葬儀における仏壇の扱い方を解説|扉・花・お供え・飾りの作法と宗派の違い

マナー・流れ

葬儀のとき、仏壇の扉を閉じるべきか、花やお供えをどう整えるべきかは、多くの人が迷う点です。
宗派や地域の考え方により所作は異なりますが、いずれも故人を敬い静かに祈るための作法として受け継がれてきました。
本稿では、葬儀における仏壇の扱い方を宗派別の違いとともに整理し、花・飾り・お供えの整え方、仏壇がない場合の対応までを解説します。

葬儀時の仏壇は「閉じておく」のが一般的です

家族に不幸があったとき、多くの家庭では仏壇の扉を静かに閉じます。
葬儀をどこで行うかに関係なく、喪の期間に本尊をお隠しし、供養の中心を故人のための祭壇へ移す礼節として位置づけられています。
仏壇を閉じる所作は形式ではなく、故人が仏弟子として迎え入れられるまでの期間を丁寧に過ごす宗教的意味を持ちます。
仏事全般の流れを理解しておくと、こうした作法の意図も整理しやすくなります。葬儀のマナーについて詳しく解説を参照すると安心です。

仏壇を閉じる意味と背景

故人はまだ成仏の前段階にあると捉えられるため、仏壇の本尊を一時的にお隠しし、祈りの焦点を故人へ向けます。
日常礼拝を一旦控えることで、家の中を静め、葬送の儀礼に心を傾けるための区切りが生まれます。

閉じる時期と開ける目安

目安としては、通夜の前後に仏壇を閉め、葬儀から忌明けまで静かに保ちます。
忌明けを迎えたのち、仏壇を開いて日常の礼拝を再開し、供花や供物も平常運用へ戻していきます。
全体の流れを知りたい場合は葬儀の所要時間の目安は? 葬儀の流れ・日程の決め方をご紹介を参考にすると理解が深まります。

仏壇を閉じない宗派がある

すべての宗派が閉扉を行うわけではありません。
浄土真宗では死を穢れと捉えず、阿弥陀如来の慈悲による往生を重んじるため、葬儀中も仏壇を閉じないのが原則です。
一方で曹洞宗や真言宗では閉扉が一般的で、供養の焦点化を意図します。

宗派によって仏壇の扱いは異なります

仏壇を閉じるか開けるかという所作の違いは、各宗派がもつ死生観や教義の違いに基づきます。
代表的な三宗派の考え方を対比すると、意図と意味の違いが整理しやすくなります。

曹洞宗・真言宗・浄土真宗の違い

宗派 仏壇の扱い 理由・背景 開扉の目安
曹洞宗 葬儀中は閉じる 故人を仏弟子として導く過程を重視し、本尊を一時的にお隠しして供養の中心を故人へ 忌明け後に日常礼拝へ戻す
真言宗 葬儀中は閉じる 密教の世界観に基づき、供養の焦点を故人に集めるため本尊を覆う 忌明け後に日常礼拝へ戻す
浄土真宗 閉じない 往生の教えにより、阿弥陀如来を開扉したまま礼拝する 閉扉の習慣自体を採らない

宗派ごとの作法の理解を深めたい場合は曹洞宗の特徴は? 葬儀の流れ、儀礼、マナーや費用についても解説浄土真宗の特徴は? 葬儀の流れ、マナー・費用などを解説を参考にすると比較しやすいです。

教義上の背景と「閉じる・開ける」の意味

曹洞宗や真言宗は、葬儀を通じて故人が仏弟子として受戒し悟りへ向かう過程を重んじ、故人に祈りを集中させます。
浄土真宗は阿弥陀如来の救いによって人は往生すると捉えるため、開扉のまま礼拝します。
背景をさらに理解するには仏教の葬儀とは? 日本の仏教における葬儀の意味や流れ、他宗教との違いを解説が役立ちます。

葬儀時の仏壇の花・飾り・お供えの整え方

葬儀の期間中、仏壇の花やお供えは日常時とは異なり、清らかで落ち着いた雰囲気に整えることが大切です。華やかさや豪華さよりも、静かに故人をしのび、祈りを捧げる空間としての調和を意識します。この時期は家の中が喪に包まれているため、仏壇の飾りや供物も控えめにまとめるのが一般的です。仏壇の整え方は、宗派や地域によって細部が異なるものの、白を基調とした花香・灯明・水を中心としたお供えという基本は共通しています。仏壇周りを整えることは、形式的な準備ではなく、故人を敬い、自身の心を整える行為でもあります。葬儀全体の花や供物の考え方は葬儀におけるお花(供花)について解説でも確認できます。

花は白を基調に落ち着いた色でまとめる

葬儀の期間中に仏壇へ供える花は、白を中心に落ち着いた色調でまとめるのが基本です。白菊、トルコキキョウ、ユリ、カーネーションなど、香りが穏やかで日持ちする花がよく選ばれます。差し色を入れる場合は、淡い紫や薄桃色などの柔らかい色を用い、派手な色合いは避けます。供花は左右対称に配置し、本尊や位牌の高さを覆わないように整えることが礼を保つ要点です。また、水替えや枯れた花の取り換えをこまめに行い、常に清浄な状態を保ちます。これは、葬儀の場だけでなく、仏教における清浄の徳を象徴する作法でもあります。

仏壇に供える花の選び方(代表例)

