日蓮宗の葬儀の特徴は? 葬儀の流れ、マナー・費用などを解説
日蓮宗は、鎌倉新仏教最後の祖師といわれる日蓮聖人が、法華経をよりどころに人々を現世で救済することを説いた宗派です。
日本の仏教で唯一、開祖の名前が宗派名となっていることも特徴といえます。信仰の中心は日蓮聖人の御廟がある身延山久遠寺ですが、日蓮聖人を宗祖と仰ぐ諸宗派を含めて広く日蓮宗と呼ぶことも一般的です。
日蓮宗の葬儀は、法華経を核としつつ他宗派とは異なる形式を持ちます。流れや作法、使われる言葉を知っておくことで、喪主や参列者は当日の対応に迷うことなく臨むことができます。ここでは、日蓮宗の葬儀の特徴、流れ、参列時のマナー、費用の考え方を整理します。

日蓮宗とは、日蓮聖人が法華経をよりどころに開いた仏教の宗派です
日蓮宗は、鎌倉時代中期の建長5年(1253年)に祖師・日蓮聖人によって開かれました。
大乗仏教の代表的な経典である「妙法蓮華経」を根本とし、「南無妙法蓮華経」と唱えることで誰もが法華経の真理と一体となれると説いた点が大きな特徴です。
鎌倉新仏教とは、平安時代末期から鎌倉時代にかけて、それまで天皇や貴族など身分の高い階層を中心に広まっていた仏教に対し、身分の上下を問わずすべての人が救済にあずかれることを説いた諸宗派の総称です。
日蓮聖人は、法然上人(浄土宗)、親鸞聖人(浄土真宗)、栄西禅師(臨済宗)、道元禅師(曹洞宗)のあとに現れたことから、「鎌倉新仏教最後の祖師」と位置づけられます。
ただし日蓮聖人自身は「日蓮はいずれの宗の元祖にもあらず、また末葉にもあらず」と述べ、既成の宗派の枠にとらわれず、仏法の本質をきわめることを目指しました。
当時は飢饉や疫病、天災や争乱が繰り返し起こる時代でしたが、日蓮聖人は「法華経の教えによって現世を浄土に変え、人々を幸福に導ける」と説いたのです。
題目である「南無妙法蓮華経」は「妙法蓮華経に帰依します」という意味を持ち、日蓮聖人はこの題目を唱えることで誰もが救済されるとしました。
現在でも題目を信仰の核心とする人々は多く、日本仏教の中で大きな位置を占めています。
日蓮宗の葬儀の主な4つの特徴
日蓮宗の葬儀は、日蓮聖人の「法華経を信じて心に受け入れ、南無妙法蓮華経を唱えることによって、必ず霊山浄土(お釈迦様が説法を行ったとされる霊鷲山のこと。お釈迦様の悟りの境地、お釈迦様の世界を意味する)におもむいてお釈迦様とともに生きることができる」という教えをよりどころにして営まれます。
ここでは、日蓮宗における葬儀の主な4つの特徴を紹介します。
- 本尊の「大曼荼羅」を掲げる
- 「戒名」ではなく「法号」が与えられる
- 声明曲と鐃鈸による器楽供養を行う
- 参列者全員で題目を唱える
本尊の「大曼荼羅」を掲げる
日蓮宗では、お釈迦様のことを「久遠実成本師釈迦牟尼仏」と言います。
それは人間としての80年間の生涯をもって身は滅すとも、お釈迦様の悟りの真理は永遠不滅であり、その慈悲と救いを示すものが大曼荼羅です。
この大曼荼羅を法会(ほうえ)の中心に本尊として掲げます。
日蓮宗において法会は法華経の世界の再現であり、葬儀は最後の聞法修業(もんぽうしゅぎょう:法華経の教えを聞き、学び、実践する修行)であるとされるため、本尊である大曼荼羅は重要とされています。
「戒名」ではなく「法号」が与えられる
日蓮宗では、故人に「戒名(かいみょう)」ではなく「法号(ほうごう)」が与えられます。
日蓮聖人の「法華経に帰依することが持戒(じかい)にまさる」という教えから、葬儀のとき故人に戒律を授ける儀式はありません。
法号は日蓮聖人の法を受けつぎ、お釈迦様の弟子として新たに生まれ変わることを意味する「日号」を入れる習わしです。
声明曲と鐃鈸による器楽供養を行う
仏教の各宗派には、古くから仏典に節をつけて唱える「声明(しょうみょう)」が伝えられています。
日蓮宗の葬儀では、お釈迦様をお迎えする際の「道場偈(どうじょうげ)」、諸仏を供養する「咒讃(じゅさん)」などの声明曲を、鐃鈸(ニュウハチ)などの器楽とともに唱えます。
