不祝儀とは?葬儀の観点からわかりやすく解説
葬儀に参列するときに欠かせないのが不祝儀です。
不祝儀は、故人を偲び遺族に弔意を伝えるための儀礼であり、葬儀における最も基本的な心の表現といえます。
ただし、香典と不祝儀の関係や包む金額、不祝儀袋の選び方や書き方には細かな決まりがあり、迷う人も少なくありません。
葬儀では宗教や地域の違いによって形式が変わるため、場にふさわしい準備が求められます。
ここでは、葬儀の観点から不祝儀の意味を整理し、宗教・形式・金額・書き方までを体系的に解説します。
葬儀における不祝儀とは、故人を悼み遺族に弔意を伝えるための贈り物
不祝儀とは、葬儀や法要などの弔事で、故人を偲び遺族へ弔意を伝えるために贈る金品を指します。
本来は金銭に限らず、供花や供物などの品物も含む広い概念です。
葬儀の場では、悲しみを共にし、遺族の心を支える行為として重い意味を持ちます。
現在は現金を包む形が中心となり、それが「香典」と呼ばれています。
不祝儀の範囲は広く、香典はその代表的な形にあたる
もともと不祝儀は、葬儀の場に供える花・果物・線香・供物など、故人への供養や遺族への思いやりを表す贈り物全般を指していました。
時代の変化とともに、現金を包む習慣が広まり、これが香典として定着しています。
そのため、香典は不祝儀の一部であり、葬儀で用意する不祝儀の中心的な形といえます。
葬儀では不祝儀を通じて「弔意を形にする」ことが重視される
不祝儀を準備する目的は、形式を整えることではなく、故人を敬い、遺族の悲しみに寄り添うことにあります。
葬儀では、包む金額や品物の内容よりも、弔意が丁寧に伝わるかどうかが重視されます。
不祝儀のあり方を理解しておくことは、葬儀の場で相手への配慮を示すための第一歩といえます。
不祝儀袋は宗教や地域の慣習に合わせて選ぶ
不祝儀袋は、葬儀の宗教や地域の慣習に沿って選ぶことが基本です。
袋の形、水引の色や結び方、表書きの言葉は、いずれも宗教や地域ごとに意味を持っています。
形式を誤ると、意図せず遺族に失礼となる場合があるため、葬儀の信仰や慣習を尊重した選び方が求められます。
不祝儀袋の形式を正しく整えることは、故人と遺族への敬意を示す行為でもあります。
宗教ごとの表書き(上書き)と水引の違いを理解する
葬儀で使用する不祝儀袋は、宗教によって表書きの言葉や水引の形式が異なります。
仏式では「御霊前」「御香典」「御佛前」などを用い、黒白または双銀の結び切りを選びます。
神式では「御玉串料」「御榊料」、キリスト教式では「御花料」「御ミサ料」を使い、水引を省いた白封筒を用いることが多く見られます。
宗派が分からない場合は「御霊前」としておくと広く通用します。
| 表書き(上書き) | 水引の種類 | |
|---|---|---|
| 仏式 | 御霊前・御香典・御佛前 | 黒白・双銀の結び切り |
| 神式 | 御玉串料・御榊料 | 黒白・双銀の結び切り |
| キリスト教式 | 御花料・御ミサ料 | なし(白封筒) |
水引の形と色が示す意味を知って選ぶ
不祝儀袋の水引は、結び方と色に弔意の意味が込められています。
結び切りは「繰り返さないこと」を象徴し、葬儀や法要で用いられます。
色は黒白または銀色が中心ですが、関西地方など一部地域では黄白を使用する場合もあります。
家族葬や直葬のような小規模葬儀に配慮する場合は、家族葬における香典の考え方も参考にすると選びやすくなります。
不祝儀の金額は、関係性と地域の慣習に応じて包む
不祝儀に包む金額は、葬儀の規模や故人との関係性、そして地域の慣習によって異なります。
金額の多寡は礼儀の基準ではなく、弔意を示すための心の表現として捉えることが大切です。
地域や宗派によって相場に差があるため、同じ立場の人や地域の慣習を確認しながら決めるのが適切です。
金額の判断に迷うときは、香典金額の目安ガイドを参照し、状況に合わせて整えるとよいでしょう。
立場別の一般的な金額相場を把握する
不祝儀の金額は、故人との関係の深さに応じて包む金額が変わります。
親族では1万円〜5万円、友人や知人は5千円〜1万円、職場関係者は3千円〜1万円が目安です。
両親や祖父母など身内の葬儀では金額が高くなる傾向がありますが、無理をせず気持ちを込めることが何よりも重要です。
