浄土真宗の特徴は? 葬儀の流れ、マナー・費用などを解説
浄土真宗の葬儀は、亡き人の冥福を祈るのではなく、阿弥陀如来の救いに対する報謝の仏事として営まれるのが特徴です。
そのため、焼香は額にいただかない、線香は立てずに横に寝かせる、清め塩は使わないなど、一般的な葬儀と異なる独自の作法が存在します。
浄土真宗は、親鸞聖人が開いた仏教の宗派であり、日本で最も多くの門徒を有しています。宗派は「真宗十派」と呼ばれ、本願寺派(西本願寺)と大谷派(東本願寺)を中心に、葬儀の流れや読まれるお経、焼香の回数や香典の表書きといった細部に違いがあります。
喪主や遺族にとっては「お布施はいくら用意すべきか」「香典の表書きは何が正しいか」といった金額やマナーの判断が実務上の大きな関心事です。参列者にとっても、正しい焼香の回数や言葉遣いを知っておくことは安心につながります。
本記事では、浄土真宗における葬儀の流れや特徴、参列時のマナーや費用の考え方を整理し、とくに門徒数の多い本願寺派と大谷派の違いにも触れながら解説します。なお、地域や寺院の運用によって細部は異なるため、最終的な確認は必ず菩提寺に行うことが大切です。

目次
浄土真宗とは、阿弥陀如来の救いを信じる仏教の宗派です
浄土真宗は、日本で最も多くの門徒を有する仏教の宗派であり、阿弥陀如来の救いを信じて「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えることを中心とした信仰です。
この教えは、鎌倉時代に親鸞聖人(しんらんしょうにん)によって開かれ、誰もが身分や能力に関係なく救われると説かれています。
ここでは、浄土真宗の歴史と教義の特徴について整理します。
鎌倉時代に生まれた新しい仏教の流れとして成立しました
浄土真宗は、今からおよそ800年前の鎌倉時代初期、元仁元年(1224)ごろに親鸞聖人によって開かれました。
親鸞聖人は、法然聖人の弟子として浄土宗を学び、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えることで、阿弥陀如来の力によって浄土に往生できるとする教えをさらに深めました。
この思想は「他力思想(たりきしそう)」と呼ばれ、阿弥陀如来の慈悲の力によってすべての人が救われるという考えに基づいています。
「他力本願」という教えが中心にあります
浄土真宗の中心的な考えは「他力本願(たりきほんがん)」です。
この言葉は誤って「他人に頼る」という意味に取られることがありますが、実際は「自らの力ではなく、阿弥陀如来の力によって救われる」という信仰を指します。
つまり、財産や地位、知識に関係なく、阿弥陀如来の本願を信じる心を持つことで、誰もが極楽浄土に往生できると説かれています。
日常生活の中で「南無阿弥陀仏」と唱えることが、その信心の実践とされています。
浄土真宗には複数の宗派があり、葬儀の作法にも違いがあります
現在、浄土真宗は全国に広く信仰されており、「真宗十派」と呼ばれる十の宗派に分かれています。
代表的なものには、浄土真宗本願寺派(西本願寺)、真宗大谷派(東本願寺)、真宗高田派(専修寺)、真宗興正派(興正寺)などがあります。
このうち、本願寺派と大谷派が特に門徒数が多く、葬儀の進め方や焼香の作法にも違いが見られます。
そのため、葬儀を行う際は所属する派や菩提寺の方針を確認することが大切です。
浄土真宗は、日本の仏教の中でも「救い」を中心に据えた宗派であり、葬儀においても「故人の成仏を願う場」ではなく、「阿弥陀如来の教えを聞く場(聞法)」として位置づけられています。
この考え方が、他の宗派と大きく異なる点といえます。
