一日葬で焼香のみ参列する際のマナーと流れを徹底解説
一日葬では、全工程が同日に行われるため、参列時間を短く設定する「焼香のみ」の参列も可能です。
遠方からの移動や仕事の都合、体調面など、さまざまな理由からこの形を選ぶケースがあります。
ただし短時間であっても、進行を妨げず弔意がしっかり伝わるよう、到着から退出までの行動には配慮が必要です。
その際に押さえておきたい流れやマナーを解説します。

一日葬では焼香のみの参列もマナー上は許容されます
事情がある場合、焼香のみの参列は礼を欠く行為とはされません。
一日葬は通夜と告別式を同日に行うため全体の進行が短時間に限られますが、遺族も参列者の事情を理解していることが多く、短時間の滞在でも弔意を示す姿勢があれば受け入れられる場合がほとんどです。
冠婚葬祭マナーの一般的な解釈でも、全行程への参加が難しくても焼香によって故人を悼む行為自体は礼儀に反しないとされています。
ただし、事前に遺族へ事情を伝えるかどうか、当日の挨拶で誠意が感じられるかによって印象は変わります。短時間参列の場合でも、事前連絡や簡潔で丁寧な言葉掛けなど、相手に配慮した行動を心がけることが大切です。
焼香のみ参列が受け入れられる主な事情
焼香だけの参列が認められる背景には、多くの場合「やむを得ない事情」があります。
代表的な例としては、次のようなケースが挙げられます。
- 遠方からの移動で、全行程に間に合わない
- 仕事や家庭の事情で長時間の参列が難しい
- 体調不良や持病などで長時間の滞在が困難
- 別の予定や行事と重なり、時間を限定せざるを得ない
このような場合、短時間であっても焼香によって故人への哀悼を表すことは、マナー上許容されると考えられます。
重要なのは、時間の長さではなく、遺族や故人に対して敬意を示す姿勢です。
事前連絡の必要性と伝え方
焼香のみになることがわかっている場合は、遺族に事前連絡を入れることが望ましいです。
電話やメールなど直接伝えられる方法を使い、できるだけ前日までに知らせます。
当日の会場では、受付係や葬儀スタッフに「焼香のみで失礼する旨」を伝えておくと、遺族にもスムーズに伝わります。
連絡の際は、参列できる時間や理由を簡潔に説明し、「短時間で申し訳ない」という気持ちを添えると好印象です。
代理の方や同席する知人がいれば、遺族に直接伝えてもらう方法も有効です。
当日の挨拶と立ち振る舞いの基本
焼香のみの参列では、式が始まる前に喪主や遺族へ一言挨拶をしておくと丁寧です。
焼香後は多くの参列者が順番に対応を受けるため、個別に言葉を交わす時間はほとんどありません。
受付を済ませた直後や着席前など、比較的落ち着いているタイミングで
「ご愁傷様でございます。本日は焼香のみで失礼いたします」と短く伝えると、参列の理由と弔意がしっかり届きます。
葬儀では長く滞在することよりも、所作や言葉に込めた気持ちが大切です。
短い参列でも礼儀正しく振る舞えば、失礼と受け取られることはほとんどありません。
もし直接挨拶できない場合は、受付係や葬儀社スタッフを通じて伝えてもらう方法もあります。
どの場合も、静かな声で、相手の手を止める時間を最小限にすることを意識しましょう。
焼香のみ参列する際の流れと立ち振る舞い
焼香のみで参列する場合は、式場に到着してから退出するまでの一連の行動を、できる限り静かかつ簡潔に進めることが大切です。
短時間での参列では、式の進行を妨げないことが最優先です。そのため、長居や不必要な会話は控え、哀悼の意が明確に伝わる行動を心がけます。
式場内での移動は周囲の様子を確認しながら静かに行い、他の参列者や遺族の邪魔にならないよう配慮することが望まれます。
具体的な行動例は以下で説明します。
焼香予定時間と待機場所を確認し、必要事項を伝える
