どうすればいい?自宅葬における祭壇を解説
自宅で葬儀を行うことを選んだ際、特に多くの方が不安に感じるのが、祭壇の設置に関することです。
斎場とは異なり、設備や広さが限られる住宅空間では、どのような祭壇が用意できるのか、スペースや安全性に問題はないか、費用はどの程度かかるのかといった疑問が生じやすくなります。
自宅で葬儀を行う場合でも、一定の条件が整えば、住宅に合わせた小型祭壇の設置が可能です。
特に、柔軟な設計が可能な花祭壇は自宅環境に適した選択肢として注目されています。
また、葬儀における「祭壇」と「仏壇」の違いを正しく理解しておくことも重要です。
この記事では、自宅葬における祭壇の設置条件、種類、設置場所、手配の流れなどを取り上げ、喪主として具体的な準備や選択の助けとなる情報を整理しています。

自宅葬の祭壇はどんな環境で設置できる?仏壇との違いも整理
自宅で葬儀を行う場合でも、住宅に合わせた小型の祭壇であれば設置は可能です。
特に花祭壇は、空間の制約に対応しやすく、一般的な住宅内でも柔軟に設置できる点で多く選ばれています。
搬入・組立が分解式になっているものや、省スペース設計のプランも充実しており、設置場所や導線、安全性を配慮すれば対応可能なケースが増えています。
また、仏壇が自宅にある場合でも、それを葬儀用の祭壇として代用することは基本的にありません。
仏壇は日常供養の場であり、葬儀に必要な儀式進行・装飾・導線といった構成要素が備わっていないためです。
葬儀では、宗教儀礼や故人との最期の対面を行うための空間として、専門の祭壇が別途用意されます。
こうした背景を踏まえると、祭壇の設置可否は部屋の広さだけでなく、安全性や動線、使用目的を考慮する必要があります。
自宅という空間に無理なく調和する形式を選びながら、仏壇との役割の違いを理解し、適切な設えを準備することが重要です。
設置に必要なスペースと環境条件
自宅で祭壇を設置する場合、2〜3畳ほどの空間があり、安全面に配慮されていれば、多くの住宅で設営は可能です。
和室やリビングの一角などを活用し、生活空間の中に一時的な儀礼空間をつくる形が一般的です。
特別な“自宅専用祭壇”が用意されているわけではありませんが、既存の花祭壇などを現地で組み上げる形式であれば、住宅事情に応じた柔軟な設置が可能です。
分割搬入できる設計や、高さ・奥行きの調整がしやすい構造のものも多く、斎場と比べてスペースが限られる場所でも無理なく対応できるようになっています。
設置の可否は部屋の広さだけで判断されるものではなく、火気使用時の安全管理や電源確保、照明環境、参列者の動線確保など、空間全体の安全性や使い勝手が重要です。
見た目だけでなく、使用中のリスクや配慮も含めた検討が必要です。
仏壇との違いと役割の整理
自宅に仏壇がある場合でも、それを葬儀の祭壇として使うことは基本的にありません。
仏壇は普段の供養のために設けられたものであり、葬儀で必要とされる設備とは目的が異なります。
葬儀用の祭壇には、遺影や供花、位牌、ろうそく台などを整え、僧侶による読経や焼香などを滞りなく進めるための構成が求められます。
これに対し、仏壇は家庭内で日々手を合わせる場であり、葬儀の流れに必要な設置や動線の工夫がなされていません。
そのため、仏壇があるご家庭であっても、葬儀の場では別途祭壇を設けるのが一般的です。
空間が限られている場合でも、簡易的な形式で設けることはできるため、葬儀用としての必要性を踏まえて準備を進めることが大切です。
どこに置く?自宅内での祭壇設置場所の考え方

自宅での祭壇設置は、和室・洋室を問わず、一定の空間と安全性が確保できる場所であれば基本的に対応可能です。
祭壇の形式や広さ、動線の取りやすさをもとに判断すれば、一般的な住宅でも無理なく設営できます。
設置場所として選ばれやすいのは、玄関からの導線が確保でき、家族や僧侶が集まりやすい部屋です。
和室がある場合は畳敷きの落ち着いた雰囲気から選ばれる傾向にありますが、リビングや洋室でも対応できます。
照明・換気・電源の確保がしやすいことも判断基準のひとつです。
実際の設置では、葬儀社が住宅内のレイアウトや設備を確認し、安全面や参列者の動線を踏まえて調整することが一般的です。
宗教的な「方角」や「場所の決まり」を厳密に求められるケースは少なく、実用性を優先する対応が主流です。