浄土真宗の葬儀には、他の宗派とは異なる6つの特徴があります
浄土真宗の葬儀は、故人の冥福を祈る儀式ではなく、阿弥陀如来の教えを聞き、感謝の心をあらためて深める「聞法(もんぼう)」の場とされています。
そのため、葬儀で行われる作法や供物、使われる言葉などは、他の仏教宗派と大きく異なります。
ここでは、浄土真宗における葬儀の主な6つの特徴を紹介します。
末期の水は行いません
臨終の際、他の仏教宗派では故人の口元を潤すために「末期の水(まつごのみず)」を行うことがありますが、浄土真宗ではこの作法を行いません。
これは、阿弥陀如来の救いによって命終と同時に浄土へ往生できると考えられているため、死を穢れや苦しみと捉えず、特別な儀礼を必要としないという教えに基づいています。
枕飾りに水や一膳めし、枕団子を供えません
多くの宗派では、臨終後に故人の枕元に水や一膳めし、枕団子などを供える「枕飾り」が一般的です。
しかし、浄土真宗では阿弥陀如来の本願によってすぐに成仏できると考えるため、旅路を表すような供え物をする必要はないとされています。
特に浄土真宗本願寺派では、枕飾りそのものを設けないことが正式な作法とされています。
死装束を着せることはありません
他の宗派では、故人に白装束を着せて「冥土への旅支度」を整えるとされますが、浄土真宗では死装束を用いません。
念仏を唱えることで、命終とともに阿弥陀如来の浄土に往生すると考えられているため、旅支度を意味する衣装は不要とされています。
この考え方は、「阿弥陀如来の本願によってすでに救いが成就している」という他力信仰の実践に基づいています。
「戒名」ではなく「法名」が授けられます
浄土真宗では、故人に授けられる名前は「戒名」ではなく「法名(ほうみょう)」と呼ばれます。
これは、戒律によって徳を積むのではなく、阿弥陀如来の救いを信じて念仏を称えることで救われるという教義に由来します。
法名は「帰敬式(ききょうしき)」と呼ばれる儀式によって授与され、生前に受けていない場合は、葬儀の前に導師が帰敬式を行って授けます。
位牌は使わず、法名軸や過去帳を祀ります
仏教では故人の象徴として位牌を仏壇に祀ることが多いですが、浄土真宗では位牌を用いません。
位牌は「霊魂が宿る依代(よりしろ)」とされますが、浄土真宗では故人はすでに阿弥陀如来の導きにより成仏していると考えるため、魂が宿る対象を設ける必要がないのです。
その代わりに、「法名軸(ほうみょうじく)」や「過去帳(かこちょう)」を仏壇に祀り、感謝の念を込めて拝みます。
また、故人の写真は仏壇の中ではなく、仏壇の真上を避けた位置に飾るのが望ましいとされています。
清め塩は使いません
清め塩は神道の「死=穢れ」という考え方に由来するもので、日本の葬儀文化に広く浸透しています。
しかし、浄土真宗では死を穢れと捉えず、亡くなった瞬間に阿弥陀如来の本願によって極楽浄土に往生すると説かれています。
そのため、葬儀や通夜のあとに清め塩を使う習慣はなく、むしろ「阿弥陀如来の救いに感謝する」という意味が重視されます。
このように、浄土真宗の葬儀では「死を穢れとせず、往生を成仏の瞬間と捉える」思想が根底にあります。
葬儀における一つ一つの作法にも、その信仰の理念が反映されていることが特徴です。
浄土真宗の葬儀は、阿弥陀如来の教えに感謝する「聞法(もんぼう)」の場として営まれます
浄土真宗の葬儀は、故人の冥福を祈る儀式ではなく、阿弥陀如来の本願に感謝し、浄土での再会を信じるための「おつとめ」として位置づけられています。
通夜や葬儀を通して、故人が阿弥陀如来に導かれて往生したことを確かめ、遺族や参列者が仏法に触れる機会とする点が大きな特徴です。
