真言宗の特徴は? 葬儀の流れ、マナー・費用などを解説
真言宗の葬儀は、密教の教えに基づき、読経と真言、厳かな儀礼によって故人を成仏へ導くために行われます。
弘法大師・空海が開いた真言宗は、仏の真実の「ことば(真言)」を重んじ、故人を大日如来のいる「密厳浄土(みつごんじょうど)」へ送り届ける教えを伝えてきました。
通夜から葬儀・告別式、初七日や四十九日法要まで段階的に祈りが捧げられ、参列者は服装や数珠、焼香など真言宗ならではの葬儀マナーを理解しておくことが大切です。
また、喪主や遺族は、読経料や戒名料、御車代、御膳料などを含む真言宗のお布施についても事前に整理しておくと安心です。
この記事では、真言宗の葬儀の特徴や流れ、参列時のマナーやお布施の考え方までを、宗派の思想に沿ってわかりやすくまとめます。

目次
- 1.真言宗とは、密教の教えをもとに「即身成仏」を説く仏教の一宗派です
- 2.真言宗の葬儀は、密教の教えをもとに「即身成仏」へ導くための儀礼です
- 3.真言宗の葬儀の流れは、故人を即身成仏へ導くための儀式として行われます
- 4.喪主や遺族は、菩提寺との関係を確認し、真言宗の作法に沿って葬儀を進めることが大切です
- 5.喪主や遺族は、真言宗の葬儀費用とお布施の考え方を理解して準備を整えましょう
- 6.参列者は、服装・焼香・数珠・言葉遣い・不祝儀袋の基本マナーを押さえて臨みます
- 7.真言宗の葬儀後は、法要と日々の供養を通じて仏縁を深めていきます
- 8.真言宗の葬儀は、密教の教えに基づき「仏と一体となる」ことを目的とした儀礼です
真言宗とは、密教の教えをもとに「即身成仏」を説く仏教の一宗派です
真言宗は、平安時代初期に弘法大師・空海(くうかい)によって開かれた密教系の仏教宗派です。
「真言」とは仏の真実の言葉を意味し、修行によってその真理を体得し、悟りを得ることを目的としています。
その教えの中心には、仏の力をこの身のままで体現できるという「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」の思想があります。
参考:葬儀とは何か?由来を交えながら解説
弘法大師・空海が中国で学び、日本に真言密教を広めました
空海は延暦二十三年(804)に遣唐使として唐へ渡り、青龍寺の恵果和尚(けいかおしょう)に師事しました。
わずか3か月で真言密教の灌頂(かんじょう)をすべて授かり、第八祖として遍照金剛(へんじょうこんごう)の法号を授けられたと伝えられています。
帰国後は嵯峨天皇の信任を得て、高野山・金剛峯寺を真言宗の根本道場として開き、京都の東寺(教王護国寺)を拠点に密教の教えを広めました。
関連:葬儀の流れと所要時間の目安を解説
密教とは、仏の真理を「真言」「印」「観想」で実践する教えです
密教は、5世紀頃のインドで発生した仏教の一派で、本尊は大日如来(だいにちにょらい)です。
修行者は「真言(しんごん)」と呼ばれるマントラを唱え、手で印を結び(身密)、仏を観想(意密)するなど、三密の実践によって悟りに近づくとされています。
このように、言葉・行為・心を通じて仏の力と一体になることを重視するのが真言密教の特徴です。
詳しくは:葬儀と葬式の違いは何?それぞれの意味を解説
真言宗の思想の中心は「即身成仏」という考え方にあります
真言宗は、「人は生きたままでも仏となることができる」という即身成仏の教えを重視します。
空海は著書『即身成仏義』で、人間は仏教の教えを深く理解し、その資質が熟せば誰もがこの身のまま成仏できると説きました。
この思想は、来世での救済を前提とする他宗派とは異なり、現世における悟りの可能性を示しています。