住空間の中に一時的な儀式の場を設ける以上、形式よりも家族が落ち着いて過ごせるかどうかが重視されます。
設置のしやすさだけでなく、その後の葬儀の流れや気持ちの整理もしやすい配置を意識することが望ましいです。
よく使われる設置場所の特徴
自宅での祭壇設置では、和室・リビング・玄関脇などが選ばれることが多く、いずれも動線やスペースを確保しやすい点が共通しています。
祭壇を設けたあとに僧侶や家族が無理なく移動できる空間が取れるかどうかが、設置場所を選ぶうえでの基本的な判断軸となります。
とくに和室の中でも仏間がある部屋は、落ち着いた雰囲気や床の間の奥行きを活かしやすい点から、設営しやすい傾向があります。
畳敷きであれば、椅子を使わず正座でも対応できるため、スペースをより有効に使えるという利点もあります。
一方で、リビングや広めの洋室も照明や電源の取りやすさから好まれることがあります。
実際の自宅葬の事例では、畳の部屋や10畳以上あるリビングなど、ある程度の広さと落ち着いた空間が確保できる部屋が選ばれており、
搬入・組立て作業や葬儀の進行にも支障が出にくい傾向にあります。
なお、設置場所を検討する際には、通行の邪魔にならないか、足元の安全が確保されているかといった動線上の安全性や、
照明・空調が十分に調整できるかといった環境面もあわせて確認することが重要です。
動線・空調・安全性などの補足要件
自宅に祭壇を設置する際は、火気の取り扱いや換気、冷暖房の調整といった安全対策が欠かせません。
とくに線香やろうそくを使用する場合、狭い空間での火災リスクや空気のこもりを防ぐための工夫が必要です。
現在では、LEDろうそくや防炎加工されたマットなどを活用することで、安全性を確保しながら雰囲気を損なわない設置が可能になっています。
こうした代替手段を使えば、火気使用による事故のリスクを抑えつつ、儀式としての整えも十分に行えます。
自宅は本来、生活を営むための空間であり、葬儀を行うには一時的な変化が求められます。
そのため、設営にあたっては設備面の対応に加えて、予期せぬ事故やトラブルを未然に防ぐ工夫が不可欠です。
また、高齢の参列者がいる場合や、限られた人数で葬儀を行う場合には、移動のしやすさや室温の快適さといった点にも注意を払う必要があります。
見た目の整えだけでなく、空間全体の安全性と快適性を両立させる意識が大切です。
どんな形式がある?自宅葬で使われる祭壇の種類と特徴
自宅葬では、設置や空間調整の自由度が高い花祭壇が最も多く選ばれています。華やかさと柔らかさを備え、住宅内の雰囲気にもなじみやすいため、限られたスペースでも無理なく整えることができます。
宗教的な形式を重視する場合には、仏式の白木祭壇や、神式・キリスト教式のための専用の設えを選ぶこともあります。ただし、それらも近年は省スペースに対応した設計が進んでおり、自宅でも無理なく設置できるように調整されています。また、宗教的な要素を取り入れない、シンプルで形式にとらわれない祭壇を選ぶ家庭もあります。故人の人柄や家族の想いを重視し、落ち着いた雰囲気で見送るための祭壇づくりがしやすくなっています。
もともと自宅という場は斎場のような設備を前提としていないため、祭壇の形式を選ぶ際には、宗教・予算・スペース・希望する雰囲気など、さまざまな要素を踏まえて判断する必要があります。一般的な型にこだわらず、どのように見送りたいかという意向を軸に考えることで、無理のない形が見つかります。
花祭壇:空間演出と柔軟性に優れる
花祭壇は、自宅葬において最も柔軟性が高い形式のひとつです。サイズや色合い、雰囲気を空間に合わせて調整しやすく、住宅の限られたスペースにも無理なく設置できます。
また、宗教的な装飾を控えたデザインにすることで、形式にとらわれず「故人らしさ」を大切にした祭壇づくりが可能になります。無宗教葬やお別れ会形式など、自由なスタイルの葬儀を希望するケースにも対応しやすい点が特徴です。
実際の自宅葬でも、多くの家庭が花を中心とした祭壇を採用しており、明るく自然な雰囲気で見送れることから幅広い年代層に支持されています。生花を用いることで季節感や色彩の調和も図れるため、落ち着いた空間演出が実現しやすくなっています。
空間に余裕がある場合は華やかさを演出し、限られたスペースであれば必要最小限に抑えるといった調整が可能です。見た目の印象と機能性のバランスを考えながら、過不足のない設えを検討することが大切です。