ここでは、浄土真宗のなかでも門徒数が多い「浄土真宗本願寺派」と「真宗大谷派」における葬儀の流れを中心に整理します。
【浄土真宗本願寺派】通夜と葬儀の流れ
本願寺派の葬儀は、本来「出棺勤行(しゅっかんごんぎょう)」と「葬場勤行(そうばごんぎょう)」に分かれています。
しかし近年では、葬儀場で一連の流れとして行う形が一般的になっています。
阿弥陀如来への感謝と念仏の教えを中心に進められ、儀礼全体を通じて「南無阿弥陀仏」の称名が唱えられます。
本願寺派では「なもあみだぶつ」と発音します。
通夜のおつとめ
- 参列者の入場
- 導師入場
- 勤行(ごんぎょう):「阿弥陀経」または「正信念仏偈(しょうしんねんぶつげ)」を唱和
- 導師による法話
- 導師退場
通夜では、阿弥陀如来の本願に感謝する心を新たにし、故人が往生した喜びを共に味わう意義があります。
葬儀式の流れ
- 参列者の入場
- 導師入場
- 出棺勤行(しゅっかんごんぎょう)
① 「帰三宝偈(きさんぼうげ)」の読経
② 短念仏(「ナマイダ」または「ナンダム」)
③ 回向(えこう):「我説彼尊功徳事」など『十二礼』の読経
④ お別れの言葉(故人を讃えるのではなく、浄土からの導きを願う)
- 葬場勤行(そうじょうごんぎょう)
① 「三奉請(さんぶじょう)」で諸仏菩薩を請う
② 導師焼香と表白(葬儀の主旨を述べる)
③ 「正信偈(しょうしんげ)」の唱和
④ 喪主、遺族、参列者による焼香
⑤ 短念仏と和讃(「本願力あれば…」)の唱和
⑥ 回向:「願以此功徳、平等施一切…」を読誦
- 導師退場
- 喪主挨拶
- 出棺
葬儀の一連の流れは、地域の慣習や寺院の方針によって一部省略される場合もありますが、基本的にはこの形が中心です。
本願寺派の葬儀は、形式よりも「念仏の心」を重視しています。
葬儀の進行や式次第が簡略化されても、「阿弥陀如来の教えを聞く時間を持つ」ことが大切とされています。
真宗大谷派の葬儀は、二部構成で営まれる厳粛なおつとめです
真宗大谷派(東本願寺)の葬儀は、「葬儀式第一」と「葬儀式第二」の二部構成で行われます。
葬儀全体を通して、阿弥陀如来の本願に感謝し、故人の往生を喜ぶ「聞法(もんぼう)」の機会とされています。
火葬の際には「灰葬勤行(はいそうごんぎょう)」、遺骨を自宅に安置する際には「還骨勤行(かんこつごんぎょう)」が行われます。
称名念仏は「なむあみだぶつ」と唱えるのが特徴です。
通夜のおつとめ
- 参列者の入場
- 導師入場
- 勤行:「正信念仏偈(しょうしんねんぶつげ)」を唱和
- 念仏:「南無阿弥陀仏」を唱える
- 回向(えこう):「我説彼尊功徳事」など『十二礼』を読経
- 御文(おふみ)の拝読:門徒へ宛てた法語の朗読
- 導師による法話
- 導師退場
通夜は、故人の冥福を祈るのではなく、阿弥陀如来の本願に感謝し、その教えを聞く時間とされています。
葬儀式の流れ
真宗大谷派の葬儀式は二部構成で、葬儀式第一では故人への感謝を表し、葬儀式第二では浄土への導きを願う内容となっています。
全体を通じて、念仏と読経が中心に行われます。
【葬儀式第一】
- 棺前勤行(かんぜんごんぎょう)
① 総礼(そうらい):導師・参列者全員が合掌・礼拝
② 伽陀(かだ):導師着席の合図
③ 勧衆偈(かんしゅうげ):「帰三宝偈(きさんぼうげ)」を読経
④ 短念仏十遍:「ナマダブ」を10遍唱える
⑤ 回向(えこう):「我説彼尊功徳事」など『十二礼』を読経
⑥ 総礼:再度合掌・礼拝
⑦ 三匝鈴(さんそうれい):葬列の出発を知らせる鈴
⑧ 路念仏(じねんぶつ):「南無阿弥陀仏」を唱和しながら葬列を進む