関連解説:喪主のための葬儀参列者ガイド
大日如来を中心とした象徴的な表現や修法も特徴です
真言宗では、大日如来を中心とした宇宙の真理を曼荼羅(まんだら)として表現し、火を使って煩悩を清める護摩行(ごまぎょう)を行うなど、象徴的な儀礼を多く取り入れています。
また、古代インドの文字である梵字(ぼんじ)を用い、仏や菩薩の力を可視化する点も密教の特色といえます。
これらの実践は、真言宗の葬儀や法要の中にも息づいており、宗派の精神性を象徴しています。
参考:葬儀のマナーについて詳しく解説
このように、真言宗は空海の教えを受け継ぎ、仏の智慧を実践によって体得することを重んじる宗派です。
次の章では、この思想をもとに行われる真言宗の葬儀の特徴を詳しく見ていきます。
関連:葬儀における流れを解説(はじめての方へ)
真言宗の葬儀は、密教の教えをもとに「即身成仏」へ導くための儀礼です
真言宗の葬儀は、故人を即身成仏(そくしんじょうぶつ)へ導き、大日如来の光に包まれた「密厳浄土(みつごんじょうど)」へ送ることを目的としています。
この考え方は、真言密教の根本である三密(さんみつ)の教えに基づき、仏と人との結びつきを深める儀式として位置づけられています。
ここでは、真言宗の葬儀に特徴的な三つの儀礼、すなわち「密教の教えに基づく作法」「灌頂(かんじょう)」「土砂加持(どしゃかじ)」について解説します。
関連:葬儀の流れ(はじめての方へ)
密教の教えにもとづく葬儀が行われます
真言宗の葬儀では、密教の根本原理である三密(さんみつ)の実践が重視されます。
「身密(しんみつ)」は手で印を結び悟りの境地を表すこと、「口密(くみつ)」は仏の言葉である真言を唱えること、「意密(いみつ)」は大日如来や曼荼羅の仏を思い浮かべ心を一つにすることを指します。
さらに、弾指三度(ゆびさんど)や五鈷杵(ごこしょう)など、密教の法具や所作を用いて加持祈祷が行われます。
灌頂(かんじょう)は、故人が仏と結縁するための重要な儀式です
灌頂(かんじょう)とは、清らかな水を故人の頭に注ぎ、本尊である大日如来や諸仏と縁を結ぶ儀式です。
この水は智慧と浄化の象徴であり、灌頂によって故人の魂は仏の位に入り、密厳浄土へ還るとされています。
真言宗において灌頂は、師が弟子に法を授ける最も神聖な儀礼と同じ意味を持ち、葬儀においても魂の再生と悟りへの導きを象徴します。
土砂加持(どしゃかじ)は、苦悩を清めて安らぎを願う儀式です
空海は、この宇宙は「地・水・火・風・空」の五大に「識(心)」を加えた六大から成ると説きました。
土砂加持(どしゃかじ)は、この教えにもとづき、納棺の際に「地」を象徴する土砂で故人を加持(加護を祈ること)する儀式です。
僧侶は「明光真言(こうみょうしんごん)」を唱えながら土砂をまき、生前の罪や苦しみを清め、安らかに成仏できるよう祈ります。
参考:通夜とは?流れ・マナーを解説
これらの儀礼はいずれも空海の教えにもとづき、「仏と一体となること」を目的としています。
真言宗の葬儀は、形式的な儀式にとどまらず、故人と遺族の心を仏法につなげる実践の場でもある点が特徴です。
真言宗の葬儀の流れは、故人を即身成仏へ導くための儀式として行われます
真言宗の葬儀は、故人がこの身のまま仏となる「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」の境地へ導かれるために営まれます。
葬儀は剃髪(ていはつ)や授戒(じゅかい)からはじまり、戒名の授与、灌頂(かんじょう)、加持祈祷などの儀式を経て、永遠の生命を象徴する大日如来と一体になる過程を表現します。