花の種類 意味・特徴 注意点
長持ちし、最も一般的。清らかさの象徴。 強い香りの品種は避ける。
トルコキキョウ 柔らかく上品な印象で洋風仏壇にも合う。 花びらが傷みやすいため注意。
ユリ 高貴さと再生を象徴。 香りの強い種類は控える。
カーネーション 優しい印象を与える。 濃い赤など派手な色は避ける。

仏壇の花を整えることは、故人の安らぎを祈る気持ちを形にする行為でもあります。通夜や葬儀で使用する供花との違いを理解しておくと、全体の調和が取りやすくなります。供花や生花の選び方は葬儀 花代について解説も参考になります。

お供えは控えめに、香・花・灯明を中心に

葬儀中の仏壇では、香・花・灯明を基本としたシンプルなお供えが望ましいとされています。この三つは「三具足(みつぐそく)」と呼ばれ、仏教における供養の基本要素です。香は心身を清め、花は無常を象徴し、灯明は智慧を照らす意味を持ちます。

葬儀の期間中は、果物や菓子類などの日常的な供物をいったん下げ、仏壇や祭壇を清らかに整えます。香炉・花立・燭台を仏壇の正面に配置し、火の扱いには十分注意を払います。また、香りの強い線香やアロマは避け、一般的な沈香・白檀系の香を用いるのが適切です。

葬儀中に避けたほうがよい供物の例

  • 肉・魚などの生臭物
  • 酒や缶詰など、華やかな包装のもの
  • 香りの強い果物(メロン、マンゴーなど)
  • 菓子類の大量供えや、カラフルな包装品

これらの供物は、忌明けである四十九日を過ぎたあとに、少しずつ日常の形へ戻していきます。四十九日は、故人が成仏して仏の弟子として迎え入れられる節目の日とされており、この時期を過ぎてから、果物や菓子を加えるなど穏やかに戻すのが自然です。

葬儀の期間中に仏壇を整えることは、単なる飾り付けではなく、心を静め、故人への感謝を形にする行為です。控えめな供花とお供えの整った仏壇は、葬儀全体を穏やかに包み、家族の心を落ち着かせる役割を果たします。

仏壇がない場合の供養と作法

仏壇を持たない家庭でも、故人の遺影と供花を中心に小さな祈りの場を整えることで、葬儀中の供養は丁寧に行えます。
枕飾りや後飾り壇は一時的な仏壇として機能し、葬儀から法要までの期間に心を落ち着かせる役割を果たします。

葬儀中の代わりとして「故人写真+供花」で対応する

白布を敷いた台に遺影を据え、左右に花立・香炉・燭台を置くのが基本です。
供花は白を基調に、供物は簡素に整えます。
葬儀の段取りを理解しておくと、こうした準備も進めやすくなります。葬儀における流れを解説(はじめての方へ)が参考になります。

後飾り壇は葬儀社が用意できる場合も多く、白木の簡素な造りで宗派を問わず整えやすいのが特徴です。
葬儀後の手続きや流れを把握したいときは逝去から葬儀を終えるまでに必要な手続きについて詳しく解説を確認すると安心です。

葬儀後の仏壇準備と時期の目安

新たに仏壇を迎える場合、忌明けの節目を目安に検討する家庭が多い傾向があります。
明確な決まりはないため、家族の気持ちが整ってから無理のない時期に準備して問題ありません。

住環境に合わせて上置き型やモダン仏壇を選ぶ方法も一般的になっています。
本尊や脇侍の種類は宗派で異なるため、購入前に菩提寺へ確認し、適切なご本尊をお迎えください。
宗派の葬儀作法を知るには仏教の葬儀とは? 日本の仏教における葬儀の意味や流れが参考になります。

仏壇の有無に関わらず、供養の心を大切に

仏壇を閉じるかどうかは、宗派の教えと家の慣習に基づいて判断します。
浄土真宗のように閉扉を行わない宗派もあり、いずれの形も故人を敬い静かに祈るという目的は共通です。

仏壇がない場合でも、後飾り壇や供花で祈りの場を整えれば、礼を尽くした供養は可能です。
重要なのは形式ではなく、静かに手を合わせる気持ちを保つことです。

細部の作法や時期に迷うときは、菩提寺や葬儀社へ確認しておくと安心です。
専門家の助言を得ながら、家の信仰に即した落ち着いた弔いを進めてください。

よくある質問

葬儀のとき、仏壇の扉はなぜ閉じるのですか?
葬儀の期間は、故人がまだ仏の弟子として迎え入れられていない段階とされるためです。 本尊を一時的にお隠しし、供養の中心を故人の祭壇に移すことで、静かに祈りを捧げる意味があります。
仏壇を閉じない宗派もありますか?
はい。浄土真宗では、阿弥陀如来の慈悲のもとですでに往生していると考えるため、仏壇を閉じずに礼拝します。 一方で、曹洞宗や真言宗では葬儀中は閉扉を基本とします。
仏壇がない場合、葬儀中はどうすればいいですか?
後飾り壇や枕飾りを設け、故人の写真と供花を中心に整えます。 仏壇がなくても、静かに手を合わせる姿勢が最も大切です。
仏壇に供える花はどんな種類がよいですか?
白を基調とした菊・トルコキキョウ・ユリなどが一般的です。 香りが強すぎる花や派手な色は避け、清らかで落ち着いた印象に整えましょう。
新しく仏壇を用意する時期はいつが良いですか?
多くの家庭では、四十九日法要の前後に検討します。 この時期は故人が成仏する節目とされ、日常の礼拝を再開する自然なタイミングです。

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中川 貴之