【葬儀式第二】
- 総礼
- 伽陀・勧衆偈・短念仏
- 回向と総礼
- 三匝鈴・路念仏の唱和
- 導師焼香と表白(葬儀の主旨を述べる)
- 弔辞・正信念仏偈・和讃の唱和
- 回向と総礼
この二部構成によって、葬儀全体が「念仏の実践」と「教えの確認」として意味づけられています。
葬儀の最後には導師が退場し、喪主の挨拶をもって式が結びとなります。
地域の慣習やお寺の方針により、一部省略や順序の変更が行われることもありますが、念仏と感謝の心を中心に据える点は共通しています。
浄土真宗の葬儀を進めるには、菩提寺との関係を確認し、故人の信仰に沿った準備を整えることが大切です
故人が浄土真宗の門徒であっても、喪主や遺族が同じ宗派とは限りません。
しかし、葬儀は故人の信仰を尊重し、その宗派の作法に従って進めることが望ましいとされています。
そのためには、まず菩提寺の有無を確認し、関係のあるお寺がある場合は必ず連絡を取ることが重要です。
以下では、喪主・遺族が葬儀を進めるために行うべき準備と手続きの流れを整理します。
まず「菩提寺」があるかどうかを確認しましょう
菩提寺の有無によって、葬儀の進め方や僧侶の依頼方法が異なります。
菩提寺とは、先祖代々のお墓があり、法要や葬儀をお願いしているお寺のことです。
葬儀の際には、法名(ほうみょう)の授与や納骨の手続きなどで菩提寺の関与が必要になる場合があります。
故人や家族にお付き合いのある菩提寺があるか、早めに確認しましょう。
わからない場合は親族や近しい家族に尋ねることが確実です。
ケース | 対応方法 |
---|---|
菩提寺がある場合 | 菩提寺と葬儀社に連絡する |
菩提寺がない場合 | 葬儀社に連絡し、浄土真宗の僧侶を手配してもらう |
【菩提寺がある場合】葬儀の手配と依頼の流れ
- 菩提寺と葬儀社の両方に連絡する
- 僧侶と葬儀社担当者と日程・会場・進行内容を相談する
菩提寺がある場合、最初にお寺へ連絡し、次に葬儀社へ相談します。
葬儀は菩提寺や自宅で行う場合と、葬儀場を手配して菩提寺の僧侶に来ていただく場合があります。
まれに、菩提寺が葬儀社を指定していることもあるため、独自に決める前に必ず確認しましょう。
なお、菩提寺が遠方にある場合でも、無断で別の葬儀を行うと、のちに納骨が難しくなることがあります。
まず菩提寺に連絡することが最優先です。
【菩提寺が遠方にある場合】僧侶の対応を確認しましょう
- 菩提寺と葬儀社に連絡する
- 僧侶が出向けるかを確認する
- ① 僧侶が出向ける場合 → 葬儀社と日程・場所を調整
② 僧侶が出向けない場合 → 菩提寺に同派のお寺・僧侶を紹介してもらう
③ 紹介も難しい場合 → 葬儀社に同派の僧侶を手配してもらう
菩提寺が遠方でも、まず菩提寺に相談することが基本です。
僧侶が来られない場合、同じ浄土真宗の寺院を紹介してもらえることがあります。
法名は菩提寺で授かり、読経は紹介された僧侶に依頼するなど、役割を分担することも可能です。
もし紹介が難しい場合は、葬儀社を通して同派(本願寺派・大谷派など)の僧侶を紹介してもらいましょう。
【菩提寺がない場合】葬儀社を中心に進めましょう
- 葬儀社に連絡する
- 葬儀社と日程・会場・進行を相談する
菩提寺がない場合は、葬儀社が中心となって葬儀を手配します。
浄土真宗の形式で葬儀を行いたい旨を伝えれば、葬儀社が式次第や必要な法具を準備してくれます。
ただし、葬儀社によって対応の丁寧さや僧侶の紹介体制が異なるため、
同派の僧侶を紹介できるかどうかを確認することが大切です。
信頼できる葬儀社を選ぶことが、故人の信仰を尊重する第一歩となります。
浄土真宗の葬儀を営む場所の目安
