葬祭プランナーとは何か?役割・必要な力・未来像まで解説

葬祭プランナーとは、葬儀の企画から式の進行までを一貫して担う専門職です。地域の風習や宗教的背景を踏まえ、ご遺族の価値観や状況を的確に汲み取りながら、その人らしい送り方を形にしていく高い提案力と判断力が求められます。

葬儀業界には「葬祭ディレクター」という資格制度こそありますが、実際にご遺族の想いをかたちにする「葬祭プランナー」という存在について、その本質や役割が語られる機会はほとんどありません。この記事では、葬祭プランナーという職業について、初めての方にもわかりやすく、資格や肩書きでは測れない、本当に信頼できる葬祭プランナーの姿と、見極めるための視点について解説します。

葬祭プランナーの役割と「葬祭ディレクター」との違い

「葬祭ディレクター」とは、全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)が平成8年に厚生労働省の認可を得て創設した技能資格です。公的には「葬儀を企画・運営・進行する専門家」とされていますが、実際の資格試験は以下の4科目で構成されています。

  • 学科(宗教知識や地域の風習など)
  • 幕張(木のテーブルに白幕を張るなどの技術)
  • 接遇(お客様対応)
  • 司会(式の進行)

これらはいずれも葬儀現場で必要な実務的スキルを評価するものであり、「企画」や「プランニング」といった要素は含まれていません。 そのため、葬祭プランナーは葬祭ディレクターの上位互換的な存在とも言えます。 例えるなら、テレビ番組制作において、葬祭ディレクターは「現場のディレクター」や「AD」であり、葬祭プランナーは「監督」「演出家」「脚本家」です。 というように、全体を設計・指揮する立場にあるのが葬祭プランナーです。

葬祭プランナーに求められる知識・スキル・考え方

一般的に「葬祭プランナー」という言葉は、遺体の搬送や式場手配、祭壇準備や役所手続きなど、葬儀にまつわる実務を幅広く担うスタッフを指すことがあります。

しかし、本来の葬祭プランナーとは、そうした「段取りをこなすこと」だけではありません。

むしろ、そのご家族にとって何が本当に必要かを見極め、ときに既存の形式や慣習からも離れて、「その人らしい送り方とは何か」を一緒に考え抜く、そうした本質を支える力こそが、本来の葬祭プランナーの姿です。

葬祭プランナーとして活躍するには、以下のような幅広い知識と想像力が求められます。

  • さまざまな宗教に関する理解(古今東西を問わず)
  • 式場など、場所に関する知識
  • 地域ごとの風習や慣習への理解
  • 上記をふまえた企画力と創造力

単なる形式の踏襲ではなく、背景や意味を理解した上で、お客様に最適な葬儀を提案することが重要です。

葬祭プランナーの判断力と良識

葬儀には、「こうあるべき」「こうすべき」といった従来の常識やルールが多く存在します。しかし、葬祭プランナーには、それらを本質に立ち返って見直す力、つまり決まり事を疑い、本当に必要なことを見極める力が求められます。

言い換えれば、「Noと言える力」です。

過去の知見や慣習を否定するわけではありません。ただし、それが本質から外れている場合には、あえて別の道を示す勇気が必要です。 では、葬儀の本質とは何か。

それは、「誰のために葬儀を行うのか」「何のために葬儀を行うのか」「なぜ行うのか」「どうして行うのか」「どうやって行うのか」こうした問いに真摯に向き合う姿勢です。

そのうえで、ご遺族や関係者が「この葬儀は良かった」と感じられるように導くこと。それが葬祭プランナーの本質的な役割です。

創造力・センスが葬儀の価値を変える理由

葬祭プランナーにとって最も大切なのは、「お葬式とはこういうものだ」という固定観念に縛られないことです。 葬儀という概念を深く理解したうえで、なおその枠を超える想像力が求められます。

そのためには、葬儀の知識だけを学んでいても不十分です。

例えば
見た目の演出においては、美術館や博物館の展示方法からヒントを得ることができます。

お花の扱い方ひとつとっても、華道やフラワーアレンジメントの知識が活きてきます。

また、物語性や表現力を高めるうえでは、経済、報道、映画、小説といった多様な分野の知見も大きな財産となるでしょう。

それら幅広い知識や感性を日々インプットしながら、センスを磨き、想像力を育てること。 そして、その蓄積をもとに「お葬式の枠に捉われない新しい何か」を創造していくことこそが、真の葬祭プランナーの使命です。

信頼できる葬祭プランナーを見極める2つの質問

葬祭ディレクターが重視されるのは、接遇や進行など目に見える技能や作業の正確さです。 一方で、葬祭プランナーに求められるのは、センスや想像力といった目には見えにくい力です。そのため、優れたプランナーかどうかを判断するのは簡単ではありません。

しかし、ある二つの質問を通じて、その資質を見極めることができます。

  1. なぜお葬式をしなければならないのか?
  2. (自分が)他の誰でもなく、あなたにお願いするとどうなるのか?

