家族葬はお通夜なしでもできる?形式や流れ・費用を解説
最近では、通夜を行わずに一日で葬儀を終える「一日葬」が増えています。
家族葬でもお通夜を省略することはできるのか、不安に感じる方も多いでしょう。
この記事では、お通夜を行わない家族葬の形式や実施の流れ、費用や香典などの注意点をわかりやすく解説します。

家族葬はお通夜なしでも可能?一日葬という選択肢
お通夜を省略する葬儀は、一般的な葬儀に比べて負担が少ない一方、
本当に省略してよいのか、どのような形式で行われるのか不安に思う方もいるでしょう。
ここでは、お通夜を行わない家族葬の代表例「一日葬」について、形式や選ばれる理由を解説します。
お通夜を行わない家族葬は「一日葬」と呼ばれる
結論から言えば、家族葬でもお通夜を省略することは可能です。
その場合、「一日葬」という形式で、葬儀・告別式・火葬を1日で執り行います。
一日葬は、通夜を行わずに翌日の葬儀・告別式のみを行う葬儀スタイルで、
体力的・経済的な負担を軽減できることから、年々選ぶ方が増えています。
従来は2日間にわたるのが一般的だった葬儀も、現在では喪主や家族の意思によって柔軟に対応するケースが増えており、一日葬は家族葬の主流の選択肢のひとつとなりつつあります。
一日葬が増えている社会的背景と家族の事情
お通夜を省略し、葬儀・告別式・火葬を一日で執り行う「一日葬」は、近年注目されている葬儀形式のひとつです。
背景には、高齢化による体力面への配慮や、経済的負担を抑えたいという意向、コロナ禍による参列制限の影響などがあり、ご家族の事情に応じて選ばれるケースが増えています。
この傾向は、複数の公的・民間の調査、および実際の葬儀実績データからも明らかです。
ここでは、客観的なデータに基づき「一日葬の増加傾向」がどのように広がっているのかを見ていきましょう。
公的データ 公正取引委員会の調査結果
公正取引委員会が2016年に実施した「葬儀の取引に関する実態調査」では、葬儀業者・納入業者の回答をもとに、増加傾向にある葬儀形式の割合が示されています。
以下は、その調査結果をもとに整理した「増加傾向の葬儀形式」の一覧です。
葬儀形式 | 割合 |
---|---|
家族葬 | 51.1% |
一日葬 | 17.1% |
一般葬 | 5.4% |
社葬 | 0.3% |
直葬 | 26.2% |
※出典:公正取引委員会「葬儀の取引に関する実態調査報告書」(平成28年度)
このデータはやや古い(2016年)ものの、すでにこの時点で「家族葬」や「一日葬」「直葬」の需要が急増していたことを示しています。
特に一日葬は、回答全体の17.1%と無視できない規模を占めており、当時から通夜を省略する形式への関心が高まっていたことが読み取れます。
つまり、社会全体の流れとして「シンプルで負担の少ない葬儀」へのニーズが、すでに10年前から顕在化していたといえるでしょう。
民間調査 鎌倉新書「いい葬儀」の調査動向
公的機関のデータに加えて、葬儀ポータルサイトを運営する鎌倉新書が公表している調査からも、葬儀形式の変化を具体的に読み取ることができます。
以下は、2015年から2024年までに行われた全国調査の結果です。
年 | 一般葬 | 家族葬 | 一日葬 | 直葬・火葬式 | その他 |
---|---|---|---|---|---|
2015年 | 58.9% | 31.3% | 3.9% | 5.9% | 0.0% |
2017年 | 52.8% | 37.9% | 4.4% | 4.9% | 0.0% |
2020年 | 48.9% | 40.9% | 5.2% | 4.9% | 0.1% |
2022年 | 25.9% | 55.7% | 6.9% | 11.4% | 0.2% |
2024年 | 30.1% | 50.0% | 10.2% | 9.6% | 0.1% |
※出典:鎌倉新書「お葬式に関する全国調査からみる葬儀費用の推移・変化(2013年~2024年)」
自社実績 「むすびす」の家族葬データにみる現実の傾向
公的・民間のデータに加えて、「お葬式のむすびす」が首都圏でお手伝いした葬儀の実績からも、一日葬の増加が明確に確認できます。
以下は、2022年〜2024年の3年間における、むすびすの葬儀形式別割合です。
年 | 一般葬 | 家族葬 | 一日葬 | 直葬・火葬式 |
---|---|---|---|---|