式場に到着したら、まず受付または係員に声をかけ、焼香の予定時間と待機場所を確認します。
受付が混雑している場合や係員が不在の場合は、無理に進まず一声かけて待機します。
その際、「焼香のみで退出予定」であることを簡潔に伝えておくと、通路側や後方など退席しやすい席に案内してもらえる場合があります。
香典辞退や持参物に関する案内もここで再確認し、必要があれば控室や待機場所の位置を確認しておくと、式の進行を妨げずに行動できます。
焼香のタイミングと列の並び方は葬儀社スタッフの案内に従う
一日葬で最初から式場にいる場合、焼香の順番は葬儀社スタッフが案内してくれることがほとんどです。
最後の方の順番に案内され、そのまま退出しやすい流れになります。
焼香の際は手荷物を席に置いたままにせず、退出に必要なものは事前に手元へまとめておきましょう。
列に加わる際は案内に従って静かに進み、前の人との間隔を保ちながら整然と移動します。
こうした準備と行動は、短時間参列でも全体の進行を乱さず、礼儀を保つために欠かせません。
読経や弔辞の最中に到着・退席する場合の対応
式の進行中に出入りすると雰囲気を遮る恐れがあるため、基本は扉の外や脇で静かに待機し、区切りのタイミングで移動します。
到着時が読経中であれば、焼香の途中であることが多く、係員の案内に従って列に加わることが可能です。
一方、弔辞の最中に到着した場合は、すでに焼香が終わっている可能性が高く、焼香ではなく「献花」「花入れ」など後半の工程からの参加になるケースがあります。
いずれの場合も扉の開閉は最小限にし、音を立てないよう配慮します。
早退の際も同様に、事前に係員へ事情を伝え、案内ルートやタイミングを調整してもらうと式の流れを妨げずに済みます。
退出のしかたと滞在時間の目安
焼香が終わったら、祭壇に向かって一礼し、その後遺族席の方向へ黙礼をしてから静かに退場します。
係員の誘導がある場合は必ずそれに従い、退出後に再び式場へ戻ることは避けます。
滞在時間はおおむね10〜15分を目安に、簡潔かつ静粛な行動を心がけるとよいでしょう。
また、退出後に廊下や屋外で参列者同士が長く立ち話をすると、会場の混雑や進行の妨げになる場合があります。
必要な挨拶や会話は短く済ませ、すみやかに会場を後にすることが望ましいです。
もし当日十分に挨拶できなかった場合は、後日改めて弔問するなど別の形で弔意を伝える方法を検討すると、遺族への配慮になります。
一日葬における焼香の作法と宗派ごとの違い
一日葬での焼香は、基本的に一般葬と同じ手順で行います。
祭壇の前に進み、まず一礼してから抹香を右手でつまみ、香炉に静かにくべます。
その後、胸の前で手を合わせ、5秒ほど静かに合掌し、最後にもう一度一礼して退きます。
動作はできるだけゆっくりと行い、音や大きな動きで周囲の集中を妨げないよう配慮します。
抹香を額に押しいただくかどうかは宗派によって異なります。
たとえば浄土真宗では押しいただかずに香炉へくべるのが一般的ですが、真言宗や曹洞宗では押しいただく作法を取ります。
まずはこの共通動作を押さえ、その上で宗派や宗教ごとの違いを把握しておくと、当日も迷わず対応できます。
宗派・宗教ごとの焼香や代替儀礼の違い
焼香の作法は宗派によって回数や所作が異なります。
また、仏教以外では焼香の代わりに別の儀礼が行われるため、事前に把握しておくことが大切です。
<仏教の主な例>
- 浄土真宗:1回のみ。額に押しいただかず、そのまま香炉へ。
- 真言宗:3回。毎回額に押しいただいてから香炉へ。
- 曹洞宗:2回。1回目は額に押しいただき、2回目はそのまま香炉へ。
<仏教以外の主な例>
- キリスト教:献花(白い花を受け取り、棺に手向けて黙祷)。