真言宗には「真言宗十八本山」と呼ばれる複数の派があり、葬儀の細部や読経の内容、儀式の順序は寺院や地域によって異なります。
関連:葬儀における流れを解説(はじめての方へ)
通夜では、故人の安らかな成仏を祈り、仏との結縁を確かめます
通夜では、故人の枕元で僧侶が経を唱える枕経(まくらぎょう)が行われ、左手に念珠を持たせて合掌の姿に整えます。
通夜の読経では「理趣経(りしゅきょう)」「慈救の呪(じくのしゅう)」「明光真言(こうみょうしんごん)」などが唱えられ、故人の魂が迷わず仏のもとへ導かれるよう祈ります。
納棺の際には、「明光真言」を唱えながら土砂加持(どしゃかじ)が行われ、生前の苦しみや迷いを清めるとされます。
関連:通夜とは?葬儀との違いから流れ・マナーまで解説
葬儀式は、大日如来の加持を受けて故人が仏となる過程を象徴します
葬儀式では、導師の入堂から始まり、剃髪・授戒・戒名授与・灌頂・引導など、数多くの密教儀式が行われます。
これらは、故人が仏弟子として戒を授かり、心身を清め、大日如来の光に包まれて成仏することを意味しています。
儀式の流れは次のとおりです。
- 入堂・三礼:導師が入堂し、仏法僧を礼拝して葬儀を開始する
- 酒水・加持供物:法水や供物を清め、葬儀の場を浄化する
- 剃髪・授戒・戒名授与:故人が仏弟子として戒を授かり、戒名を授与される
- 灌頂・引導印明:大日如来の加持を受けて成仏を祈る密教儀式を行う
- 焼香・祈願・出棺:都率浄土への往生を祈り、葬儀を締めくくる
葬儀の最後には、導師最極秘印(どうしさいごくひいん)と呼ばれる儀式が行われ、指を三度弾じて故人を都率浄土へ送り出します。
火葬場では「舎利礼」や「光明真言」を唱え、故人の魂が安らかに成仏するよう祈念します。
関連:葬儀における焼香について詳しく解説
葬儀後の法要は、感謝と供養を重ねていくための大切な行いです
法要は、故人を追善供養する仏事全般を指し、四十九日法要(中陰法要)や年忌法要などが行われます。
四十九日は故人の魂が来世へ旅立つ節目とされ、その後の年忌法要は遺族が故人を偲び、感謝を捧げる場となります。
また、真言宗では日々の礼拝を通じて仏や先祖を敬うことが大切とされ、「人は仏の教えを求める心が熟せば、誰もがすぐに成仏できる」という空海の教えを実生活で実践することが重んじられます。
法要は必ずしも命日に行う必要はなく、やむを得ず日程を変更する場合は命日前に行うのが一般的です。
関連:初七日法要とは?葬儀の観点からわかりやすく解説
喪主や遺族は、菩提寺との関係を確認し、真言宗の作法に沿って葬儀を進めることが大切です
真言宗の葬儀は、故人の信仰していた宗派の教えに基づいて営むことが基本です。
喪主や遺族が他宗派であっても、葬儀は故人の信仰を尊重して進めます。
まず確認すべきは、故人にお付き合いのある菩提寺(ぼだいじ)の有無です。
全体の段取りは「逝去から葬儀を終えるまでの手続き」も参考にすると流れが把握しやすくなります。
関連:逝去から葬儀を終えるまでに必要な手続き / 葬儀社を選ぶときのポイント
菩提寺があるかどうかを確認します
菩提寺とは、先祖代々の供養や法要をお願いしているお寺のことです。
真言宗の檀信徒は弘法大師・空海の教えを信仰し、葬儀や法要は基本的に菩提寺に依頼します。
菩提寺の有無は、葬儀の進行や戒名授与、納骨先の可否に関わるため、まず家族や親戚に確認しましょう。
【菩提寺がある場合】葬儀の手配と依頼のしかた
- 菩提寺と葬儀社の両方に連絡する
僧侶のご都合と会場の確保を同時並行で進めます。 - 僧侶・葬儀社担当と日程や場所を決める
菩提寺で行うか、葬儀会館で行うかを相談し、式次第を調整します。
