齢の参列者が多い場合に適しています。
正式な予約は逝去後になりますが、流れを理解しておけば判断も迅速に行えます。時間的な余裕が限られるからこそ、候補の整理や家族間の話し合いは事前にしておくと安心です。
家族内ですり合わせておきたい点
家族葬を行う際は、事前に家族間で「どこで、どのように、誰と行うか」を中心に意識をすり合わせておくことが不可欠です。
具体的には、まず場所(自宅・式場・火葬場併設施設など)をどう考えるか、葬儀の形式(一日葬・二日葬・火葬式など)は何が適しているか、宗教者を招く場合は宗派(浄土真宗・曹洞宗など)をどうするか、誰まで参列をお願いするか(親族の範囲や友人・会社関係の扱い)、といった点を明確にしておく必要があります。
加えて、予算については細かい金額を決めるのが難しくても、「どの程度の規模感を想定するか」「費用はどこまでなら許容できるか」といった方針を共有しておくと、葬儀社との打ち合わせもスムーズになります。
小規模で自由度の高い家族葬だからこそ、意思疎通の不足が後悔につながる可能性があります。準備段階で共通認識を持つことが、落ち着いた対応への第一歩となります。
葬儀社への相談と見積もりのタイミング
葬儀社への相談は、逝去前でも可能です。検討段階で一度相談しておくことで、希望に合った形式や費用感を把握しやすくなります。
家族葬は自由度が高い分、事前に情報を集めておかないと、いざというときに「何を基準に決めればよいか」が分からず、判断に迷うことがあります。生前相談や事前見積もりを活用すれば、場所・形式・参列者の規模などに応じた大まかな費用を把握でき、準備の方向性も明確になります。
特に火葬場の空き状況や地域ごとの相場、必要となる物品・人員の詳細は、葬儀社ごとに異なるため、複数社から情報を集めることも有効です。なお、逝去後すぐに手配する場合でも、短時間で複数の意思決定が必要になるため、事前に話を聞いておくだけでも負担軽減につながります。
葬儀社への相談は「まだ早い」と感じる段階でも行えます。納得のいく葬儀を行うためには、早めの情報収集と見積もり確認が現実的かつ有効な準備となります。
家族葬とは「誰を呼ぶか」から始まる柔軟な葬儀形式
家族葬には厳密な決まりがなく、誰を呼ぶかや式の内容などを家族の考えに合わせて決められる点が特徴です。
だからこそ、参列者の範囲や式の形式、香典や弔電への対応、場所・費用・宗教など、検討すべき項目は多岐にわたります。 判断に迷ったとき、大切なのは、故人の意向や家族の気持ちを大切にしながら、無理のない範囲で判断していくことです。
形式にとらわれすぎず、必要な情報を集め、家族間で話し合いを重ねながら、無理のない計画を立てていくことが大切です。少しでも不安や疑問がある場合は、早い段階で葬儀社に相談し、流れや費用の目安を掴んでおくと安心です。
「誰を呼ぶか」から始まり、「どのような別れ方がふさわしいか」を考える。それが家族葬の本質であり、悔いのない見送りの第一歩です。
よくある質問
- 家族葬ではどこまでの人を呼べばよいのでしょうか?
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家族葬に明確な線引きはありませんが、一般的には家族と近しい親族を中心に声をかけるケースが多く見られます。
ただし、故人の友人や特別に親しかった知人を招くことも可能です。
参列者の範囲は「どのような別れ方を望むか」「誰に見送ってもらいたいか」という視点で家族内ですり合わせることが大切です。 - 家族葬でも香典は受け取るべきですか?
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香典を受け取るかどうかは、遺族側の意向によって決まります。
実際には約8割の家族葬で香典を受け取っており、葬儀費用の一部補填として役立てられることも少なくありません。
辞退する場合は、事前に案内状などで「香典は辞退する」旨をはっきり伝えておくと、相手も戸惑わずに済みます。
どちらを選ぶにしても、参列者への配慮が重要です。
- 一日葬や火葬式との違いは何ですか?
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一日葬や火葬式は葬儀の「形式」を表す言葉であり、家族葬は「規模」を示す言葉です。
一日葬は通夜を行わず1日で葬儀を完結させる形式、火葬式は式を行わず火葬のみを行う簡素な形式です。
いずれも小規模で執り行うため、広義の家族葬に含まれることもありますが、内容や費用が異なる点に注意が必要です。 - 家族葬を行う際、葬儀社にはいつ相談すればいいですか?
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葬儀社への相談は、逝去後だけでなく、生前や検討段階でも可能です。
特に家族葬は選択肢が多いため、早めに希望を整理して見積もりを取っておくことで、突然の場面でも落ち着いて対応できます。
事前に相談しておくだけでも、進行や費用の目安が分かり、不安の軽減につながります。

この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版