葬儀における袱紗とは?包み方や選び方、渡し方を交えながら解説

マナー・流れ

袱紗(ふくさ)は、古くから冠婚葬祭などの進物の上にかけたり、金品などを包んだりするために用いられてきた儀礼用絹布です。
お葬式ではお布施や香典を袱紗に包んで渡すことが正式とされています。
弔事用の適切な袱紗を持っていない、選び方がわからないという方に向けて、お葬式で選ぶべき袱紗の種類や使い方のマナー、購入時のポイントをご紹介します。

袱紗(ふくさ)とはご香典やご祝儀を包むもの

冠婚葬祭に参列するときの持ち物である「袱紗(ふくさ)」は、香典やご祝儀を包むための方形の儀礼用絹布です。

袱紗は香典を包む仕様のものや挟み込むタイプなどいくつかの種類があります。まずは、袱紗の基本についてご紹介します。

袱紗の役割

袱紗は、冠婚葬祭のお布施や香典、ご祝儀袋などを包む小物です。香典袋やご祝儀袋に中に入れたお札がシワになったり汚れたりしないよう、金封を保護する役割があります。

葬儀では、香典袋を守るだけでなく「丁寧に扱っている」という心遣いを示す意味もあります。受付では香典袋が複数の手に触れるため、折れや汚れ、向きの乱れが起きやすいものです。ポケットや手持ちだけだと角が折れたり、表書きの向きを直す手間が増えることがありますが、袱紗なら取り出してそのまま台のように差し出せます。

このように、袱紗は「香典袋の保護」と「丁寧さの可視化」の両方を果たすアイテムであり、結果として失礼を防ぐことにつながります。

袱紗の形の種類

袱紗の種類

袱紗の形状は金封を「挟むタイプ」と「包むタイプ」に分けられますが、初めて使う場合は「挟むタイプ」、正式な場では「包むタイプ」の袱紗を選ぶのが基本です。

挟むタイプの「金封袱紗」は、二つ折りの長財布のように香典袋を挟み込む仕様なので、袱紗の包み方が不安な方も迷わず使えます。 実際の葬儀現場でも、弔問受付で袱紗から香典を丁寧に取り出す方が多く見られます。慣れていない場合は、挟むタイプを選ぶと安心です。

包むタイプは「袱紗(袱紗)」という言葉の由来である「包むための一枚布」の形状であり、より正式なタイプと言われています。 包むタイプのものは「風呂敷袱紗」「爪つき袱紗」「台つき袱紗」の3種類があり、中でも一番正式とされるのはシンプルな仕様の「風呂敷袱紗」です。

種類 特徴 金額の目安
爪つき袱紗 ・角に爪と留め糸がついており、包んだときに形が崩れにくい
・包んだ袱紗がほどけにくい
・初心者でも使いやすい
約2,000円~5,000円
台つき袱紗 ・香典袋を載せる台がついている
・台に載せてそのまま渡せる
・型崩れを防いでバランスよく包みやすい
約1,500円~3,000円
風呂敷袱紗 ・布一枚のデザイン
・使用後に小さく畳める
・本来正式とされる袱紗
約1,000円〜5,000円
金封袱紗 ・内側にポケットがついた袱紗
・香典袋を挟み込んで持ち運ぶ
・コンパクトで開閉しやすい
約1,000円~2,000円

袱紗の購入は百貨店のフォーマルウェア売り場をはじめ、大型紳士服店、文具店、仏壇仏具店、ホームセンター、100円均一ショップでも取り扱われています。 一般的には5,000円以下で購入できますが、西陣織などの高級品は10,000円以上することもあります。

袱紗は慶事用と弔事用がある

お葬式で使用する袱紗は、寒色系で光沢のない無地のものを選ぶのが基本です。袱紗は慶事と弔事の場面で色や素材の選び方が異なるため、迷った場合は「紫の無地」を選べば、慶弔どちらにも対応でき失礼がありません。

慶事では、結婚式や出産祝いなどお祝いの場にふさわしい明るく華やかな色合い(赤・ピンク・金銀など)や光沢のある素材が用いられます。一方で弔事では、悲しみを表す落ち着いた色調(紫・紺・グレー・緑など)で、光沢を抑えた布地が好まれます。
また、宗教や式の形式によって厳密な色の指定はありませんが、「派手さを避ける」ことが共通のマナーです。キリスト教葬やお別れの会などでも、紫や紺などの落ち着いた色を選べば問題ありません。

場にふさわしい色を選ぶことは、故人への敬意と遺族への配慮を形として表す行為です。紫の袱紗は慶弔両用で使えるため、1枚持っておくと安心です。

用途別 具体的な特徴
慶事用 ・明るく華やかな色合い(赤、ピンク、オレンジ、金銀など)
・光沢のある素材や刺繍が施されたものなどデザインが華やか
弔事用 ・落ち着いた色合い(紫、紺、グレー、緑など)
・光沢のない素材やシンプルなデザイン
慶弔両用 ・紫(薄紫は慶事用)
・光沢が少なく装飾を抑えた無地のシンプルなデザイン

