バレエに捧げた生涯
ご葬儀事例
「俺の人生の喜怒哀楽のすべてが、 バレエのなかに包まれている」
和と洋の融合に挑戦し、血の通った芸術として独自のバレエを追求し続けた石田先生。原爆をテーマに脚本・演出を手掛けた『ヒロシマのレクイエム―うしろの・しょうめん・だあれ』では、主役のバレリーナを全身包帯姿で踊らせ、魂を揺さぶる鮮烈な表現で話題を呼んだそうです。
晩年は、若い方々を熱心に指導されました。稽古場のバー(ダンサーがつかまりながらバレエの基本の動きを練習する棒)の下に腰掛けて、身振り手振りで教えるお姿が皆様の心に強く残っています。踊りには決して妥協を許さない、しかし愛情と人情にあふれた石田先生の指導を受け、数多くのダンサーが道を切り拓いていきました。
第二の家族で創りあげる 「最後の舞台」
打ち合わせを重ね、石田先生のお人柄を深く掘り下げていく中で、バレエ団の方々と担当エンディングプランナー・植竹祐公の思いはひとつになっていきました。
それは、この会を「石田先生の最後の舞台」として、ともに演出すること。そして、形式にとらわれない自由な風土を築いてきた東京シティ・バレエ団らしく、アットホームにお見送りすること。そこで植竹は、三部構成でのお別れ会をご提案しました。
お別れ会の“開演”
第一部は、思い出のホールでのセレモニー。
「功績をしのぶ追悼の時間」をテーマに、バレエ団の照明・音響スタッフの皆様と力を合わせ、演出させていただきました。
開演のブザーとともに幕が開くと、青く幻想的に浮かび上がる舞台。
「舞踊家として生きた先生を見送る、最高の舞台をつくりたい」。そんな皆様の思いから、あえて花祭壇ではなく、バレエの象徴であるバーと作品ポスターに囲まれた空間をご用意しました。
壇上でご長男様が語られたのは、常にバレエへの情熱を燃やし続けたお父様への思いと、周囲の方々への感謝。
「本日の会が、皆様それぞれの“バレエの青春”を語り合うひと時になりますように。父も、雲上の稽古場でそれを望んでいると思います」というお言葉が印象的でした。
続いて、会場のお一人おひとりからの献花をご案内。水盆の上に、紫色のデンファレの花を浮かべていただく際、教え子の方々の目に涙が光っていました。「先生がいらっしゃらなければ、今の私はありません」「これからも天国から怒鳴ってくださいね」――。
この日のために制作された追悼冊子には、師を惜しむさまざまなお言葉が寄せられましたが、献花は、その思いを直接お伝えできる厳粛なひと時となったようでした。
在りし日のお姿と愛した味を
第二部では場所を移し、バレエ団の明るい雰囲気そのままに、ビュッフェ形式でのご会食のお時間に。
合間には石田先生をしのぶ2本の映像をお流ししました。
「温故知新」をテーマに制作したオリジナル映像では、石田先生とともに歩んだバレエ団の歴史と、これからの発展を表現しました。
舞台上で躍動するお姿、稽古場で指導する時の鋭い視線や、生き生きとした笑顔。
映像に散りばめた石田先生の在りし日のお写真や、会場のパネル展示、台本やシューズなどをご覧になり、皆様が思い出話に花を咲かせていらっしゃいました。
石田先生は、稽古が終わるといつも「おーい、コーヒー飲みに行かないか?」と、団員の皆様に声をかけ、なじみの喫茶店に連れて行かれたそうです。
最後のデザートには、その喫茶店のケーキをご用意いただき、皆様で石田先生の愛した味をしのんでいただきました。
フィナーレは万雷の拍手で
ゲストの皆様をお見送りした後の第三部では、バレエ団の方々のみで石田先生をしのぶ「家族葬」のお時間をご用意。
再びホールへとお集まりいただき、理事長様からご挨拶をいただきました。
小学校6年生からご指導を受け、「バレエの父」と慕う石田先生を亡くされた理事長様。お言葉には、惜別の思いとともに、石田先生から託されたバレエ団をしっかりと受け継いでいく決意がにじみ、皆様の胸を打ちました。
内容とお写真は、ご家族・会社様のご了承を得て掲載させていただいております。
この事例の担当エンディングプランナー
植竹 祐公
ご葬儀という形で、いったん幕を閉じた石田先生の人生。
2カ月の時を経たこの日、先生を慕う皆様の手で、舞踊家としてのカーテンコールが執り行われました。
お別れ会の開演とともに上がった幕は、盛大な拍手の中ゆっくりと下ろされ、終演となりました。
この「最後の舞台」が、石田先生の思いを受け継ぐ方々にとって、大切な心の記念碑となることを願ってやみません。
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