- 神道:玉串奉奠(榊を捧げ、忍び手で二礼二拍手一礼)。
宗派や宗教の形式は、その教義や慣習に基づいています。
迷った場合は、事前に遺族や葬儀社へ確認し、その場の案内に従うことが最も丁寧です。
宗派や宗教が不明・迷った場合の無難な対応
宗派や宗教が不明な場合は、標準動作をもとに行動するのが無難です。
非仏教式では、係員や司式者、前の参列者の動きに合わせて行動します。
焼香の細かな作法は宗派によって異なりますが、押しいただく動作など細部にこだわらず、落ち着いた動きで敬意を示すことが大切です。
迷ったときは式場係員や僧侶・司式者に従うのが確実です。
短時間参列でも失礼にならない服装・持ち物・言葉選び
焼香のみの短時間参列であっても、服装や持ち物は正式な葬儀と同様に整えることが望まれます。
喪服は遺族との関係性によって選び、親族や特に近しい関係であれば正喪服、それ以外の一般参列者であれば準喪服が一般的です。
いずれの場合も派手な色や装飾は避け、全体を黒で統一します。
女性はアクセサリーを控え、髪型も落ち着いた印象にまとめます。
香典は金額相場(一般的には3,000〜5,000円程度)に沿い、表書きは宗派に応じて「御霊前」「御香典」などを用います。
一日葬は家族葬の形式を取ることも多く、香典辞退のケースもあるため、事前に案内状や葬儀社への確認を行うと安心です。
言葉選びは弔意を端的に伝えることが大切で、「このたびはご愁傷様でございます」「心よりお悔やみ申し上げます」など、形式的かつ丁寧な表現を用います。
短時間参列でも、服装・持ち物・言葉のいずれもが遺族への敬意を示す要素となるため、事前準備を怠らないことが重要です。
服装は場にふさわしく整える(正式喪服と略礼服の判断基準)
焼香のみの短時間参列であっても、服装は葬儀の場にふさわしいものを選ぶことが基本です。
親族や特に近しい関係であれば、正喪服(ブラックフォーマル)が望まれますが、一般参列者の場合は略礼服でも問題ありません。
その場合でも全体を黒で統一し、派手な柄や光沢のある素材は避けます。
男性は黒無地のスーツに白シャツ、黒ネクタイ、黒靴を基本とします。
女性は黒のワンピースまたはスーツに黒ストッキングを合わせ、バッグや靴も光沢のない黒を選びます。
アクセサリーは結婚指輪や控えめなパール程度にとどめ、髪型は落ち着いた印象に整えます。
服装は遺族や他の参列者への敬意を示す重要な要素です。
略礼服を選ぶ場合でも、色・素材・装飾に注意し、全体として厳粛な場に調和することを優先しましょう。
香典・数珠・小物の準備は宗派・案内に合わせる
焼香のみの参列でも、香典や持ち物の準備は宗派や案内状の記載に沿って行うことが大切です。
香典は故人や遺族との関係性に応じた相場で用意し、表書きは宗派・宗教に合わせます。
たとえば、仏式であれば「御霊前」や「御香典」、神道であれば「御玉串料」や「御榊料」、キリスト教であれば「御花料」とします。
仏式では数珠を持参するのが基本ですが、宗派が異なる場合でも略式数珠を用いれば問題ありません。
神道やキリスト教では数珠は用いず、それぞれの作法や小物に従います。
また、一日葬は家族葬形式で行われることが多く、事前に案内状や葬儀社情報で可否を確認し、辞退の場合は持参せず、必要に応じて弔問カードや後日の弔問で弔意を伝える方法を検討しましょう。
短時間参列での挨拶は簡潔・低声で
式が始まる前であれば、祭壇前でも短く弔意を伝えることができます。
焼香台の手前や参列動線の妨げにならない位置で、静かに一言添えるのが望ましいです。
受付は混雑しやすいため長話は避け、挨拶は以下のような簡潔な表現が適しています。
- ご愁傷様でございます。本日は焼香のみで失礼いたします
- 心よりお悔やみ申し上げます