菩提寺の有無や距離によって、葬儀を行う場所が変わります。
以下の表に主なケースをまとめます。
ケース | 葬儀を営む場所 |
---|---|
菩提寺がある場合 | ・お付き合いのある菩提寺や自宅 ・葬儀社が手配した葬儀場(菩提寺の僧侶に来ていただく) |
菩提寺が遠方の場合 | ・菩提寺が紹介した浄土真宗のお寺や自宅 ・葬儀社が手配した葬儀場(紹介を受けた僧侶に来ていただく) |
菩提寺がない場合 | ・葬儀社が手配した葬儀場(同派の僧侶を紹介してもらう) |
近年では、葬儀社の式場で僧侶を招いて葬儀を行う形式が主流になっています。
一方で、菩提寺が近くにある場合は、従来どおりお寺や自宅で葬儀を営むこともあります。
重要なのは、故人の信仰していた派やお寺の方針に沿って準備を進めることです。
不明点がある場合は、菩提寺または葬儀社の担当者に早めに相談すると安心です。
浄土真宗の葬儀費用は、葬儀社や僧侶の対応によって大きく変わります
浄土真宗の葬儀にかかる費用は、葬儀社のプラン内容や葬儀の規模、依頼する僧侶の条件によって異なります。
一般的な葬儀費用の総額は100万円〜200万円程度になることが多く、葬儀場の使用料や祭壇費用、僧侶へのお布施などが主な内訳です。
ここでは、葬儀の費用の内訳と相場、お布施の目安、費用を抑えるための工夫について整理します。
葬儀費用の内訳と相場
葬儀にかかる費用は、葬儀場の使用料や祭壇などの基本的な費用に加え、僧侶へのお布施、参列者へのおもてなし費用などが含まれます。
規模や形式によって変動しますが、全体の目安は次のようになります。
主な費用項目 | 内容 | 費用の目安 |
---|---|---|
葬儀関連費用 | 葬儀場、祭壇、火葬場の利用、搬送など | 50〜100万円程度 |
参列者対応費用 | 会食(通夜振る舞い)、返礼品、香典返しなど | 20〜50万円程度 |
お布施・寺院関連費用 | 読経への謝礼、御車代、御膳料など | 30〜60万円程度 |
葬儀費用全体の半分ほどを占めるのは葬儀場や祭壇などの手配費用です。
また、参列者の人数や地域の慣習によって、飲食や香典返しにかかる費用も変動します。
家族葬のように小規模で行う場合は、全体費用を抑えやすい傾向があります。
お布施の目安と内訳
浄土真宗のお布施の相場は、一般的に30万円〜50万円程度が目安です。
お布施は読経への謝礼として僧侶にお渡しするものであり、「法名料」という名目はありません。
僧侶の人数や距離に応じて、御車代(交通費)や御膳料(通夜振る舞いを辞退された場合)を別途お渡しします。
近年は葬儀と同日に初七日法要を行うケースも多く、その際は初七日のお布施をまとめて包むこともあります。
項目 | 内容 | 費用の目安 |
---|---|---|
導師 | 葬儀・通夜の読経を行う僧侶 | お布施30〜50万円、御車代・御膳料各1〜2万円 |
脇導師 | 補助として同席する僧侶(人数による) | お布施10〜20万円×人数、御車代・御膳料各1〜2万円×人数 |
法名 | 授与に関する費用は不要(法名料は存在しない) | なし |
初七日法要 | 葬儀当日に併せて行う場合が多い | お布施3〜5万円程度 |
お布施の金額には明確な決まりがなく、地域やお寺の方針によって異なります。
金額に迷う場合は、直接僧侶や菩提寺に確認すると安心です。
金封には「お布施」と表書きをし、水引は黒白または双銀を用いるのが一般的です。
葬儀費用を抑えるためのポイント
葬儀費用を無理なく抑えるためには、事前の比較と準備が重要です。
以下の方法を参考にして、必要な費用を見極めながら準備を進めましょう。