2022年 | 5.2% | 14.5% | 43.2% | 33.5% |
2023年 | 6.3% | 13.8% | 50.5% | 16.1% |
2024年 | 6.4% | 15.6% | 49.6% | 9.9% |
※出典:むすびす「家族葬形式別実施割合」(一都三県/2022〜2024年)
一日葬は2022年に全体の4割超、2023年には過半数に達し、2024年もほぼ同水準で推移しています。
また、直葬・火葬式の割合が年々減少している点も注目すべき傾向です。これは、「最低限で済ませたい」というニーズよりも、「短くてもきちんとしたお別れをしたい」というご家族の想いが反映されていると考えられます。
このように、首都圏を中心とした実際の葬儀の場面においても、お通夜を省略する一日葬は現実的な選択肢として定着しつつあります。
形式の変化は単なる時流ではなく、「大切な人を自分たちらしく送りたい」という意識の変化の表れです。
お通夜を行わない家族葬の流れ
一日葬など、お通夜を行わない家族葬を選んだ場合、当日の流れや準備の進め方に不安を感じる方も少なくありません。 この章では、通夜なしの家族葬がどのようなスケジュールで進行するのかを、具体的に解説していきます。
通夜なしの家族葬の基本的な流れ
お通夜を行わない家族葬では、1日で葬儀・告別式・火葬を行う「一日葬」の流れに従って進行します。 主なスケジュールは以下の通りです。
時間帯 | 内容 |
---|---|
朝〜午前中 | 式場集合・ご遺族控室での準備・開式前説明 |
午前中 | 葬儀・告別式(宗教者の読経・弔辞・お別れの儀) |
正午前後 | 出棺〜火葬場へ移動・火葬 |
午後 | 収骨・精進落とし(希望者のみ)・解散 |
時間配分は式場や火葬場の混雑状況により変動しますが、全体の所要時間は4〜6時間程度が目安です。
お通夜を省略した場合に必要な準備とは
通夜を省略する分、当日の朝に準備が集中します。以下のような点に注意が必要です。
- 会葬者の対応:開式までに受付・香典対応をスムーズに行う必要があります
- 宗教者との打ち合わせ:読経や進行内容の最終確認を当日行うことが多いです
- 喪主挨拶や供花の配置:前日夜に準備できないため、式場入り後に速やかに行う必要があります
また、遺族の心身の負担が当日に集中するため、十分な休養や段取りの共有が重要です。
一日葬の流れをスムーズに進めるコツ
葬儀の当日を滞りなく進めるためには、事前準備と担当者との打ち合わせがカギとなります。
- 受付や式中の役割分担を明確にする(人数が少ない場合は外部スタッフに依頼)
- 写真や供花の配置イメージをあらかじめ決めておく。前日に設営を行う場合は前日に確認しておきましょう
- 式中の進行内容を全体で把握しておく(時間管理に役立ちます)
特に一日葬では「短い時間の中でどれだけ満足のいくお別れができるか」が大切です。 そのためには、無理のない人数とスケジュールで葬儀を組み立てることが非常に重要です。
通夜を省略した家族葬の費用はどれくらい?

一日葬は通夜を行わないぶん、全体の費用を抑えやすい傾向があります。
ただし、内容や地域、参列者の人数などによって大きく変動するため、あらかじめ目安を知っておくことが大切です。
一日葬で抑えられる主な費用項目
一日葬では、通夜式にかかる費用(通夜料理・式場使用料・人件費など)が不要になります。
- 通夜料理の準備が不要:会食の回数が減るため、飲食代の負担が軽減されます
- 通夜に伴う人件費の削減:スタッフ稼働が1日分で済むため、全体の人件費も抑えられます
- 式場使用料が1日分で済む場合も:会場によっては2日間の利用が前提のケースもあるため、事前確認が必要です
このように、葬儀にかかる日数を短縮できる分、費用を抑えやすいのが一日葬のメリットです。
実際の費用相場と二日葬との比較
一日葬の費用は、45万円前後からが一般的ですが、内容や希望によっては100万円以上となるケースもあります。
葬儀形式 | 費用の目安 | 備考 |
---|---|---|
一日葬(通夜なし) | 45万円〜 | 通夜費用が不要。内容により100万円以上もあり得る |
家族葬(二日葬) | 60万円〜 | 通夜〜葬儀の2日間。料理・式場費が増加 |
一般的には一日葬の方が費用は抑えられますが、故人への思いや会葬者の人数、宗教的な理由などによって、最適な形式は異なります。
家族葬でお通夜をしない場合の香典マナー