式進行中や焼香直後に長く話すことは、進行を妨げたり周囲に気を遣わせる原因になります。
短時間参列の場合は、低声かつ簡潔な挨拶で哀悼の意を示すことが大切です。
退出時に遺族や参列者への配慮が伝わる行動の工夫
式の進行を妨げないタイミングで静かに退席することが、短時間参列でも弔意を示す上で重要です。
退出の場面は遺族や他の参列者の視線が集まりやすいため、動きや音を最小限に抑え、自然な流れで会場を後にします。
具体的な安全な退出タイミングは、次節で式の流れ別に解説します。
式の流れ別・安全な退出タイミング
式の進行を妨げずに退出するためには、「読経」「弔辞」「献花・玉串奉奠」など、それぞれの場面に応じた“区切り”を見極めることが大切です。
- 読経の場合:一区切りつき、僧侶が経本を閉じた直後に退出する。
- 弔辞の場合:挨拶が終わり、拍手や黙礼が済んだ直後に退出する。
- 献花・玉串奉奠の場合:自分の順番が終わったら、そのまま静かに退出する。
こうした区切りを選ぶことで、遺族や参列者の視線や注意を妨げることなく動くことができます。
退出タイミングは進行表や葬儀社スタッフの案内で事前に確認しておくと、当日も安心して行動できます。
退出を控えるべき場面
退出は、式の核心部分や全員が注目している場面では避けることが望まれます。
特に、遺族代表の挨拶中や棺の蓋を閉じる場面、故人との最後のお別れの時間などは、感情が高まりやすく、動きが非常に目立つため控えるべきです。
こうした場面での退出は、遺族や他の参列者の集中を妨げるだけでなく、感情的な負担を与える可能性があります。
やむを得ず退席する必要がある場合は、必ず式場係員に事情を伝え、裏動線や控室側から退出するなど、目立たない方法を選ぶことが大切です。
退出後に弔意を補う方法
焼香のみでの短時間参列では、場の制約から十分に弔意を伝えきれないことがあります。
その場合は、退出後にあらためて気持ちを示す対応を行うと、より丁寧です。
具体的には、弔電を送る、後日あらためて弔問する、香典を別途お渡しする、お花やお供えを届けるなどがあります。
こうした行動は、滞在時間の短さを補い、遺族にも誠意が伝わりやすくなります。
対応方法は、遺族との関係性や相手の負担にならないかを考慮して選びましょう。
特に、後日の訪問は事前連絡を行い、先方の都合を優先することが大切です。
判断視点:関係性の深さや状況に応じて、最も負担にならない方法を選ぶ。
よくある質問
- 一日葬で「焼香のみ参列」する場合、どのくらい前に会場に着けばよいですか?
- 焼香予定時間の10〜15分前を目安に到着すると、受付や係員案内を受けてスムーズに動けます。早すぎると式場準備中に重なる場合もあるため、案内状の開式時刻や葬儀社の指示を確認しましょう。
- 香典辞退と案内があった場合は、本当に持参しなくてもよいのでしょうか?
- 案内に従い持参しないのが原則です。その代わり、弔電や弔問カードなどで弔意を示す方法があります。
- 焼香の順番が分からないときはどうすればいいですか?
- 宗派や宗教が不明な場合は、前の人の動きに合わせるか、係員に確認しましょう。仏式であれば1〜2回の焼香と合掌5秒が無難です。
- 短時間参列でも正式喪服は必須ですか?
- 関係性が深い場合は正式喪服(ブラックフォーマル)が望ましいですが、親戚や近しい友人でなければ略礼服でも失礼にはなりません。全体を黒で統一し、光沢や柄を避けることが重要です。
- 式の途中で退出する場合、どのタイミングが適切ですか?
- 読経や弔辞などの区切りで静かに退席するのが最も安全です。遺族挨拶や棺の蓋を閉じる場面など、儀式の核心部分での退出は避けましょう。

この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版