声明はお釈迦様と故人(精霊)に法悦を捧げるものとされ、鈸をクルクルと回すなど、ほかの宗派にはない独特の奏し方をするのが特徴です。
参列者全員で題目を唱える
日蓮宗の葬儀では、参列者全員で「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の題目を唱えます。
日蓮聖人は、ひたすら「南無妙法蓮華経」を唱えることによって、誰でも法華経の真理と一体となることができると説きました。
また「お題目を身、口、意の三面にわたって受持に精進することが肝要であり、功徳をつむことである」とも述べています。
日蓮宗の葬儀は、故人に法華経の功徳を回向して成仏を願う場であると同時に、遺族が題目を唱えることで自らも功徳を積む場とされ、参列者全員で唱題(しょうだい)することが大切とされています。
日蓮宗の葬儀の流れは、通夜・葬儀式・法要の三段階で進められます
日蓮宗における葬儀は、法華経の世界を再現する法会として営まれます。
葬儀は仏教の教えを聞き、それを理解し、実践する「最後の聞法修業(もんぽうしゅぎょう)」とされ、故人を法華経の功徳によって霊山浄土へ導くものです。
ここでは、日蓮宗における通夜・葬儀式・葬儀後の法要の流れを紹介します。
通夜
葬儀前夜の法会である通夜の読経(日蓮宗では「どっきょう」と言います)は、法華経二十八品の中から僧侶が故人にふさわしい経を選んで読経します。
故人が女性の場合は、女人の成仏を説く提婆品を読むことが多いとされています。
- 入堂(にゅうどう):遺族・参列者の着席後、導師が入場
- 道場偈(どうじょうげ):諸仏諸尊を招く声明曲
- 三宝礼(さんぽうれい):仏法僧の三宝を礼拝する
- 勧請(かんじょう):久遠釈尊、四菩薩、諸仏諸尊、日蓮聖人をお招きする
- 開経偈(かいきょうげ):法華経の功徳を讃え、信仰を誓う
- 読経(どっきょう):僧侶が故人にふさわしい経を選んで読経
- 祖訓(そくん):御妙版(日蓮聖人の遺文)の一説を拝読
- 唱題(しょうだい):導師と参列者全員で「南無妙法蓮華経」を唱える
- 宝塔偈(ほうとうげ):法華経の功徳を讃え、成仏を祈念
- 回向(えこう):法要の功徳をあらゆる人々に分け与える
- 四誓(しせい):人々を救う四つの誓いを唱える
- 奉送(ぶそう):諸仏や日蓮聖人をお送りする声明
- 題目三唱(だいもくさんしょう):題目を3回唱えて結ぶ
- 閉式
葬儀式
葬儀式は日常の勤行に器楽や声明が加わり、故人に引導が与えられます。
火葬場では「出棺式」「葬場回向」「収骨式」が営まれるのが一般的です。
- 入堂(にゅうどう):遺族・会葬者着席後、導師が入場
- 開式の辞
- 総礼(そうらい):全員で題目を三唱し礼拝
- 道場偈(どうじょうげ):諸仏諸尊を招く声明曲
- 三宝礼(さんぽうれい):仏法僧の三宝を礼拝
- 勧請(かんじょう):久遠釈尊、諸仏諸尊、日蓮聖人をお招きする
- 開経偈(かいきょうげ):法華経の功徳を讃え、信仰を誓う
- 読経(どっきょう):方便品などの諸品を拝読
- 咒讃鐃鈸(しゅさんにゅうはち):声明曲を器楽で唱えて供養
- 開棺(かいかん):棺蓋を3回打ち式文を唱える
- 献供(けんく):茶湯・霊膳・献華・水供を供える
- 引導(いんどう):導師が払子を振り、焼香後に引導を読み上げる
- 弔事・弔電
- 読経(どっきょう):自我偈などを拝読
- 祖訓(そくん):御妙版の一説を拝読
- 唱題(しょうだい):参列者全員で「南無妙法蓮華経」を唱える
- 宝塔偈(ほうとうげ):故人の成仏を祈念
- 回向(えこう):功徳を人々に分け与える
- 四誓(しせい):救済の誓いを唱える
- 三帰(さんき):仏法僧の三宝に帰依を誓う
- 奉送(ぶそう):諸仏や日蓮聖人をお送りする声明
- 閉式の辞・題目三唱
葬儀後の法要
葬儀後には、故人を偲び冥福を祈る「追善法要」が営まれます。
亡くなってから四十九日までの「中陰法要」、その後の「年忌法要」が一般的です。
日蓮聖人は「お題目を身・口・意にわたって受持することが肝要」と説いており、
法要は故人の成仏を祈るとともに、遺族自身が功徳を積む機会でもあります。