通夜なしでも香典は必要?受け取り方と渡し方
お通夜を行わない一日葬などの家族葬でも、基本的には香典を受け取っても問題ありません。ただし、渡すタイミングやマナーについては、通常の葬儀とは異なる点に注意が必要です。
- 香典は告別式で受け取るのが基本
- 受付担当者を事前に決めておく
- 香典返しを当日手渡しするか、後日郵送にするかを検討
特に一日葬ではスケジュールが短いため、受付対応をスムーズにするための準備が重要です。事前に香典を受け取る旨を参列者に伝えておくと混乱を避けられます。
香典辞退をする場合の伝え方と事前案内の工夫
最近では「香典辞退」を選ぶご遺族も増えています。辞退する場合は、事前の案内や招待状、訃報で明確に伝えることが必要です。
- 訃報や案内状に「香典のご辞退」を明記
- 当日の受付でも辞退の意思を伝える表示を設置
- 辞退する場合でも、返礼を用意するかどうかを検討
香典辞退は経済的な負担軽減や、参列者の手間を省く目的でも有効ですが、地域の慣習や親族の考え方との調整も重要です。十分に話し合って決めるようにしましょう。
通夜を省略する際に注意したい3つのポイント
通夜を行わない家族葬は、時間的・経済的な負担を軽減できる一方で、親族間の調整や宗教上の配慮が必要になるケースもあります。 安易に選択すると、後々のトラブルにつながる可能性もあるため、事前の確認と準備が重要です。
参列者や親族への理解と説明が不可欠
通夜を省略することに、親族や参列者の理解が得られない場合があります。
とくに年配の親族や地域の慣習を重んじる方にとっては、「通夜を省略すること」に対して違和感や失礼に感じることも。
事前に通夜を行わない理由を丁寧に説明し、了承を得ることが円満な進行につながります。
菩提寺・宗教者の了承が必要なケースもある
菩提寺がある場合や、特定の宗派に則って葬儀を行う際には、通夜を省略することについて事前に確認・相談が必要です。
一部の宗派では「通夜の読経」が宗教儀式として欠かせないものとされているため、勝手に省略すると関係悪化を招く可能性があります。
葬儀社とだけでなく、宗教者とも段取りを擦り合わせておくことが大切です。
短時間での進行に伴う準備と当日の段取りが重要
通夜を行わない場合、すべての儀式が1日に凝縮されるため、当日のタイムマネジメントが非常に重要になります。
たとえば、一日葬では式場入りから火葬・精進落としまでを数時間に収める必要があり、1つの遅れが全体に影響を及ぼす可能性があります。
- 式場との打ち合わせを事前にしっかり行い、時間配分を把握しておく
- 供花・遺影・位牌などの配置イメージや挨拶内容を事前に準備
- 搬送や火葬場の時間との連携も確認しておく
「短時間でも後悔のないお別れ」を実現するには、事前準備とチームでの共有が鍵になります。
よくある質問
- お通夜をしないと失礼にあたりますか?
- 通夜を行わないこと自体がマナー違反となるわけではありませんが、地域の慣習や親族の考え方によっては驚かれる可能性があります。 特に年配の親族や参列者には、通夜を行わないことに違和感を覚える方もいるため、事前に説明や案内を行っておくことが望ましいでしょう。
- 家族葬でも香典返しは必要ですか?
- 家族葬であっても、香典を受け取った場合は基本的に「香典返し」を行います。 通夜がない場合でも葬儀後に郵送するなどの形で返礼品を贈るのが一般的です。 ただし、「香典辞退」の案内をしている場合は返礼の必要はありません。
- 一日葬では会食(精進落とし)は必要ですか?
- 会食は必須ではありませんが、親族や僧侶への感謝の気持ちとして用意されるケースが多いです。 少人数であれば式場内で簡単な食事を取ることも可能ですし、辞退しても失礼にはあたりません。
- 参列者が少なくても通夜は省略できますか?
- はい、省略可能です。少人数であればなおさら、一日葬でシンプルに行うほうが負担が軽く、現実的な選択となることが多いです。 ただし、宗教的な理由や親族の意向によっては実施が求められるケースもあります。
- 一日葬ではどのような服装で参列すればよいですか?
- 一日葬は正式な葬儀形式ですので、基本的には喪服(ブラックフォーマル)が望ましいです。 家族のみで行う場合や略式が許容される場合でも、黒や濃紺など落ち着いた色合いの服装を心がけましょう。

この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版