菩提寺がある場合は、読経や戒名は菩提寺の僧侶へ依頼するのが原則です。
相談せずに進めると、後日の納骨で支障が出ることがあるため注意しましょう。
【菩提寺が遠方にある場合】葬儀の手配と依頼のしかた
- 菩提寺と葬儀社に連絡する
遠方でもまず菩提寺へ逝去の旨と方針を相談します。 - 僧侶が出向できるか確認する
可否により段取りが変わります。 - 出向可否によって対応を分ける
3-a:出向できる → 葬儀社に共有し、日程・場所を調整。
3-b:出向不可だが紹介可 → 紹介先寺院(僧侶)と葬儀社で準備。
3-c:出向も紹介も不可 → 葬儀社に同派の僧侶手配を依頼。
状況により、戒名は菩提寺、読経は紹介僧侶という分担もあります。
菩提寺・僧侶・葬儀社の三者で丁寧に調整しましょう。
【菩提寺がない場合】葬儀の手配と依頼のしかた
- 葬儀社に連絡する
会場と僧侶手配の可否、費用を確認します。 - 真言宗での施行希望を伝える
同派の僧侶紹介の可否や式次第を相談します。
葬儀社によって対応や費用は異なるため、見積もりの内訳と僧侶の所属宗派を必ず確認しましょう。
真言宗の葬儀を営む場所は、菩提寺の有無によって異なります
施行場所は、菩提寺の有無や地域慣習で変わります。代表的な例は次のとおりです。
ケース | 葬儀を行う場所 |
---|---|
菩提寺がある場合 | 菩提寺や自宅/葬儀会館(菩提寺の僧侶が出向) |
菩提寺が遠方の場合 | 紹介された真言宗寺院や自宅/葬儀会館(紹介僧侶が出向) |
菩提寺がない場合 | 葬儀会館(真言宗の僧侶を手配) |
現在は葬儀会館での施行が一般的です。
大切なのは、どの場所でも故人の信仰と遺志を尊重することです。
喪主や遺族は、真言宗の葬儀費用とお布施の考え方を理解して準備を整えましょう
真言宗の葬儀費用は、葬儀社のプランや菩提寺の方針で変動します。
地域差はあるものの、全体では100万〜200万円前後になるケースが多く見られます。
まずは費用の内訳を把握し、必要に応じて見積もり比較を行いましょう。
関連:平均相場はどれくらい?葬儀にかかる費用と内訳
葬儀費用の内訳と相場を把握しておきます
葬儀費用は大きく「葬儀運営費」「参列者対応費」「お寺関係費」に分けられます。
家族葬や小規模葬を選べば、総額を抑えられる場合があります。
- 葬儀を行うために必要な費用(会場・祭壇・火葬場など)
- 参列者への飲食費・香典返しなどのおもてなし費用
- お寺関係費(お布施・御車代・御膳料など)
会場・祭壇などの設備費が総額の約半分を占めることが多いです。
人数や地域慣習によって、おもてなし費用は大きく変動します。
お布施の目安を理解しておきます
真言宗では、授戒・読経への謝礼としてお布施をお渡しします。
戒名は梵字・院号・道号・戒名・位号から構成され、位号が上がるほど金額も高くなります。
一般的な戒名(信士・信女)の場合、お布施は30万〜50万円程度が目安です。
これに加え、僧侶の人数分の御車代や御膳料、初七日を同日で行う場合はその分も準備します。
併せて金銭マナー全般は香典解説も参考になります。
参考:葬儀の香典について解説
項目 | 費用の目安 |
---|---|
導師(主僧) | お布施30〜50万円、御車代・御膳料 各1〜2万円 |
脇導師(補助僧) | お布施10〜20万円×人数、御車代・御膳料 各1〜2万円×人数 |
戒名 | お布施に含まれる(位号により異なる) |
初七日法要 | お布施3〜5万円 |
葬儀費用を抑えるためのポイントを把握しておきます
真言宗の作法を守りつつも、費用を抑える工夫は可能です。
