景品表示法違反で見る追加料金の6つの理由
消費者庁はこれまでに「イオンのお葬式」「小さなお葬式」「よりそうのお葬式」といった仲介業者に対し、景品表示法違反にあたる不当表示があったとして、再発防止を命じる措置命令を出しています。いずれも「すべて込み」と誤認させる恐れのある表現が問題視されました。
◆景品表示法違反した会社
・小さなお葬式(ユニクエスト・オンライン):2016年に措置命令(消費者庁の公文PDF)
・イオンのお葬式(イオンライフ株式会社):2019年に措置命令(消費者庁の公文PDF)
・よりそうのお葬式(株式会社よりそう):2019年に措置命令(消費者庁の公文PDF)
その結果、イオンのお葬式はホームページやパンフレットから「追加料金不要」という表示を削除し、代わりに以下のような説明を掲載するようになりました。
セットプランには返礼品・飲食・宗教費用は含まれておりません。次の場合は追加料金がかかります。
1,寝台車又は霊柩車の移動距離が50kmを超える場合
2,式場等における安置日数が各設定日数を超える場合
3,自宅等における安置日数が各設定日数を超え、ドライアイス等を追加する場合
4,「一日葬」の式場使用料が25,000円(税込)を超える場合
5,「家族葬」「身内葬」「一般葬」の式場使用料が50,000円(税込)を超える場合
6,火葬場利用料が15,000円を超える場合
(イオンのお葬式のホームページより)
葬儀にまつわる様々な事情から、プラン内の金額では納まらないことが、この説明からわかります。追加料金不要と言い切ってしまっては、誤解を与えていると消費者庁に指摘されても仕方がないことです。
追加料金が発生する主な条件
葬儀では事前に予測できない出来事が起こることがあります。そうした突発的な事情に対応するために、追加料金が発生する場合があります。単に条件を列挙するだけでは分かりづらいため、代表的なケースを具体的に紹介します。
搬送距離が長いとき
病院から安置先(自宅や安置施設)までの搬送距離が50kmを超えると、規定を超過するため追加料金がかかります。寝台車や霊柩車の運行は距離に応じて燃料費や人件費が増えるためです。特に地方の病院から都市部の斎場へ移動する場合や、逆に都市部から実家に戻す場合などは距離が長くなりやすいため、事前におおよその距離を調べておくことが重要です。
葬儀まで日数が延びたとき
冬場や年末年始など、亡くなる方が多い時期は斎場や火葬場の予約が集中し、葬儀まで10日前後かかることもあります。その間、故人を安置する施設の使用料が日数分追加されます。施設維持費や管理費が発生するためです。
また、安置期間が延びるほどドライアイスも繰り返し補充する必要があります。ドライアイスは1回につき数千円の費用がかかるため、数日延びるだけでも追加料金が大きくなる可能性があります。費用を優先する場合は、葬儀社に別の斎場や火葬場を探してもらう方法もあります。
提携外の斎場を利用したとき
葬儀社が提携していない斎場を利用すると、プランで設定されている式場使用料を超える部分が追加負担となります。例えば、一日葬では25,000円まで、家族葬や一般葬では50,000円までがプラン内ですが、首都圏の多くの斎場はこの水準を超えているのが現状です。施設の維持費や設備利用料が高額に設定されているためです。
アクセスの良さや参列者の利便性を優先して提携外の斎場を選ぶと追加費用が発生しやすいため、費用を抑えたい場合は提携内の斎場を利用するのが現実的です。
参列者が想定より増えたとき
家族のみで行う場合は人数の変動はほとんどありませんが、親戚や会社関係、近所の方に声をかけると当日になって参列者が増えることがあります。参列者が増えると、その分だけ料理や会葬返礼品を追加で用意する必要があり、結果的に費用が上乗せされます。返礼品は一人あたり数百円~数千円かかるため、人数の増加がそのまま追加料金につながります。
故人の体の処置が必要なとき
亡くなった状況によっては、葬儀当日まで故人の体を守る処置が必要になることがあります。例えば、病気で腹水がたまっている場合や、事故で損傷がある場合には、適切な処置を施すため追加料金が発生します。中には、開いた口を閉じるといった小さな処置でも費用がかかることがあるため、事前に確認しておくことが大切です。
安置施設で面会するとき
故人を安置施設に預けている場合、葬儀までの間に面会を希望することがあります。特に、臨終に立ち会えなかった家族や親族は顔を見たいと考えることが多いでしょう。ただし、施設によっては面会のたびに利用料が発生するケースがあり、結果的に追加料金がかかる場合があります。
「追加料金不要」を掲げる葬儀社はほかにも
イオンや小さなお葬式と同じように、「追加料金不要」と強調する葬儀社は少なくありません。ただし、実際には追加料金が発生する条件を小さく記載していたり、説明が十分でなかったりするケースも見られます。
そもそも葬儀プランは必要最低限の項目しか含まれていないため、「やはり必要になった」「故人にこれをしてあげたい」と考えれば、その時点で追加費用が発生するのが一般的です。
インターネットで葬儀社を比較する際は、必ず「どの条件で追加料金が発生するのか」を確認しましょう。特に以下の6点については事前に質問しておくことが重要です。
- 自宅から遠く離れた病院で亡くなったとき
- 斎場や火葬場の予約が取れず、亡くなってから葬儀まで日数がかかったとき
- 提携外の斎場で葬儀を行ったとき
- 葬儀当日に参列者数が想定より増えたとき
- 故人の体が傷んでいるとき
- 安置施設で故人に面会するとき
パンフレットやホームページだけでは判断できない点も多いため、疑問に思ったことは必ず葬儀社へ直接問い合わせることをお勧めします。

この記事の監修者
むすびす株式会社 代表取締役社長兼CEO 中川 貴之
大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーション(現むすびす株式会社)を設立、代表取締役社長に就任。明海大学非常勤講師。講演・メディア出演多数。書籍出版