いくらかかる?自宅葬の費用を解説
自宅葬にかかる費用は、形式が自由な分だけ金額にも幅があり、事前に把握しづらい傾向があります。
自宅を会場に選ぶことで、会場費などを抑えられるというイメージを持たれやすいものの、実際には人数や葬儀の内容、住宅の環境によって必要な支出は大きく変わります。
搬送や設営の対応、飲食や返礼品の手配などが加わることで、想定を超える費用になることも少なくありません。
費用感をつかむには、まず自宅葬における平均的な支出の水準を確認し、基本的な内訳や費用が増減する要因を整理する必要があります。
さらに、参列する人数が増えるほど必要な物品や人員が変化するため、人数ごとのシミュレーションも参考になります。
ここでは、自宅葬にかかる費用の相場と費用項目ごとの内訳、そして参列者が10人、20人、30人の場合を想定した費用例をもとに、全体像を整理していきます。

自宅葬にかかる費用の平均相場
自宅葬の費用は30万円から100万円前後になるケースが多く、実施内容や参列者の人数によって大きく変動します。
会場として自宅を使用するため、式場利用料は発生しません。ただし、設営や人員配置、搬送の手配といった点で別途費用がかかる場合があります。内容を簡素にすれば比較的抑えやすい一方、宗教儀式や会食などを含めると家族葬と同等の金額になることもあります。
実際の費用水準を理解するうえでは、他の葬儀形式と比較して位置づけを把握しておくことも参考になります。以下は、自宅葬・一日葬・家族葬の費用相場と主な特徴をまとめた表です。
葬儀形式 | 費用目安 | 主な特徴 |
---|---|---|
自宅葬 | 30万〜100万円 | 自宅を会場にし、内容を柔軟に設計できる。会場費は不要 |
一日葬 | 40万〜100万円 | 通夜を行わず、告別式と火葬を1日で行う。多くは式場で実施されるが自宅も可能 |
家族葬 | 60万〜120万円以上 | 通夜・告別式を含む2日間の葬儀。親族を中心とした形式 |
自宅葬は内容を必要最小限に調整できるため、形式の中では費用を抑えやすい傾向があります。ただし、参列者の人数や自宅の環境によっては、かえって一日葬や家族葬よりも費用がかかることもあるため、事前に実施内容を明確にしたうえで見積もりを取ることが重要です。
形式だけで費用を単純に比較するのではなく、どのような見送り方を望むか、どこに費用がかかりやすいかを整理することが、適切な判断につながります。
費用相場の幅が生じる理由
自宅葬の費用に幅が出るのは、実施環境や選択する内容によって必要な対応が大きく変わるためです。
たとえば、参列者が10人と30人では、用意すべき料理や返礼品の数も異なりますし、僧侶を招く場合と無宗教形式では人件費や儀式費用も大きく変わります。また、自宅の構造が設営に適しているかどうかや、火葬場までの距離なども費用に影響します。
- 搬送距離が長いと車両費や人件費が増える
- 宗教儀礼を依頼すると読経料や僧侶の送迎費が発生する
- マンションなどで設営が難しい場合、仮設設備や屋外設営費が加わる
- 参列人数に応じて料理や返礼品の数、接待体制が変わる
こうした要因はあらかじめ想定しづらく、見積もり段階で見落とされがちです。相場の数字だけで判断せず、何が含まれるのかを明確にした上で具体的な内容に基づいた費用確認が欠かせません。
自宅葬の費用内訳と目安
自宅葬の費用は大きく分けて「基本費用」と「変動費用」に分類されます。基本費用には葬儀を実施するうえで必須となる項目が含まれ、変動費用は参列者数や宗教儀式の有無などにより大きく変動します。
葬儀社に見積もりを依頼する際には、各項目がどの分類に当たるかを確認し、必要性の低いオプション費用が無意識に含まれていないかを見極めることが重要です。
以下に、自宅葬における主な費用項目と、その分類を整理した表を示します。
費用項目 | 分類 | 概要 |
---|---|---|
祭壇・棺・骨壺など葬具 | 基本費用 | 葬儀の中心を構成する物品。仕様によって価格が変動 |
搬送・安置関連 | 基本費用 | 遺体の搬送、安置室・ドライアイス等の維持管理 |
火葬場手配・手続き代行 | 基本費用 | 火葬予約、役所届出、必要書類の準備代行 |
宗教者への謝礼(読経料など) | 基本費用 | 依頼の有無や宗派によって差がある |
会葬者用料理 | 変動費用 | 会食の提供数に応じて加算される |
返礼品 | 変動費用 | 参列者数に比例して必要数が決まる |
自宅設営関連(テント・椅子・照明など) | 変動費用 | 敷地条件や天候により追加が発生することもある |
基本費用は葬儀の実施に不可欠な項目であり、内容を削ることは難しい一方で、変動費用は選択次第で調整が可能な部分です。たとえば会食や返礼品は参列者の人数が明確であれば無駄を防ぎやすく、宗教者の依頼についても事前の相談によって内容や金額の調整が可能です。
自宅葬では形式が自由な分、費用構成も柔軟になります。必要な項目とそうでない項目を冷静に見分け、無理のない範囲で内容を選択することが、納得のいく費用設計につながります。
基本費用に含まれる主な項目