複数見積もりの比較や会員制度の活用、自治体の給付制度を確認しましょう。
- 複数の葬儀社から見積もりを取り寄せ比較する
- 葬儀の規模や形式(家族葬・直葬など)を検討する
- 葬儀社の会員制度や割引プランを活用する
- 葬儀保険や事前相談で準備を進める
- 自治体の葬祭費・埋葬料などの制度を確認する
国民健康保険加入者は葬祭費(1〜5万円程度)、社会保険加入者は埋葬料(5万円前後)が支給されるのが一般的です。
申請は原則として死亡から2年以内です。早めに確認しておきましょう。
参列者は、服装・焼香・数珠・言葉遣い・不祝儀袋の基本マナーを押さえて臨みます
真言宗の葬儀マナーは、他宗派と大きくは変わりませんが、焼香回数(3回)や数珠の扱いなどに特徴があります。
まず服装と持ち物を整え、式中は焼香と合掌を静かに行い、言葉遣いや不祝儀袋の表書きにも配慮します。
関連:葬儀のマナーについて詳しく解説
参列時の服装と身だしなみ
結論として、光沢のない黒一色の装いで、装飾は控えめにするのが基本です。
華美な装飾や殺生を連想させる素材は避け、清潔感を重視します。
詳しくは服装ごとのマナー解説も参考にしてください。
参考:葬儀における服装を解説 / 男性の服装 / 女性の服装
- 男女共通:光沢のない黒のフォーマル。派手な柄や装飾を避ける
- 男性:黒のスーツ・白無地ワイシャツ(ボタンダウン不可)・黒無地ネクタイ
- 女性:黒のワンピースまたはアンサンブル・黒パンプス(低〜中ヒール)
- 小物:毛皮・爬虫類革・スエードなどは避ける。メイク・アクセサリーは控えめに
- 髪:目や肩にかからないようまとめ、清潔に整える
焼香の作法(真言宗の基本は3回)
結論として、真言宗では焼香を3回行うのが基本です(会葬者が多い場合は1回に省略される場合もあります)。
焼香の目的は、香を供えて仏への敬意と追悼の気持ちを表すことです。
関連:葬儀における焼香について詳しく解説
- 焼香の順番が来たら、左手に数珠を持ち、静かに祭壇へ進む
- 祭壇の手前で導師・遺族に一礼し、本尊に一礼する
- 右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまむ
- 額のあたりに押しいただき、香炉にくべる(3回繰り返す)
- 遺影に向かって合掌拝礼する
- 下がって導師・遺族に一礼し、静かに席に戻る
真言宗では、戒香・定香・解脱香の三宝を表す意味で3回焼香を行います。
式場の案内がある場合は、そちらの指示に従うのが望ましいです。
数珠(珠数)の作法
結論として、略式数珠でも問題ありませんが、必ず持参するのが望ましいです。
真言宗の本式数珠を持っている場合は、それを使用します。
関連:葬儀における数珠について解説
- 数珠を両手の中指にかけ、そのまま合掌する
- 房は合わせた手の甲の下に垂らす
- 式中は左手で房が下を向くように持つ
- 焼香時は左手に数珠をかけ、右手で抹香をつまむ
- 机や椅子の上に置かず、バッグやポケットにしまう
数珠は仏具であり、家族間でも貸し借りをしないのが礼儀です。
略式でも構いませんが、丁寧に扱いましょう。
言葉や表現のマナー(忌み言葉・重ね言葉を避ける)
結論として、不吉さや不幸の重なりを連想させる表現を避けるのが基本です。
弔意を伝える際は、控えめで落ち着いた言葉を選びましょう。
- 重ね言葉:しばしば/たびたび/再び/繰り返し/重ね重ね など
- 縁起の悪い言葉:終わる/消える/四(死)/九(苦)など
- 死を直接表す言葉:死ぬ/亡くなる/死因を問う など
式中の会話は控えめにし、「心よりお悔やみ申し上げます」など簡潔な言葉が適切です。