金額そのものよりも、誠意が伝わる範囲で適切に準備する姿勢が求められます。
| 関係性 | 金額の目安 |
|---|---|
| 親族 | 1万円〜5万円 |
| 友人・知人 | 5千円〜1万円 |
| 職場関係 | 3千円〜1万円 |
夫婦や代理参列の場合は状況に合わせて調整する
夫婦で参列する場合は、1人分よりも多めに包むのが目安です。
想定として1.5倍から2倍程度にすると、二人分の弔意を無理なく伝えられます。
代理で出席する場合は、本人の名義で包み、必要に応じて会社名や所属を添えることがあります。
金額を決める際は偶数を避け、地域で定着している相場に合わせると礼を保てます。
地域や葬儀形式による金額の違いを理解する
都市部と地方では不祝儀の相場が異なり、地方の方が高額になる傾向があります。
家族葬や直葬など小規模な葬儀では、一般葬より控えめな金額にとどめる配慮が求められます。
香典辞退が示されている場合は、遺族の意向を優先します。
判断に迷う場合は、香典金額の目安ガイドと周囲の慣習を併せて確認すると、場に沿った金額を決めやすくなります。
不祝儀袋の書き方と渡し方は、葬儀の場で弔意を形に表す礼節
不祝儀袋の書き方や渡し方は、葬儀において故人と遺族への敬意を示す重要な行為です。
文字の書き方一つ、手渡す所作一つにも心を込めることが求められます。
葬儀の場では、形式を整えるだけでなく、落ち着いた振る舞いと静かな態度が弔意を伝える手段となります。
細かな作法を理解し、丁寧に対応することが、遺族への配慮につながります。
表書き・中袋・氏名欄の整え方を理解する
不祝儀袋の表書きは、薄墨の筆ペンを使って丁寧に記すことが基本です。
薄墨には「悲しみの涙で墨が薄れた」という意味があり、故人への哀悼を象徴します。
中袋には「金壱萬円」など漢数字で金額を記し、裏面に住所と氏名を明記します。
封入するお札は人物が裏向き・下向きになるように入れるのが慣習で、これは“悲しみの場では頭を下げる”という意味を持ちます。
受付での渡し方と適切な言葉遣いを意識する
葬儀の受付では、袱紗から不祝儀袋を静かに取り出し、両手で差し出します。
袋の正面を相手側に向け、「このたびはご愁傷さまでございます」と一言添えて深く一礼します。
喪主が不在のときは、後日改めて弔問して手渡すか、やむを得ない場合は現金書留で送付します。
家族葬への参列時は香典対応が異なる場合があるため、家族葬での香典マナーも事前に確認しておくと安心です。
葬儀における不祝儀は、形式の整えと心を込めた弔意の表現
不祝儀は、金額や袋の形式を整える行為であると同時に、故人と遺族を思う気持ちを形にする儀礼です。
葬儀では、形式を守ることが礼節を示す基本であり、そのうえで落ち着いた心をもって弔意を伝える姿勢が求められます。
宗教や地域によって細部は異なりますが、共通して重視されるのは、相手の立場を思いやることです。
形式にとらわれすぎず、心を込めて向き合うことが、不祝儀の本来のあり方といえます。
よくある質問
- 不祝儀と香典の違いは何ですか?
- 不祝儀は弔事全体で贈る金品や供物などを含む広い概念で、香典はその中でも葬儀で現金を包む形式を指します。香典は不祝儀の一部と考えられます。
- 不祝儀の金額はどのように決めればよいですか?
- 故人との関係性や地域の慣習によって異なります。親族は1〜5万円、友人・知人は5千円〜1万円、職場関係では3千円〜1万円が目安です。
- 不祝儀袋の表書きはどの言葉を使えばいいですか?
- 仏式では「御霊前」「御香典」「御佛前」、神式では「御玉串料」、キリスト教式では「御花料」などを使用します。宗派が不明な場合は「御霊前」が無難です。
- 家族葬や直葬の場合も不祝儀を用意するべきですか?
- 遺族が「香典辞退」を明示していない限り、不祝儀を準備するのが丁寧です。香典辞退の意向がある場合は、その意を尊重します。
- 不祝儀袋はどのように渡すのが正しいですか?
- 受付で袱紗から静かに取り出し、袋の正面を相手に向けて両手で差し出します。 「このたびはご愁傷さまでございます」と一言添えて深く一礼します。
この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版