- 複数の葬儀社から見積もりを取り、プラン内容を比較する
- 葬儀の規模(家族葬・一般葬など)を早めに決める
- 葬儀社の会員制度や割引プランを活用する
- 生前に葬儀保険へ加入し、備えを整える
- 自治体の葬祭扶助・葬祭費補助金制度を確認する
- 香典を葬儀費用に充てる
- 相続財産から費用を支出する場合は、領収書を保管する
葬儀保険は、毎月の掛け金を抑えながら葬儀費用を補える保険です。
また、自治体によっては葬祭費補助金制度があり、国民健康保険加入者は亡くなってから2年以内に申請すれば、1〜5万円程度の葬祭費が支給される場合があります。
社会保険加入者の場合も、5万円程度の埋葬料が受け取れるケースがあります。
支給金額や手続きは自治体によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。
このように、浄土真宗の葬儀費用は宗派特有の項目もありますが、事前の相談と比較によって無理のない準備が可能です。
お布施や葬儀社費用の相場を把握し、故人の信仰を大切にしながら、適切な形で葬儀を進めましょう。
【参列者向け】浄土真宗の葬儀では、静かに敬意を示し、教えに沿った作法を守ることが大切です
結論として、浄土真宗の葬儀では、派手さを避け、落ち着いた所作で故人と遺族に敬意を示すことが基本です。
補足として、服装・焼香・言葉づかいなど、すべてにおいて「簡素・敬意・静粛」を意識することが求められます。
根拠として、浄土真宗は冥福を祈る葬儀ではなく、阿弥陀如来の教えを聞く「聞法(もんぼう)」の場として位置づけられているためです。
判断視点として、宗派による違いを意識しつつ、案内や僧侶の指示に従う姿勢を大切にしましょう。
参列時の服装と身だしなみ
結論として、黒を基調にした光沢のない喪服を着用し、装飾を控えるのが基本です。
補足として、男女問わず「黒」を基調とし、派手な宝飾品や露出の多い服装は避けましょう。
根拠は、葬儀は故人を主役とし、参列者は目立たず静かに弔意を示すことが礼儀とされるためです。
判断視点として、地域や会場の形式に合わせ、控えめで清潔感のある装いを心がけます。
- ブラックフォーマル(喪服)を着用する
- 髪は目や肩にかからないようにまとめる
- 女性のメイクや装飾は控えめにする
性別 | 服装の例 |
---|---|
男性 | ダブルまたはシングルのブラックフォーマル、白無地のワイシャツ(ボタンダウンは不可)、光沢のない黒ネクタイ、黒の靴と靴下 |
女性 | 黒の光沢がないワンピースまたはアンサンブル、光沢のない黒パンプス(ヒール3〜5cm)、黒ストッキング(30デニール以下) |
アクセサリーやバッグなどの小物も、派手な装飾を避け、毛皮や爬虫類系の革など「殺生」を連想させる素材は使用しません。
焼香の作法
結論として、浄土真宗の焼香は「押しいただかず、静かに香炉にくべる」のが基本です。
補足として、本願寺派と大谷派では焼香の回数が異なりますが、いずれも抹香を額に押しいただく所作は行いません。
根拠として、焼香は心身を清める行為であり、故人の冥福を祈るためのものではないとされているためです。
判断視点として、参列時には僧侶や葬儀社の案内に従い、落ち着いて行うことが望まれます。
宗派 | 焼香の回数 | 押しいただく動作 | 線香の扱い |
---|---|---|---|
浄土真宗本願寺派(西本願寺) | 1回くべる | 行わない | 本数の決まりはなく、立てずに横にして供える |
真宗大谷派(東本願寺) | 2回くべる | 行わない |
焼香の基本手順(共通)
- 左手に数珠を持ち、導師と遺族に一礼して進む