【喪主・遺族向け】日蓮宗の葬儀を進めるために確認すべきこと
葬儀は故人が信仰していた宗派に沿って営むことが大切です。
故人が日蓮宗の信徒であった場合、喪主や遺族はまず葬儀儀礼を確認し、準備を進める必要があります。
特に大きな判断基準となるのが「菩提寺(ぼだいじ)」の有無です。
「菩提寺」があるかどうか確認する
菩提寺とは、先祖代々のお墓があり、葬儀や法要を依頼してきたお寺を指します。
菩提寺があるかないかで、葬儀の依頼先や進め方が変わるため、最初に必ず確認しましょう。
不明な場合は家族や親戚に確認することが重要です。
ケース | 対応方法 |
---|---|
菩提寺がある場合 | 菩提寺と葬儀社に連絡する |
菩提寺がない場合 | 葬儀社に連絡する |
菩提寺の有無によっては、葬儀で法号を授かれるかどうかや、納骨の対応が変わることがあります。
そのため、まずは故人とお付き合いのある菩提寺が存在するかを確認することが、葬儀準備の第一歩です。
【菩提寺がある場合】葬儀の手配・依頼のしかた
菩提寺がある場合は、必ず菩提寺と葬儀社の両方に連絡し、僧侶や葬儀社の担当者と相談して進めます。
菩提寺に相談せずに葬儀を行うと、納骨の際にお墓を利用できない可能性があるため注意が必要です。
- 菩提寺と葬儀社に連絡する
- 菩提寺の僧侶、葬儀社の担当者と相談して、葬儀の日程や場所、進め方を決める
葬儀は菩提寺で営む場合と、葬儀場を手配して菩提寺の僧侶をお呼びする場合があります。
葬儀社は自社の葬儀会館や地域の葬儀場を利用しますが、菩提寺から葬儀社を指定されるケースもあります。
菩提寺が遠方にある場合でも、必ず菩提寺へ連絡を行うことが大切です。
【菩提寺が遠方にある場合】葬儀の手配・依頼のしかた
菩提寺が遠方にある場合でも、まずは菩提寺に必ず連絡しましょう。
僧侶が出向けるかどうか、または近隣のお寺や僧侶を紹介してもらえるかによって手配方法が変わります。
- 菩提寺と葬儀社に連絡する
- 菩提寺の僧侶に葬儀を営む場所まで出向いてもらえるか相談する
僧侶が出向ける場合 → 葬儀社にその旨を伝えて日程・場所を調整する
僧侶が出向けないが、同じ宗派のお寺や僧侶を紹介してもらえる場合 → 紹介先と葬儀社に連絡して準備する - 僧侶が出向けず、紹介も難しい場合 → 葬儀社に依頼して同じ日蓮宗の僧侶を手配してもらう
【菩提寺がない場合】葬儀の手配・依頼のしかた
菩提寺がない場合は、まず葬儀社に連絡して葬儀場の手配や日程を相談します。
日蓮宗での葬儀を希望する場合は、その旨を葬儀社に伝えることが大切です。
- 葬儀社に連絡する
- 葬儀社と日程や場所、進め方を相談して決める
葬儀社は日蓮宗の葬儀の式次第や必要な法具を把握していますが、対応や費用は葬儀社によって異なります。
依頼する葬儀社を選ぶ際は、日蓮宗のお寺や僧侶を紹介してもらえるかどうかも確認しておきましょう。
日蓮宗の葬儀を営む場所
菩提寺の有無や距離によって、葬儀を営む場所は異なります。
以下の表は一般的なケースのまとめです。
ケース | 葬儀を営む場所 |
---|---|
菩提寺がある場合 |
|
菩提寺が遠方の場合 |
|
菩提寺がない場合 |
|
菩提寺が近くにある場合は、菩提寺や自宅で葬儀を行うのが基本です。
近年は葬儀社が手配した式場に僧侶をお呼びする形も一般的になっています。
菩提寺が遠方の場合は、菩提寺の僧侶に出向いていただくか、紹介を受けたお寺や僧侶に依頼します。
もし菩提寺からの紹介が難しい場合は、葬儀社に依頼して日蓮宗の僧侶を手配してもらいましょう。
【喪主・遺族向け】日蓮宗の葬儀にかかる費用
日蓮宗の葬儀費用は、依頼する葬儀社や僧侶の対応によって異なります。
全体としては葬儀社への支払い・参列者への対応・僧侶への謝礼(お布施)の3つに大きく分かれ、総額で200万円程度になることもあります。
ここでは、費用の内訳、日蓮宗特有のお布施の目安、費用を抑える方法について整理します。
葬儀費用の内訳と相場
日蓮宗に限らず、葬儀にかかる費用は幅広く、葬儀場や規模によって大きく変わります。