紫でも光沢のある生地や装飾が目立つものや薄紫の袱紗はお祝い事に用いるため、お葬式には適しません。 慶弔両用に使える袱紗を購入するなら、紫で光沢・装飾のない無地のものが適しています。

お葬式の袱紗を選ぶときの3つポイント

お葬式では、寒色系で光沢のない無地の袱紗を選ぶのが基本です。袱紗を選ぶ際は「色」「模様」「香典袋の大きさ」の3点を確認すれば、失礼のない選択ができます。

葬儀の場は格式や宗教形式に関わらず“控えめで整った所作”が求められるためです。華やかな色や模様は弔意を損なう印象を与えるおそれがある一方で、香典袋に対してサイズが合わないと見た目が乱れます。

これら3つの要素を押さえることで、どのような葬儀にも対応できる落ち着いた印象を保つことができます。

確認したい項目 選ぶポイント
・寒色
・慶弔両用の場合は紫がおすすめ
模様 ・基本は無地
・蓮や蘭、菊の花、家紋や名前の刺繍は問題ない
包む香典袋の大きさ ・香典袋のサイズに合わせて袱紗を使い分ける
袱紗の選び方 色

お葬式で使う袱紗の色は、寒色系が一般的です。 お葬式の主役は故人であり、参列者が華やかな装いや持ち物を持参することはマナー違反になるので、派手で明るい色味のものは避けましょう。 黒や紺、グレーは、ブラックフォーマルの色でもあるためおすすめです。 慶弔両用で使えるものを購入する場合は、紫を選びましょう。

模様は無地が一般的

袱紗の模様は無地が一般的です。
素材は光沢がないものを選びましょう。
お葬式は故人を偲ぶ場であるため、たとえ小物であっても光沢のある派手なものは適しません。
弔事用の袱紗の中にも模様が入ったものがあります。
模様入りを選ぶ場合、蓮、菊、蘭などの刺繍や柄が施されたものであれば、弔事の場に適しています。
対して、梅、松、鳳凰、亀など縁起がよい刺繍や柄が入ったものは、慶事用であるためふさわしくありません。

香典袋の大きさによって変える

袱紗は包む香典袋のサイズに合わせて選ぶことが大切です。香典袋が大きすぎたり厚みがある場合、袱紗の形に収まらず包めなかったり、形が崩れてしまうことがあるためです。

たとえば市販の香典袋には「短冊判」「長形」「厚みのある水引立体型」など複数のサイズがあり、それぞれ適した袱紗の大きさが異なります。
包むタイプの袱紗なら、香典袋より一回り大きいサイズ(縦横ともに約2〜3cm大きめ)を選ぶと、きれいに折りたためます。
挟むタイプの金封袱紗の場合は、香典袋がすっきり収まる内寸(縦約20cm×横約12cm前後)が目安です。

形やサイズが合っていれば、受付で香典を出す際にも折れやシワがつかず、見た目にも丁寧な印象を与えられます。

持ち物などお葬式のマナー全般についてはこちら
家族葬についてはこちら

知っておくと安心!お葬式での袱紗の使い方マナー

袱紗の使い方マナー

袱紗は、香典を「包むとき」「渡すとき」に使います。
渡す相手に対して失礼にならないよう、お葬式での袱紗の使い方やマナーも知っておきましょう。

香典を包むときの袱紗の使い方

香典を包むときの袱紗の使い方

袱紗の中でも一般的な「風呂敷袱紗」を例に、使い方をご紹介します。
風呂敷タイプは目印やポケットがないため、初めて袱紗を使う場合は包み方を迷う人も少なくありません。
風呂敷タイプの香典の包み方は、以下のとおりです。

  1. 袱紗を裏向きに置き、ひし形になるように広げる
  2. 香典袋を袱紗の中央からやや右側に置く
  3. 右→下→上の順に袱紗の角を折り、香典袋を包む
  4. 最後に左側の角を折って、香典袋全体を覆うように保護する

きっちりと包みすぎて、香典袋が曲がらないよう注意しましょう。

香典を渡すときの袱紗の使い方

香典を渡すときの袱紗の使い方

お葬式の形式にもよりますが、受付がある場合は受付で香典を渡します。
袱紗から香典袋を取り出し、袱紗を台のようにして香典袋を重ね、両手で手渡します。
このとき、香典袋の表書きが渡す相手から読める向きで差し出すことがマナーです。
香典を渡す際には、お悔やみの言葉を一言添えて手渡しましょう。