- 阿弥陀如来の前で一礼する
- 右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまむ
- 押しいただかずに香炉へくべる(派により1回または2回)
- 合掌拝礼し、一礼して席に戻る
珠数の作法
結論として、数珠は宗派に合わせた正しい持ち方で左手に持ち、常に身につけておくことが礼儀です。
補足として、浄土真宗の本式数珠は「門徒数珠」と呼ばれ、男女で形や持ち方が異なります。
根拠は、数珠が仏と人とのつながりを象徴する法具であり、信仰の証とされるためです。
判断視点として、略式数珠を使用しても差し支えありませんが、扱いは丁寧に行うことが求められます。
- 浄土真宗本願寺派(男性):合掌した両手の親指と人差し指の間に掛け、房を下に垂らす
- 浄土真宗本願寺派(女性):輪を二重に巻き、房を両手の甲の下に垂らす
- 真宗大谷派(男性):合掌した両手の親指と人差し指の間に掛け、房を左側に垂らす
- 真宗大谷派(女性):親玉部分が上になるように掛け、房を左手の甲に垂らす
式中は常に左手に持ち、テーブルや椅子の上に置かないことが基本です。
焼香直前に取り出すのは無作法とされるため、式が始まる前に準備しておきましょう。
数珠は仏具であり、親しい間柄であっても貸し借りはしません。
浄土真宗の葬儀における言葉や表現のマナー
結論として、浄土真宗では「冥福」や「冥土」などの表現は使わず、教義に沿った言葉を選ぶことが求められます。
補足として、「往生」「浄土」「御仏前」といった用語が適切です。
根拠として、浄土真宗では亡くなった瞬間に往生し成仏するとされ、死を穢れではなく阿弥陀如来の救いとして捉えるためです。
判断視点として、弔意を伝える場合は「心よりお悔やみ申し上げます」などの中立的表現を用いるのが無難です。
区分 | 避ける言葉 | 適切な表現 |
---|---|---|
不幸を重ねる言葉 | 重ね重ね・たまたま・再び・繰り返し | 単語を繰り返さない表現にする |
縁起の悪い言葉 | 終わる・消える・四(死)・九(苦) | 区切る・収めるなど柔らかい言葉を使用 |
死を直接表す言葉 | 死ぬ・亡くなる・死因などの質問 | ご逝去・お亡くなりなど婉曲表現 |
浄土真宗で使わない言葉 | 冥福・戒名・御霊前・他界・冥土 | 往生・法名・御仏前・浄土 |
不祝儀袋の表書き
結論として、表書きは「御仏前」とし、「御霊前」は使用しません。
補足として、水引は白黒または地域により黄白を用い、筆記は薄墨の筆ペンが正式です。
根拠は、浄土真宗では亡くなった直後に成仏するとされ、「霊前」という考えが教義に合わないためです。
判断視点として、中袋にはボールペンで住所や金額を明記しても問題ありません。
項目 | 推奨される表記・選び方 | 避けるべき表記・注意点 |
---|---|---|
表書き | 御仏前(基本)/御香典(可) | 御霊前(不可) |
水引 | 白黒または黄白(高額時は双銀も可) | 派手な意匠や慶事用の水引 |
記名 | 薄墨の筆ペンでフルネーム記載 | 表書きにボールペンを使用 |
中袋 | 住所・氏名・金額を明記(ボールペン可) | 未記入・金額が不明のまま渡す |
まとめとして、浄土真宗の葬儀におけるマナーは、形式よりも心の姿勢と教義理解が重視されます。
静かで控えめな態度を保つことが、最も大切な弔意の表現といえます。
浄土真宗の特徴と葬儀のマナーを理解し、落ち着いて故人を見送りましょう
結論として、浄土真宗の葬儀は「故人の冥福を祈る場」ではなく、阿弥陀如来の教えを聞き、命の尊さを見つめ直す「聞法(もんぼう)」の場として営まれます。