以下の要素が主な内訳です。
- 葬儀を行うための基本費用(式場・祭壇・火葬場など)
- 参列者のための飲食費・香典返し
- お寺への謝礼(お布施・御車代・御膳料など)
葬儀の総額のうち、会場や火葬場などの手配費用が約半分を占めます。
参列者の人数や地域の風習によって接待費用は増減します。
家族葬のように小規模な葬儀では、相対的に費用を抑えることが可能です。
お布施の目安
日蓮宗では、故人に「戒名」ではなく「法号」が授けられます。
法号は「院号+道号+法号(日号)+位号」で構成され、位号が上になるほどお布施額も高くなる傾向にあります。
一般的な法号「信士・信女」の場合、お布施は30万〜50万円が目安です。
加えて、僧侶の人数分のお布施や御車代・御膳料が必要となり、遠方から来てもらう場合は宿泊費も発生します。
また、初七日法要を葬儀当日に行う場合は、その分のお布施(3〜5万円)も併せて渡すことがあります。
内容 | 費用の目安 |
---|---|
導師 | お布施30~50万円、御車代・御膳料 各1~2万円 |
式衆(脇導師) | お布施10~20万円 × 人数、御車代・御膳料 各1~2万円 × 人数 |
法号 | お布施20万円~(位号により変動) |
初七日法要 | お布施3~5万円 |
葬儀の費用を抑えるためのポイント
葬儀費用を抑えるためには、以下のような方法があります。
- 複数の葬儀社から見積もりを取り、比較検討する
- 葬儀の規模や形式(一般葬・家族葬・一日葬など)を再検討する
- 葬儀社の会員制度を利用する
- 生前から葬儀保険に加入して備える
- 自治体の葬祭費や埋葬料制度を確認・利用する
- 香典を葬儀費用に充てる
- 遺産からの支払いを検討する
葬儀社ごとのプランや会員制度の有無によって費用は大きく異なります。
事前に複数の葬儀社から見積もりを取り寄せ、不要な出費を抑える工夫が有効です。
また、葬儀保険は月々の保険料を支払うことで葬儀費用をカバーできる仕組みです。
あらかじめ加入しておくことで遺族の負担を軽減できるため、各社のプランを比較検討しておくと安心です。
さらに、自治体からの葬祭費(国民健康保険加入者の場合1~5万円、社会保険加入者の場合約5万円)が支給される場合もあります。
金額は自治体や保険事務所によって異なるため、早めに確認しておきましょう。
【参列者向け】日蓮宗の葬儀におけるマナー
日蓮宗の葬儀に参列する際は、服装や焼香、数珠の扱いなどの作法を心得ておくことが大切です。
ここでは、参列時に押さえておきたいマナーを具体的に解説します。
参列時の服装と身だしなみ
葬儀に参列する際の服装は、故人への敬意と遺族への配慮を示すために最低限の身だしなみとマナーが必要です。
男女にかかわらず、葬儀で身につけるものは黒色が基本です。
葬儀の主役はあくまでも故人であるため、肌を極端に露出したり、派手な宝飾品を身につけることはマナー違反です。
服装は光沢感のない生地を使用した黒色を選びましょう。
アクセサリーやメイクも光沢のあるものやラメ・グリッター入りは避け、華美にならないようにします。
バッグや財布などの小物類は、毛皮や爬虫類革、スエード加工といった「殺生」を連想させる素材は不適切です。
全体として落ち着いた装いを意識することが求められます。
- ブラックフォーマル(喪服)を着用する
- 髪は目や肩にかからないように整える
- 女性のメイクや装飾は控えめにする
服装の例 | 内容 |
---|---|
男性 |
|
女性 |
|
焼香の作法
日蓮宗の焼香は基本的に3回行います。
ただし参列者が多い場合は1回に省略されることもあります。
- 数珠を左手に持ち、焼香台へ進む
- 導師と遺族に一礼してから祭壇へ進む
- 焼香台の前で合掌する
- 抹香を指でつまみ、額に押しいただいてから香炉にくべる(3回)
- 数珠を左手にかけ、題目「南無妙法蓮華経」を唱えて合掌拝礼する
- 焼香台から下がり、導師と遺族に一礼して席に戻る
珠数の作法