白木祭壇:仏教葬儀の定番形式
白木祭壇は、仏教の葬儀で伝統的に用いられてきた形式で、儀礼性や格式を重視する際に選ばれることが多い祭壇です。白木の素材がもつ清浄さと、整然とした構えが特徴です。
一方で、白木祭壇はもともと斎場での使用を前提とした設計であるため、自宅での設置が難しいこともあります。広さの制約や搬入の制限から、対応できない場合もあるため注意が必要です。簡易的な構造で調整できることもありますが、必ずしもすべての住宅環境に適合するわけではありません。
宗派によっては白木祭壇の使用が求められるケースもあるため、家族の信仰や地域の慣習を踏まえて検討することが重要です。葬儀を行う目的や意味を尊重するためにも、宗教儀式に必要な準備や条件を事前に把握しておく必要があります。
形式にこだわりたい場合には、早めに葬儀社と相談し、自宅で対応可能かどうかを確認しておきましょう。設置が困難な場合でも、別の形式で宗教性を維持する方法が見つかる可能性もあります。
祭壇を設けない場合の見送り空間
自宅葬では、必ずしも祭壇を設ける必要はなく、花や遺影だけで整える簡素な設えでも見送りは可能です。形式的な要素よりも、静かに故人と向き合える空間づくりを優先する考え方が背景にあります。
こうした形は、宗教儀式を行わない場合や、費用・スペースの制約がある場合に選ばれることがあります。無宗教葬や、直葬に準じたスタイルでは特に多く見られ、最低限の設えで心のこもった時間を過ごすことを目的としています。
実際、火葬式や直葬といったシンプルな葬送形式では、読経や祭壇の設置を行わず、家族のみで花を手向けるなどの時間を設けることで、別れの機会を確保しています。視覚的に派手さはなくとも、故人と向き合う時間を丁寧に取ることで、納得のいく見送りが可能になります。
見送りの形に正解はなく、宗教形式や設備にとらわれず「どう送りたいか」を軸に考えることが大切です。限られた環境でも、心を込めた空間づくりを意識することで、形式に依存しない満足度の高い葬儀が実現できます。
どう準備する?祭壇の手配と設営の流れ
祭壇の準備は、まず「どの宗教・宗派の形式で葬儀を行うか」を確認し、それに応じた祭壇の種類を選ぶことから始まります。そのうえで、実際の設置が自宅で可能かどうかを葬儀社と相談し、条件をすり合わせながら準備を進めます。
選ぶ祭壇によって、必要なスペースや備品が異なるため、住宅環境に応じた柔軟な対応が求められます。自宅葬に対応している葬儀社であれば、事前に現地を訪問し、間取りや搬入経路を確認しながら適切な設営方法を提案してくれます。
特に自宅の場合は、斎場と異なりスペースや安全性に制約があるため、現場確認に基づく調整が不可欠です。空調・照明・動線などの環境要因にも配慮しながら、無理のない設営計画を立てる必要があります。
形式や価格だけで判断せず、家庭ごとの状況に応じた実行可能性を重視して進めることが重要です。経験豊富な葬儀社と連携することで、限られた条件のなかでも落ち着いた見送りの空間を整えることができます。
準備の流れとタイミング
祭壇の設置を希望する場合は、できるだけ早い段階で葬儀社に相談することが基本となります。自宅での設営には空間的な制限が伴うため、早めの確認と調整が必要です。
一般的には、通夜や告別式の前日までに設営を終え、式終了後に速やかに撤去する流れが取られます。日程が限られるなかでの準備となるため、余裕を持った依頼が望まれます。
特に注意すべきなのは搬入経路で、玄関や廊下が狭い場合、希望する祭壇の設置が不可能になることもあります。こうした制約は図面だけでは判断できないため、実際に現地を確認してもらうことが欠かせません。
事前に確認を受けておくことで、空間の使い方や設営可否を正確に把握でき、トラブルの回避につながります。設営を前提とした進行が難しい場合でも、代替案を提案してもらえることが多く、現地確認は柔軟な対応のためにも重要なステップです。
業者に依頼する際の確認ポイント
祭壇の設置を業者に依頼する際は、「設置スペースの広さ」「宗教形式の希望」「搬入経路」「撤去方法」といった条件を事前に整理しておくことが重要です。こうした情報を正確に伝えることで、自宅に適した現実的な提案を受けることができます。
祭壇の種類や大きさによって必要なスペースや対応内容は変わります。また、設置後すぐに撤去されるのが一般的なため、葬儀当日の動線や、終了後の作業も踏まえた調整が求められます。