【男性用】袱紗の持ち歩き方

女性の場合、お葬式ではバッグを持つことが必須であるため、香典を包んだ袱紗もバッグに入れて持ち運びます。
男性は荷物が多い場合を除いてバッグを持たないことが一般的であるため、スーツのポケットに袱紗を入れても失礼にはあたりません。
ただし、ポケットの中で香典袋が折れ曲がったりしないよう丁寧に扱いましょう。

袱紗以外の持ち物や服装のマナーについてはこちら

袱紗を購入するときの3つのポイント

袱紗を購入するときは以下の3つのポイントを踏まえて選びましょう。

確認する項目 ポイント
袱紗の種類 ・慶事と弔事で併用できるもの
・一般的には風呂敷タイプ
購入する場所 ・「礼服売り場」が確実
例:百貨店、大型紳士服店、仏壇仏具店など
お手入れ方法 ・お手入れ方法が簡単な化学繊維のもの

慶弔どちらも使えるものを選ぶ

これから袱紗を購入する場合、慶事と弔事のどちらにも対応できるものを選ぶことがおすすめです。
紫の無地で光沢のない素材の袱紗は、冠婚葬祭全般で使えます。
また、一般的な袱紗の形は風呂敷型です。
ただし、風呂敷タイプは留め具がついていないため、きれいに香典を包めるか不安な場合には、台つき袱紗が使いやすいです。

購入は礼服売り場が確実

  • 百貨店のフォーマルウエア売り場
  • 仏壇仏具店
  • スーパー、ホームセンター
  • 文具店、雑貨店
  • 100円ショップ

袱紗は、百貨店の礼服売り場をはじめ、大型紳士服店、仏壇仏具店などさまざまな場所で購入できます。
100円均一ショップのものでも問題なく使えます。
ただし、販売店によって扱っているメーカーや袱紗の生地、質感などが異なります。
より品質がよく、長く使えるものを持っておきたい場合には、喪服や靴、バッグなども一式揃えられる礼服売り場で購入することがおすすめです。

簡単にお手入れができるものを選ぶ

袱紗はさまざまな素材で作られており、一般的なものはポリエステルやレーヨンといった化学繊維が使われています。
高級品は正絹が使われている袱紗もあります。
日常的に頻繁に使うものではないため、自宅でも簡単にお手入れできる素材のものを選ぶことがおすすめです。
とくに化学繊維でできたものは、洗濯表示に従って自宅で手洗いもしくは洗濯機で洗えるものが多くあります。
袱紗の保管方法は、素材に関係なく高温多湿や直射日光を避けた風通しのよい場所が適しています。
袱紗は使う場面が少ないので、長期保管に備えて防虫剤の使用がおすすめです。

◆香典の金額の目安については「葬儀の香典について解説」のページでご確認いただけます。

よくある質問

お葬式では袱紗は必要?
必要です。弔事用、あるいは慶弔両用の袱紗を準備しておきましょう。
袱紗は香典袋にシワがついたり、水引きが崩れたりするのを防ぐために使います。
きれいな状態で香典を渡すことは、お葬式の場において故人への敬意や遺族への礼儀を示すことにつながります。
袱紗には慶事用と弔事用があるため、お葬式には弔事用もしくは慶事と弔事のどちらにも兼用できる袱紗を使いましょう。
急な葬儀で袱紗を用意できない場合はどうしたらよい?
ハンカチやスカーフ、風呂敷などで代用できます。
急なお葬式であっても、可能な限り袱紗を用意しましょう。
しかし、どうしても準備が間に合わない場合は、香典袋を包めるサイズのハンカチやスカーフ、風呂敷であれば袱紗の代わりとして使えます。
香典袋を汚したりシワをつけたりしないよう、代用できるもので包んで持参しましょう。
袱紗は色によって使い分けが必要?
暖色は慶事用、寒色は弔事用として使い分けが必要です。
袱紗は慶事か弔事かで適した色が異なります。
お葬式は厳粛な場であり、華やかな装いや持ち物を持つことはマナー違反に当たるため、紫や紺、グレーといった寒色系の色が最適です。
紫であれば、慶弔併用できます。
袱紗は100円均一ショップで購入したものを使ったらマナー違反になる?
マナー違反にはなりません。
100円均一ショップで購入したものであっても、正式な袱紗として使えます。
ただし、一般的な袱紗と比べて種類が少なく、生地の質感や縫製などが劣る場合もあります。
明らかに質が悪かったり、派手な色柄のものはお葬式に適さないため、店頭でデザインをよく確認してから購入しましょう。
香典袋の表書きはどのように書けばよい?
一般的には「御霊前」「御仏前」と書きます。
香典袋の表書きは、宗教や宗派によって異なります。
一般的な仏式の葬儀であれば、「御霊前」「御香奠」と書きます。
そのほか、宗教に合わせて適切な文言を記載しましょう。
浄土真宗 御仏前
神式 御玉串料、御榊料、御神饌料
キリスト教 御花料、御ミサ料(カトリックのみ)

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中川 貴之