関連:葬儀の挨拶はどうしたらいい?例文を交えながら解説
不祝儀袋(香典)の表書き
結論として、白黒の水引(地域により黄白)を使用し、薄墨の筆で書くのが正式です。
香典袋は宗派にかかわらず共通マナーとして扱われます。
関連:葬儀の香典について解説
- 表書き:「御霊前」または「御香典」
- 名前:フルネームを薄墨で記入(ボールペン不可)
- 中袋:住所・氏名・金額はボールペンでも可
- 高額の香典を包む場合は双銀の水引を使用
地域や寺院の習慣で異なる場合もあるため、案内状や葬儀社の指示を確認して準備しましょう。
真言宗の葬儀後は、法要と日々の供養を通じて仏縁を深めていきます
真言宗では、葬儀は終わりではなく「仏と一体となる歩みの始まり」と考えられています。
故人の冥福を祈るのではなく、阿字観(あじかん)に象徴されるように、心を静めて大日如来とつながる修行の一環として法要を営みます。
ここでは、葬儀後に行う主な法要と、自宅での供養のあり方を整理します。
関連:初七日法要とは?葬儀の観点からわかりやすく解説
四十九日法要(中陰法要)は、故人の成仏を確認する大切な節目です
結論として、四十九日法要は、故人が仏の世界に至るまでの「中陰(ちゅういん)」期間を締めくくる重要な儀式です。
真言宗では、この期間に故人が大日如来の加護を受け、密厳浄土へ往生すると考えられています。
法要では読経と焼香を行い、遺族が感謝の心をもって供養を重ねます。
- 日程を命日から49日目に設定(都合により前倒しも可)
- 僧侶に読経を依頼し、位牌・遺影・供花・供物を準備
- 法要後に納骨や会食を行う場合もある
四十九日は、遺族にとっても区切りとなる日です。
この日をもって、白木位牌から本位牌への切り替えを行います。
年忌法要は、感謝と追善の気持ちを形にするために行われます
結論として、年忌法要は、故人を偲びながら仏法を聞く機会として営まれるものです。
真言宗では、初七日・四十九日・百か日・一周忌・三回忌など、節目ごとに供養を重ねることで、遺族自身の心も安定すると考えられます。
関連:葬儀は亡くなってから何日後?日数の目安と流れを解説
- 一周忌(没後1年):故人を偲び、感謝を伝える最初の年忌法要
- 三回忌(没後2年):命日を改めて振り返り、親族で追善供養
- 七回忌・十三回忌:世代を超えてご縁を確認する行事
- 三十三回忌:故人が「先祖」として供養される節目
年忌法要の形式は地域や菩提寺の習慣によって異なりますが、僧侶へのお布施やお供物の準備は葬儀と同様に丁寧に行うことが望ましいです。
自宅での供養(仏壇礼拝・日々の読経)を通じて仏縁を保ちます
結論として、真言宗では、日々の礼拝を通じて故人と仏の教えを結び続けることが供養の基本とされています。
毎朝・毎夕の合掌や読経を行うことで、仏縁を深めると考えられます。
- 仏壇を清潔に保ち、花・水・香を供える
- 毎日または命日に「光明真言」「理趣経」などを読誦する
- 故人の好物などを供える際は、少量・清浄を意識する
- 年忌法要やお彼岸には、家族そろってお参りする
仏壇がない場合は、遺影や位牌の前に花や香を供えるだけでも構いません。
大切なのは「故人を想い、感謝の心を持つ時間を設けること」です。
法要の準備と参列マナーも確認しておきます
結論として、法要も葬儀と同様に、服装・香典・焼香などの基本マナーを守ることが大切です。
僧侶・参列者への配慮を怠らず、静かで落ち着いた雰囲気を心がけましょう。
関連:葬儀における参列とは?列席との違いやマナーを解説
- 服装:黒の喪服を基本に(略喪服でも可)
- 香典:表書きは「御仏前」または「御供物料」