この問いに対して、明確かつ納得のいく答えを持っているかどうかが、葬祭プランナーとしての深い理解と本質的な力を物語ります。

「昔からそうだから」

「お寺がそう言っているから」

「精一杯がんばります」

こうした回答では、真のプランナーとは言えません。
本質に根ざした思考と、信頼に値する説明ができること。
それこそが、プロフェッショナルな葬祭プランナーを見極める鍵です。

儀式の形式や進行だけでなく、「なぜ、誰のために、どうして行うのか」という本質を捉えた提案ができる人こそが、真の葬祭プランナーです。 ご自身やご家族の大切な最期の時間を任せるなら、ぜひこの記事の視点をもって、相手を見極めてください。

葬祭プランナー・ディレクター動画

葬祭プランナーになるには(資格・経験・研修など)

「葬祭プランナーになりたい」と考えたとき、国家資格や特別な学歴が必要なわけではありません。しかし、プランナーには、資格や経験の有無では測れない資質と覚悟が求められます。

葬儀という場面では、ご遺族の心の温度や、家族の関係性、宗教・地域のしきたりまでを総合的に受け止め、たった一つのその人らしい葬儀をかたちにしていく必要があります。そのため、表面的なスキルではなく、「何のためにこの仕事をするのか」という姿勢を最も重視しています。

育成方針と研修制度

一般的に、入社後すぐに現場に立つことはありません。まずは葬儀の本質に向き合う座学、模擬プランニング、ロールプレイを重ね、先輩の施行に何度も同行しながら、ゆっくりとプランナーとしての眼を育てていきます。

形式的な「段取り」ではなく、ご家族の想いや価値観に耳を傾け、「その人らしい送り方とは何か」を一緒に考える力。それがプランナーに求められる第一歩です。

資格よりも大切にするもの

もちろん、全葬連の「葬祭ディレクター」など業界資格の取得支援も行っていますが、それはゴールではなく手段のひとつです。本当に大切にするのは、「誰かの人生に深く関わることを、誇りに思えるかどうか」。その想いこそが、知識や経験を超えて、ご遺族の心に届く提案を可能にします。

未経験からのスタートでも大丈夫

実際、多くのプランナーが未経験からスタートしています。当社においても前職が保育士、営業、舞台照明スタッフなど多様なバックグラウンドを持つ仲間たちが、その人らしい送り方を提案する力として、経験を活かしています。

葬祭プランナーは、決して特別な人だけがなれる職業ではありません。ただし「特別な想いを持った人」が、やがて誰かにとって特別な存在になれる仕事です。

葬祭プランナーの年収・キャリアパス

葬祭プランナーの年収は、経験年数や担当できる業務の幅によって大きく異なります。全国的な平均年収は300〜500万円程度ですが、企画力や信頼構築力を高めることで、600万円以上を実現するプランナーも珍しくありません。ただし「年収」以上に大切なのが「プランナーとしてどう成長し、どう生きていくか」というキャリアビジョンです。

成長は担当数ではなく向き合い方で測る

ただ多くの葬儀を回すことよりも、一件一件にどれだけ深く向き合えたかが重要です。そのため、キャリアのステップも数ではなく、質を軸に考えると良いです。

たとえば、
・ご家族の想いを丁寧に引き出し、カタチにできたか
・見えないニーズまで汲み取り、提案できたか
・その葬儀がその人らしかったと、誰かが感じてくれたか

そうした実践を積み重ねることで、プランナー、プランニングリーダー、マネジメント職など、多様なキャリアが拓けていきます。

キャリアのゴールは階段ではない

キャリアは、ピラミッド型ではなく対等な専門性の横展開も可能です。たとえば「1人1人の葬儀に深く関わり続けたい」という想いがあれば、ディレクターやプランナーとして第一線で活躍し続ける道も選べます。一方で、「後進の育成や仕組みづくりに携わりたい」という人は、人材開発部にて教育担当や採用担当に進むことや、マーケティング部や管理部にて会社全体とサポートすることも可能です。