自宅葬における基本費用は、おおよそ15万円から30万円程度が目安とされ、葬儀の実施に欠かせない物品やサービスが含まれます。これは、どのような形式であっても必要となる基礎的な支出といえます。
内容を簡略化したとしても、最低限必要となる項目はほぼ共通しており、削減が難しい部分です。したがって、費用を検討する際には、まずこの基本費用を前提としたうえで、その他の追加要素の有無によって全体像を組み立てていくことが現実的です。
基本費用に含まれる主な項目は以下の通りです。
- 祭壇設営: 自宅内で行う場合も簡易な設置が必要。宗派や予算に応じて内容を調整可能
- 棺・骨壺: 火葬に不可欠な葬具。材質や装飾の有無で価格に幅がある
- 遺体搬送・安置: 病院から自宅への搬送および自宅安置のためのドライアイスなど
- 納棺儀式: 専門スタッフによる遺体処置や納棺のサポート
- 火葬手続き: 役所への死亡届提出、火葬許可申請、火葬場との調整など
- 葬儀スタッフの人件費: 進行補助、受付対応、会場整理などの運営支援
- 宗教費用:宗教者の謝礼や、そのほか宗教に必要なもの
これらはプランによってセット化されている場合もありますが、内容の詳細は葬儀社ごとに異なります。見積もりを見る際には、項目が具体的に明示されているかを確認し、不要な追加料金が含まれていないかをチェックすることが大切です。
人数で変動しやすい追加費用
参列者の人数が増えるほど、料理や返礼品などの接待関連費用が比例して増加し、全体の費用を押し上げる要因となります。
自宅葬は形式の自由度が高いため、費用を抑えたい場合は最小限の人数で行うケースもありますが、参列者が増えることで一人ひとりへの対応に必要な支出が積み重なります。会食の提供数や返礼品の準備に加え、状況によっては送迎手配や駐車スペースの確保なども追加負担となります。
特に費用増につながりやすい項目には、以下のようなものがあります。
- 料理・会食費: 1名あたり3,000〜5,000円が目安。提供方法や料理内容により幅がある
- 返礼品: 1個あたり1,000〜3,000円程度。地域や慣習により異なる
- 送迎バスや車両手配: 遠方からの参列者が多い場合に発生する
- 受付・誘導などの補助人員: 対応人数が多くなると人件費が追加されることもある
これらの項目は一見すると単価が小さく感じられますが、人数が増えれば総額は無視できない規模になります。仮に30人の参列で会食と返礼品を提供する場合、これだけで10万円を超えることも珍しくありません。
費用を適正に保つには、事前に参列予定人数を把握し、必要なサービスを絞り込んだうえで見積もりを組み立てることが重要です。特に自宅葬のように個別対応の幅が広い形式では、人数と内容の関係性を整理することが、無駄な出費を防ぐ第一歩になります。
人数別に見る自宅葬の費用シミュレーション

参列者の人数が増えるほど、自宅葬の費用は段階的に上昇します。
自宅葬では、会場費がかからない反面、料理や返礼品などの変動費用が人数に応じて大きく影響します。さらに、人数が増えれば進行補助や備品の手配も必要になり、基本費用に加えて追加費用の幅が広がる傾向があります。
以下は、10人・20人・30人規模で想定される費用の目安と、基本費用・追加費用それぞれの金額感を示したシミュレーションです。
人数 | 総費用目安 | 基本費用 | 追加費用 | 主な増加要因 |
---|---|---|---|---|
10人 | 35万〜90万円 | 15万〜65万円 | 20万〜25万円 | 最小限の料理・返礼品・人員 |
20人 | 50万〜110万円 | 15万〜65万円 | 30万〜45万円 | 料理・返礼品が倍増、サポート人員増加 |
30人 | 65万〜120万円 | 15万〜65万円 | 40万〜55万円 | 設営対応、誘導補助、接待体制の強化 |
費用の中心となるのは、以下のような要素です。
- 基本費用: 祭壇・棺・搬送・火葬手続き・スタッフ人件費、宗教者の謝礼など。人数に関わらず発生
- 追加費用: 料理・返礼品・設営備品・送迎など。人数に応じて拡大
たとえば30人規模では、1人あたり料理5,000円、返礼品2,000円で計21万円が必要になる計算です。さらに人員の補助や備品の手配が重なると、全体として120万円近くに達する可能性もあります。
人数による影響を想定したうえで、基本費用と追加費用を分けて検討することが、現実的な予算設計に有効です。初期見積もりでは、人数が未確定であっても概算を提示してもらうことで、後から大きくずれるリスクを抑えられます。
人数に応じた対応の違い
参列者が20人を超える規模になると、自宅での対応には一定の制約が生じ、設営や進行管理にかかる手間と費用が増加する傾向があります。
小規模な自宅葬では、室内の限られたスペースで対応できるため、最小限の備品と人員で運営できますが、人数が増えると着席スペースや動線確保が困難になり、屋外設営や補助スタッフの増員が必要になるケースが出てきます。とくに、住宅街や集合住宅では近隣への配慮も求められ、静粛性や導線整理の対応に神経を使うことになります。
規模が拡大するにつれて、以下のような対応の違いが発生します。
- 屋外設営の必要性: 屋根付きテント・パイプ椅子・照明機材などの仮設設備を追加