日蓮宗の葬儀では、数珠を正しく持ち、葬儀や法要のあいだ常に手にしておくことが大切です。
数珠は仏事に欠かせない仏具であり、貸し借りをしないことが基本です。
通夜や葬儀に参列する際は、宗派を問わず使える略式数珠が広く用いられます。
お付き合いのある菩提寺が日蓮宗の場合は、本式数珠(本蓮と呼ばれる108玉の数珠)を準備すると望ましいでしょう。
日蓮宗の本式数珠の持ち方は次のとおりです。
- 数珠を2輪に揃え、8の字にねじって両手の中指にかけて合掌する
- 合掌時、右手甲側に房が2本、左手甲側に房が3本くるようにする
式場に入ったら数珠を取り出し、左手に房を下げて持ちます。
焼香時は左手に数珠をかけ、右手で抹香を押しいただいて合掌します。
席を離れる際は椅子や机に置かず、必ずバッグやポケットにしまって持ち歩くのが作法です。
日蓮宗の葬儀における基本マナー
日蓮宗の葬儀では、参列者全員が題目「南無妙法蓮華経」を唱えることが重視されます。
日蓮宗に帰依していない方も、唱題に合わせるか、あるいは黙祷で故人に敬意を示しましょう。
また、葬儀では言葉遣いにも注意が必要です。
「消える」「絶える」などの忌み言葉や、「重ね重ね」「たびたび」といった重ね言葉は避けます。
さらに、「天に召される」といった他宗教の表現も使わず、仏教では「浄土に行く」と表現します。
避けるべき表現 | 具体例 |
---|---|
不幸の重なりを連想させる言葉 | 重ね重ね、たまたま、再び、繰り返し |
縁起が悪い言葉 | 終わる、消える、四(死)、九(苦) |
死を直接的に表す言葉 | 死ぬ、亡くなる、死因の質問 |
日蓮宗では用いない表現 | 戒名(正しくは「法号」) |
不祝儀袋の表書き
不祝儀袋は無地に白黒の水引が基本です。
高額を包む場合は双銀を使うこともでき、関西地方では黄白の水引を用いる例もあります。
- 表書きは「御霊前」または「御香典」を用いる
- 名前は薄墨の筆ペンでフルネームを記す
- 中袋の住所・氏名・金額はボールペンでも可
不祝儀袋の表書きにはボールペンを使わないのが正式です。
中袋に限ってはボールペンの使用も許容されますが、表書きは必ず筆記具を選んで丁寧に記載しましょう。
日蓮宗の特徴、葬儀のマナーや作法を知ろう
日蓮宗は、日本の仏教のなかで浄土真宗と並び、信徒数が最も多い宗派のひとつです。
そのため、日蓮宗の葬儀に参列する機会も少なくありません。
日蓮宗の葬儀には、ほかの宗派とは異なる特徴があります。
たとえば、故人に与えられるのは戒名ではなく法号であること、参列者全員で「南無妙法蓮華経」を唱題することなどです。
こうした特徴や基本マナーを理解しておくことで、初めて参列する方でも戸惑うことなく儀式に臨めます。
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よくある質問
- 日蓮宗以外の宗旨宗派を信仰している場合でも、「南無妙法蓮華経」の題目を必ず唱えなくてはいけませんか。
- 葬儀は故人の死を悼み、最後のお別れをするために参列することが何よりも大切です。日蓮宗における唱題(しょうだい)は、参列者全員が「南無妙法蓮華経」のお題目を唱えることが理想ですが、ほかの宗教や宗派を信仰している方は、黙祷などで故人への追悼や敬意を示しましょう。
- 日蓮宗の葬儀は「家族葬」で行えますか?
- 家族葬で行えます。家族葬は近親者のみで営む葬儀であり、儀式の形態を規定するものではありません。家族葬は弔問客に気を遣うことなく、落ち着いて故人とお別れをすることができます。また、一般的な葬儀に比べて規模が小さくなるため、費用を抑えられるメリットがあります。
- 日蓮宗の葬儀は「一日葬」で行えますか?
- 一日葬については、同じ日蓮宗であってもお寺ごとに考え方が異なるため、一日葬ができない場合もあります。どのような葬儀を行いたいかについては、家族や親族とよく話し合い、菩提寺や読経を依頼する僧侶、葬儀社に相談して決めましょう。

この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版