ちなみに、当社むすびすでは、プランナー一人ひとりの使命の発見をサポートし、「自分らしい成長」と「社会への意味ある貢献」を大切にしています。

葬祭プランナーのやりがいと大変さ

葬祭プランナーという仕事は、人生の最期というかけがえのない場面に立ち会う、非常に責任の重い職業です。日常の延長線上にはない「非日常」に寄り添い、ご遺族の感情の波に丁寧に向き合う中で、多くのやりがいと同時に大きなプレッシャーも伴います。

やりがい:誰かの「一生の記憶」に残る仕事

むすびすでは、葬儀を送る人のためのセレモニーではなく、共に生きてきた証をかたちにする時間と考えています。
そのため、形式をなぞるだけではなく、家族が抱えてきた背景や想いに触れ、人生の物語を一緒に紡いでいくことが求められます。

たとえば、ご家族が初めは口にできなかった想いを、何度も対話を重ねる中で引き出し、式の中でかたちにできたとき。「ありがとう、あの人らしいお葬式になった」と涙ながらに言われたとき。その瞬間の重みは、何ものにも代えがたい人としての報酬です。

大変さ:正解のない感情に向き合い続ける

一方で、葬祭プランナーは「答えのない問い」に日々向き合う仕事でもあります。悲しみの表し方は人それぞれ。想いが深いからこそ、遺族同士の意見がぶつかることもあります。また、夜間や早朝にお迎えの対応が発生するなど、時間的な不規則さも避けられません。

葬儀という特別な空間では、小さな言葉や所作が、大きな信頼にも、時に不信にもつながり得ます。その緊張感の中で、常にそのご家族の最善を考え続ける姿勢が求められます。

「誰かのために本気になれる」覚悟が報われる

むすびすのプランナーは、単なる業務として葬儀をこなすのではなく、毎回その人だけの送り方を探し続けています。それは決して楽な道ではありませんが、「人の想いに本気で向き合いたい」と願う人にとっては、深いやりがいと成長のある仕事です。

この仕事が教えてくれるのは、人生の尊さと、人と人の間にあるつながりの意味。その気づきは、仕事だけでなく、自分自身の生き方にも深く影響を与えてくれるはずです。

葬祭プランナーの求人動向と将来性

高齢化社会が進む中で、葬儀の需要は今後も安定的に続くと見られています。とくに都市部では家族葬・直葬といった形式の多様化が進み、画一的な葬儀ではなく「その人らしい送り方」を求める声が年々高まっています。

それに伴い、単なる進行役や手配係ではなく、「ご遺族の想いに寄り添い、かたちにする力」を持った葬祭プランナーの存在が重視されるようになっています。

求人件数は増加傾向。求められるのは共感力

厚生労働省の統計によれば、葬儀関連業の雇用者数は微増を続けていますが、内容を見ると「式の運営スタッフ」よりも「提案・プランニング」の役割を担う人材が求められる傾向が強まっています。

なかでも当社むすびすのように、100人いれば100通りの葬儀を理念に掲げる企業では、マニュアルでは対応できない人に寄り添う力がより重要視されます。それは、知識や経験の蓄積よりも、「このご家族にとって最善とは何か」を考え抜ける姿勢にこそ価値があるという時代になってきた証です。

テクノロジーでは代替できない仕事

一部では、葬儀の自動見積もりやオンライン相談、AIチャットによる事前案内といったDX(デジタルトランスフォーメーション)も進んでいます。しかし、葬祭プランナーの本質的な仕事。たとえば、ご家族の表情や沈黙の間に込められた感情を読み取ること、葛藤のある家族関係を調整しながら想いをまとめることは、今後もAIでは代替できないと考えられます。

むしろ今後は、テクノロジーの活用によって定型業務の負担が軽くなり、プランナーは人にしかできない仕事に集中できるようになる。そんな未来がすぐそばまで来ています。

これからの葬祭プランナー像とは?AI時代に求められる人間力

私たちむすびすは、葬祭プランナーを「式をつくる人」ではなく、「人生の意味をつなぐ人」と捉えています。

超高齢社会・孤立化社会・価値観の多様化が進む中で、葬儀の意味を問い直し、その人らしい物語を残す仕事は、ますます必要とされるはずです。

葬祭プランナーは、これからの日本にとって、人と人の心を結ぶ重要な役割を担っていく存在だと、私たちは信じています。