特に重要なのは、「祭壇が自宅内で組み上げられるか」「棺を無理なく搬出できるか」といった実務面の確認です。間取りや玄関の幅、階段の構造などによっては設営や搬出が難しく、希望する形式での実施ができないこともあります。
こうしたリスクを避けるためにも、自宅葬の実績がある葬儀社に相談することが望まれます。現地確認を行い、設営可能かどうかを丁寧に見てもらうことで、無理のない形で進行できる体制を整えることができます。
最小限で行う場合の注意点
自宅葬で装飾や設えを簡素にする場合でも、安全性と儀礼性のバランスを意識することが大切です。最低限の準備であっても、参列者が落ち着いて別れを告げられる空間を整える必要があります。
遺影と花を中心に構成した見送りの形式では、照明・空調・導線などに配慮しながら、整った印象を保つことが求められます。テーブルや花台などの配置も、式中の動きや見え方に大きく影響するため、意識的な設置が必要です。
極端な簡略化は、参列者に対して準備不足や不自然さを印象づけてしまうおそれがあります。とくに家族以外の参列者を迎える場合には、最低限の礼節を備えた設えが必要とされます。
費用や空間の制約があっても、故人と向き合う場としての整え方を意識することで、簡素であっても落ち着いた雰囲気を保つことが可能です。無理のない範囲で丁寧さを心がけることが、納得感ある見送りにつながります。
自宅葬の祭壇は“形式”ではなく“送り方”から考える
自宅葬では、祭壇の形式そのものよりも、「どのように故人を送りたいか」という意志を出発点に考えることが重要です。空間の制約や費用だけに目を向けるのではなく、家族が納得できる形で見送る方法を検討することが求められます。
花を中心に構成した祭壇、遺影と花のみの簡素な設え、宗教儀礼に則った形式など、自宅で可能な選択肢は多岐にわたります。無理に斎場のような設備を再現しなくても、自宅という場の特性を活かすことで、十分に意味のある見送りが可能です。
実際の事例においても、スペースや家族の意向に応じて、柔軟にアレンジされた祭壇や見送り空間が用いられています。形式を一つに絞るのではなく、必要な要素を取捨選択しながら設計することが、自宅葬の自由さでもあります。
どの形式が適しているか判断が難しい場合には、自宅葬に対応した葬儀社に相談しながら進めるのが現実的です。専門的な視点から、空間の使い方や設置可能な祭壇の種類などを踏まえて、一緒に送り方を考えてくれるはずです。検討段階から相談を始めておくことで、無理のない準備と納得のいく見送りが実現します。
よくある質問
- 自宅に祭壇を設置するのに、特別な許可や届け出は必要ですか?
- 原則として、祭壇の設置自体に公的な許可や届け出は不要です。ただし、マンションなどの集合住宅では管理規約に注意が必要な場合があります。搬入・搬出の時間帯や共用部の使用に制限があることもあるため、事前に確認しておくと安心です。
- 花祭壇と白木祭壇の費用に大きな違いはありますか?
- 祭壇の形式よりも規模や装飾の内容によって費用が変わる傾向があります。一般的には花祭壇のほうが自由度が高く、予算に合わせて調整しやすいという特徴があります。費用を抑えたい場合も、希望に応じた設計が可能です。
- 自宅に仏壇があるのですが、それを使って葬儀はできますか?
- 仏壇は日常の供養のためのものであり、葬儀には通常使用されません。葬儀では読経や供花の進行に合わせた構成が求められるため、専用の祭壇を用意するのが一般的です。仏壇は葬儀後の供養に用いるものと考えておくとよいでしょう。
- 祭壇なしでの自宅葬でも問題ないのでしょうか?
- 宗教的儀礼を伴わない火葬式や直葬では、祭壇を設けずに写真と花だけで見送ることも可能です。形式にこだわらず、静かに見送りたいという希望がある場合には、こうした簡素な設えも十分に意味を持ちます。ただし、参列者がいる場合は最低限の整え方を意識することが大切です。
- どのタイミングで祭壇の相談をすればいいですか?
- 葬儀日程が決まった段階で、できるだけ早く相談するのが理想です。とくに自宅での設営は現地確認が必要な場合が多いため、準備に時間を要します。自宅葬に対応した実績のある葬儀社であれば、設営可能かどうかを含めて丁寧に対応してくれます。

この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版