- 進行補助の強化: 受付・誘導・会食対応の人員を複数人手配する必要がある
- 駐車・送迎の対応: 自宅前に車が集中する場合、近隣施設の利用や送迎車の手配が必要
- 音や動線への配慮: 式進行中の出入りや生活音がトラブル要因になる可能性もある
このように、人数が増えることで「設備・人員・近隣環境への配慮」の3つの面で複合的な対応が求められます。参列者数を見込んだ段階で、対応できる自宅環境かどうかを見極めることが、無理のない自宅葬の実現につながります。必要に応じて、部分的に専門業者の設営サポートを活用する選択肢も検討しておくと安心です。
費用を抑えるために意識したいポイント
自宅葬は内容の自由度が高いため、工夫次第で費用を調整しやすい形式といえます。ただし、無理なコスト削減は運営や参列者対応に影響を及ぼすことがあるため、削減の可否を見極めながら検討することが求められます。
特に人件費や葬具、接待費などは、見栄えや体裁を保とうとすると上乗せされやすい項目です。必要最小限に抑えることは可能ですが、式進行や心づかいの質を損なわないよう、優先順位をつけて判断することが現実的です。
費用調整の際に意識しておきたいポイントは以下の通りです。
- 料理と返礼品を簡素にする: 必須ではない形式のため、省略や内容の簡略化で支出を抑えやすい
- 装飾・備品の見直し: 生花や装飾を最小限にとどめることで、10万円以上の削減が可能な場合もある
- セットプランを活用する: 項目ごとに個別見積もりするよりも、基本パックを使ったほうが費用を抑えやすい
- 僧侶依頼の有無を再検討: 宗教儀式が不要な場合は、読経や謝礼の費用を省く選択肢もある
- 葬儀社の比較検討: 複数社から見積もりを取得することで、不要な項目の有無や費用感の適正さを確認できる
これらの項目は、削るべきかどうかではなく「どう調整するか」を基準に判断することが重要です。費用と対応のバランスを取りながら、自宅の環境や希望する見送り方に適した内容を組み立てることが、無理のない自宅葬の実現につながります。
よくある質問
- 自宅葬の費用を最も抑えるにはどうすればいいですか?
-
式の内容を簡素にし、参列者数を絞ることが費用を抑える最も有効な手段です。
具体的には、「通夜なし」「宗教儀式なし」「火葬のみ」といったプランを選ぶことで、20〜40万円程度に抑えられる可能性があります。また、料理・返礼品・装飾を簡素にすることも効果的です。
ただし、最低限必要な費用(搬送・棺・火葬など)までは削れないため、現実的な下限を見極める必要があります。希望する内容と予算のバランスを踏まえた調整が重要です。
- 自宅葬でも僧侶の読経は依頼できますか?
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可能です。自宅葬でも、従来通り僧侶に読経を依頼することができます。
読経の有無は遺族の希望によって決められるため、必須ではありません。宗派や地域の慣習に合わせて柔軟に対応できるのが自宅葬の特徴です。
読経を依頼する場合は、お布施の目安として3万〜5万円程度がかかることが多いため、事前に費用を確認しておくと安心です。
- 自宅が狭くても自宅葬はできますか?
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少人数であれば可能ですが、10人以上の場合はスペースの制約に注意が必要です。
6畳〜8畳程度のスペースが確保できれば、最小限の自宅葬は実施可能です。ただし、参列者の動線や椅子の配置、祭壇の設置場所などに工夫が必要になります。
参列者が20人を超える場合は、屋外設営や近隣トラブルへの配慮が求められるため、葬儀社に事前相談して可否を判断するのが安全です。
- 自宅葬の費用を分割払いやクレジットカードで支払うことはできますか?
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対応可能な葬儀社も増えてきていますが、すべての業者が分割払いやカード決済に対応しているわけではありません。
近年は葬儀費用の柔軟な支払い方法に対応する葬儀社も多く、クレジットカード払いや後払いサービス、分割プランを利用できるケースがあります。ただし、小規模事業者や地域密着型の業者では現金一括のみのところもあるため、契約前の確認が不可欠です。
葬儀後の支出負担を軽減したい場合は、費用の内訳と支払条件の両方を踏まえて葬儀社を選ぶことが大切です。
- 自宅葬の費用を見積もる際、どこまで細かく確認すべきですか?
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基本費用・変動費用・オプション費用の区分ごとに、具体的な内容と単価を確認することが重要です。
「基本費用に何が含まれているか」「料理や返礼品の単価設定はどうなっているか」「設営や人員配置に追加料金は発生するのか」といった詳細を明確にすることで、あとからの予算超過を防げます。
不明点を残さず、見積書の各項目に納得してから契約に進むことが、費用面のトラブル回避に直結します。

この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版