補足として、他の宗派と異なり「戒名」ではなく「法名」が授けられる点や、「清め塩を使わない」「押しいただかない焼香」など独自の作法があるのが特徴です。
根拠は、浄土真宗が「阿弥陀如来の本願により、すべての人が平等に救われる」という他力本願の教えを重んじる宗派であるためです。
判断視点として、作法の細部にとらわれすぎず、故人と向き合い、感謝と敬意の心をもって臨むことが大切です。
浄土真宗は、日本でもっとも多くの門徒を有する仏教の宗派です。
代表的な「浄土真宗本願寺派(西本願寺)」や「真宗大谷派(東本願寺)」をはじめ、「真宗十派」と呼ばれる複数の宗派があります。
そのため、地域やお寺によって儀礼の手順に違いがありますが、共通して「念仏の教え」を軸としています。
葬儀に参列する際は、宗派ごとの違いに配慮しながらも、静かな姿勢で臨むことが何よりの礼節といえます。
浄土真宗の葬儀に参列する機会は多くありますが、基本的なマナーを知っておくことで、初めてでも安心して対応できます。
焼香や数珠の扱い、言葉遣いなど、宗派の教えに沿った所作を守ることで、遺族にも誠実な印象を与えることができます。
お葬式のむすびすでは、浄土真宗の各派をはじめ、さまざまな宗教・宗派に対応した葬儀プランをご用意しています。
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よくある質問
- 真言宗の焼香に作法はありますか。
- 真言宗の焼香は、戒香(かいこう)、定香(じょうこう)、解脱香(げだつこう)を仏法僧の三宝(さんぽう)に捧げる意味で、つまんだ抹香を額のあたりに押しいただいて香炉にくべる焼香を3回行います。ただし、参列者が多いときは1回にする場合もあります。
- 真言宗では友引に葬儀を行っても問題ありませんか。
- 問題ありません。友引は古代中国の占星術を起源とする吉凶占いの一つ「六曜(ろくよう)」の暦注(れきちゅう)であり、仏教や神道の習わしとは関係ありません。友引に葬儀を行うと、故人が友を引くなどといわれ、友引に葬儀を行わない傾向がありますが、仏教では「友引に葬儀を行ってはいけない」という教えはありません。ただし、多くの火葬場では友引を休館日にしています。友引に葬儀を行うか否かについては、家族や親族とよく話し合い、菩提寺や読経を依頼する僧侶と相談しましょう。
- 真言宗の葬儀のお布施は、どのようにお渡しすればいいですか。
- 仏教の葬儀では、お布施をそのまま僧侶に手渡しすることはマナー違反です。「袱紗(ふくさ)」か「切手盆(きってぼん:冠婚葬祭の際にご祝儀やお布施などを渡すとき使用する小さなお盆)」の上にのせて、相手から文字が見えるように渡しましょう。その際、「本日はありがとうございました」など、僧侶へお礼を述べることも大切です。
- 真言宗の葬儀は「家族葬」で行えますか?
- 家族葬で行えます。家族葬は近親者のみで営む葬儀であり、儀式の形態を規定するものではありません。家族葬は弔問客に気を遣うことなく、落ち着いて故人とお別れをすることができます。また、一般的な葬儀に比べて規模が小さくなるため、費用を抑えられるメリットがあります。
- 真言宗の葬儀は「一日葬」で行えますか?
- 一日葬については、同じ真言宗であってもお寺ごとに考え方が異なるため、一日葬ができない場合もあります。どのような葬儀を行いたいかについては、家族や親族とよく話し合い、菩提寺や読経を依頼する僧侶、葬儀社に相談して決めましょう。

この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版