- 焼香:真言宗では3回(会場の指示に従う)
- 持ち物:数珠・ハンカチ・香典袋などを忘れずに
法要後の会食は「お斎(とき)」と呼ばれ、故人と仏法への感謝を分かち合う場です。
招かれた場合は丁寧に応じ、時間を守って参加しましょう。
真言宗の葬儀は、密教の教えに基づき「仏と一体となる」ことを目的とした儀礼です
ここまで見てきたように、真言宗の葬儀は単なる別れの儀式ではなく、仏法の実践の場として位置づけられています。
故人が大日如来の光に包まれて成仏し、遺族がその教えを受け継ぐことが目的です。
関連:葬儀と葬式の違いは何?それぞれの言葉の意味を解説
真言宗の葬儀では、「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」の思想が一貫して流れています。
人は生きながらにして仏となる可能性を持ち、その歩みの中で仏と一体化していくという考え方です。
そのため葬儀は、悲しみを乗り越えて故人と仏のつながりを確認し、遺族自身が「仏の教えを生きる」きっかけを得る時間でもあります。
こうした意味を理解することで、葬儀はより深く心に残るものとなるでしょう。
むすびすでは、宗派ごとの形式だけでなく、その人らしさや想いを大切にした真言宗葬儀の施行を行っています。
詳しくは以下の解説もご覧ください。
関連:葬儀における流れを解説(はじめての方へ) / 葬儀とは何か?由来を交えながら解説
よくある質問
- 真言宗の焼香に作法はありますか。
- 真言宗の焼香は、戒香(かいこう)、定香(じょうこう)、解脱香(げだつこう)を仏法僧の三宝(さんぽう)に捧げる意味で、つまんだ抹香を額のあたりに押しいただいて香炉にくべる焼香を3回行います。ただし、参列者が多いときは1回にする場合もあります。
- 真言宗では友引に葬儀を行っても問題ありませんか。
- 問題ありません。友引は古代中国の占星術を起源とする吉凶占いの一つ「六曜(ろくよう)」の暦注(れきちゅう)であり、仏教や神道の習わしとは関係ありません。友引に葬儀を行うと、故人が友を引くなどといわれ、友引に葬儀を行わない傾向がありますが、仏教では「友引に葬儀を行ってはいけない」という教えはありません。ただし、多くの火葬場では友引を休館日にしています。友引に葬儀を行うか否かについては、家族や親族とよく話し合い、菩提寺や読経を依頼する僧侶と相談しましょう。
- 真言宗の葬儀のお布施は、どのようにお渡しすればいいですか。
- 仏教の葬儀では、お布施をそのまま僧侶に手渡しすることはマナー違反です。「袱紗(ふくさ)」か「切手盆(きってぼん:冠婚葬祭の際にご祝儀やお布施などを渡すとき使用する小さなお盆)」の上にのせて、相手から文字が見えるように渡しましょう。その際、「本日はありがとうございました」など、僧侶へお礼を述べることも大切です。
- 真言宗の葬儀は「家族葬」で行えますか?
- 家族葬で行えます。家族葬は近親者のみで営む葬儀であり、儀式の形態を規定するものではありません。家族葬は弔問客に気を遣うことなく、落ち着いて故人とお別れをすることができます。また、一般的な葬儀に比べて規模が小さくなるため、費用を抑えられるメリットがあります。
- 真言宗の葬儀は「一日葬」で行えますか?
- 一日葬については、同じ真言宗であってもお寺ごとに考え方が異なるため、一日葬ができない場合もあります。どのような葬儀を行いたいかについては、家族や親族とよく話し合い、菩提寺や読経を依頼する僧侶、葬儀社に相談して決めましょう。

この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版